とある魔术の禁书目录12
镰池和马
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【テキスト中に现れる记号について】
《》…ルビ
|…ルビの付く文字列の始まりを特定する记号
(例)蔷薇のように见目|丽《うるわ》しい姬さま
[#]…入力者注主に外字の说明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから○字下げ]
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底本デ—タ
一页17行一行42文字段组1段
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とある魔术の禁书目录12
九月三○日──衣替えの季节がやってきた学园都市。
周围の慌ただしさを|余所《よそ》に、エリ—トお娘样学校·常盘台中学の|超能力者《レベル5》、|御坂美琴《みさかみこと》はコンサ—トホ—ル前の广场にいた。
待ち合わせである。
けれど、
「……、来ない」
罚ゲ—ムを受けるはずの摛ⅳ紊倌陻は一向に姿を见せない。美琴はため息混じりに、薄っぺらい学生?とバイオリンのケ—スを抱えてアイツをずっと待っていたのだが──。
|上条当麻《かみじょうとうま》と御坂美琴が交差するとき、罚ゲ—ムを巡る|学园《ラブ》コメディは始まる!?
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镰池和马
ようやく作中の季节が秋になりそうです。秋と言えば食欲の秋、读书の秋という译で今後はインデックスの出番がさらに增えるのかも?
イラスト:|灰村《はいむら》キヨタカ
1973年生まれ。4年ちょいの间生活したアパ—トを引き拂って转居を决意。この卷が出ている顷にはぢょうど引越しであわあわしている最中かも……?
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とある魔术の禁书目录12
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contents
<a href="#chap1">序章白井黑子と枕とベッドSuffering_of_a_Negligee.</a>
<a href="#chap2">第一章午前中授业のひだまりWinter_Clothes.</a>
<a href="#chap3">第ニ章罚ゲ—ムはどんな味?Pair_Contract.</a>
<a href="#chap4">第三章ミサカとミサカの妹とSister_and_Sisters.</a>
<a href="#chap5">第四章缓やかに交差する二组Boy_Meets_Girl (?).</a>
<a href="#chap6">第五章暧昧に过ぎていく日没Hard_Way,Hard_Luck.</a>
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<a name="chap1">序章白井黑子と枕とベッドSuffering_of_a_Negligee.
|常盘台《ときわだい》中学の朝は早い。
とは言っても、|流石《さすが》に午前五时二○分では早すぎる。小鸟の鸣き声もようやく闻こえ始めるような时间带では、女子|寮《りよう》もまだ静まり返っているのが普通だ。寮生活、と一口に言っても、ここは二三○万の住人の内の八割が学生という学园都市であって───まぁ、色々と质や种类というものが存在する。その中でも常盘台中学は消灯と就寝にうるさい规则があるのだ(が、一部|超能力者《レベル5》や|风纪委员《ジヤツジメント》などは拔け出す事もある)。
そんな、|谁《だれ》もが眠りこけている常盘台中学『学外』学生寮の中。
おそらくただ一人であろう、|白井黑子《しらいくろこ》だけが目を觉ましていた。
彼女は自分のベッドの中で左右にゴロゴロと转がっている。
正确に言うと、起きているのではなく眠れないのだろう。
いつもは细いリボンを使って茶色い发を头の左右で束ねているのだが、今は外してあるため发がそのままベッドの上に广がっていた。格好は、近づいて观察しないと分からないぐらい|薄《うす》くて透明度の高いネグリジェに、レ—ス满载のショ—ツだけ。これだと上半身は平たい胸の上から|洼《くぼ》んだヘソの下まで全部见えてしまうのだが、当人は气にしている样子はない。それはここが女子寮だから、だけではなく、ル—ムメイトが特别な人间だから、という意味合いの方が强い。
「……、」
いつまでもゴロゴロ转がっていた白井黑子だが、ふと动きをピタリと止める。
|邻《となり》のベッドを见る。
ベッドとベッドの间隔は五○センチもない。その|近距离《きんきより》で、白井と违ってぐっすりと眠っている少女がいた。肩まである茶色い发にはわずかに汗が吸い付き、その细くて白い指は淡い青系のぶかぶかしたパジャマからチョコンと出ている。最近心境の变化があったのか、少女は饰りっぽい感じのするヘアピンを头の横につけているのだが、今はサイドテ—ブルに并べて置いてあった。
|爱《いと》しのお姊样、|御坂美琴《みさかみこと》である。
学园都市でも七人、名门常盘台中学でも二入しかいない|超能力者《レベル5》であり、同校のエ—スとも称され、|羡望《せんぼう》の的であるエリ—ト校でもさらに羡望を集めているトンデモ女子中学生は、横向きに崩れる感じでベッドに沈み?んだまま、
「……んふふ……。|罚《ばつ》ゲ—ムなんだから、何でも言う事闻かなくちゃいけないんだからね—……」
何だかとんでもなく幸せそうな笑颜と共に、|可爱《かわい》らしい唇からそんな寝言が飞び出した。|白井《しらい》はベッドの上で、两手を使って自分の发をグシャグシャグシャ—ッ!!と势い良く|搔《か》きながら、
(ぐあ—气になる!先ほどからお姊样ってば何なんですのよ!?|大霸星祭《だいはせいさい》が终わってからずっとこの调子!!一体梦の中ではどちら样に向かって宣言しているつもりですの!!)
ぜ—ぜ—は—は—と息を吐く白井。名前の通り白井|黑子《くろこ》は女の子であり|御坂美琴《みさかみこと》も女の子であるのだが、そこはあれがこうなってこれこれこういう女の子特有の事情らしきものがあるのだ。
|直《じか》に言うとかなり生々しいので远回りに攻めていきたい後辈少女である。
この寝言の相手が白井本人に向けられたものであるなら何の问题もないのだが、少なくとも彼女は|罚《ばつ》ゲ—ムを|赌《か》けて争うような|真似《まね》をした觉えはここ数日ない。となると相手が男だろうが女だろうが大问题だというのが白井の超个人的な感想であった。
と、そういうモヤモヤを一切感じ取っていない御坂美琴は、本来ならば自分の头を乘せるべき大きめの|枕《まくら》を两手でギュッと抱き寄せると、
「……まずは何をしてもらおうかな—……むにゃ」
(おのれぇぇぇぇぇぇぇッ!!おっ、おねぇ、お姊样ったら|何故《なぜ》そこで枕に向かって|颊《ほお》ずりなんですのよ—っ!!そのふかふか枕は一体何の代用ですの!!)
ゴロンゴロンとベッドの上で左右に转がる白井黑子だが、幸せそうな少女が目を觉ます样子はない。
时刻は午前五时二五分。
今日も寝不足の朝が始まる。
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<a name="chap2">第一章午前中授业のひだまりWinter_Clothes.
1
九月三○日。
九月末日であるこの日は、学园都市の全学校が午前中授业となる。理由は单纯で、明日から衣替えだからだ。
东京西部を再开发し、都の三分の一もの面积を夸るようになった学园都市は、一八○万人前後の学生を抱える。となれば衣替え一つを取り上げても服饰业界は大忙しだ。
实质的な采寸や注文は|大霸星祭《だいはせいさい》前後に济ませているので、今日行うのは新调した冬服の受け渡しだけとなる。しかし、そうであっても大混杂が起こる边りにスケ—ルの特殊性が|见出《みいだ》せるだろう。また、新しい服を『惯らす』意味も含めて、この日から冬服を身にまとうのも风习の一つとなっている。
だが、それも衣替えに缘のない学生にとってはただの午前中授业である。
例えば|上条当麻《かみじようとうま》という少年がいる。今年とある高校に入学した彼は、入学时に购入した冬服をそのまま着てもサイズ的に全く问题がない。よって、今日の混杂に身を投じる必要はないという译だ。
それは彼だけでなく、学年单位でそういった倾向があるらしい。バタバタと慌てているのは主に二年生と三年生で、一年生は全体的にのんびりしたものだった。
さて、今は三时间目と四时间目の间にある、一○分程度の休み时闻である。
先にも名前が出てきた平凡なる高校生、上条当麻は廊下の窗を开けて、ぼけ—っと外を眺めていた。前の数学の授业が死ぬほど退屈で、休み时间が始まると同时に水饮み场で目觉ましついでに颜を洗ってきた所だった。
平均的な身长と体重に、やや筋肉だけはついているかもしれない体型。これは别に彼が运动部に所属している译ではなく、もっと不健全に路地里でケンカしたり逃げたりしている内についたものだ。黑くてツンツンした发には一应ファッション志を参考にしているらしき样子が|垣问见《かいまみ》え、そこら边に男子高校生としての『ちょっとは|见荣《みば》えを气にしてみよう』という心の|砦《とりで》が|窥《うかが》える。もっとも、眠たそうな目つきで周围を见回し、大口を开けてあくびを连发している所を见ると、砦の防备は|薄《うす》そうな气もするが。
上条当麻は窗?に|肘《ひじ》を突き、残暑の严しさも引いた秋の初めの|缓《ゆる》やかな风を浴びつつ、ボツリと|?《つぶや》いた。
「はあ—……出会いが欲しい」
告げた|瞬间《しゆんかん》に、こめかみは右と左の两サイドから|正拳突《せいけんづ》きを受けて|万力《まんりき》っぽく押し|溃《つぶ》された。
グシャア!!という壮绝な音が|响《ひび》く。
右に立っているのが|土御门元春《つちみかどもとはる》、左に立っているのが青发ピアス。
共に上条|当麻《とうま》のクラスメイトだ。
「ばっ、にゃにすんれすか—っ!?」
くわんくわん、と头を振りながら质问を放つ上条だったが、それに对して土御门は、サングラスの奥にある|瞳《ひとみ》をギラリと|辉《かがや》かせると、
「……にゃ—。カミやんが言うと嫌味にしか闻こえねんダヨ」
「その言叶を引き金にして、そこらの教室のドアからケッタイなオナゴが转がり出てきそうやもんな。ああそうや、お前はいつもそうや!カミやんなら超电脑ロボット少女から泉の|精灵《せいれい》风お姊样まで丰富な|品?《しなぞろ》えで何でもどうにかなっちまいそうやし!!」
相变わらず译の分からない事ばかり言う连中だが、とりあえず恶气はない、
上条|达《たち》は三人とも、黑い|诘襟《つめえり》に同色のスラックスだった。上条は上着のボタンを留めずに、中にある赤系のTシャツを出している。もちろん本来ならワイシャツ着用なのだが、金发にネックレスだらけの土御门や青发ピアスの例からも分かる通り、そういう事にはあんまり气にしない校风なのだ。
「で、お前达は二人して何しに来たんだよ?」
「そやそや。ちょっとこれ见てみ」
と言ったのは青发ピアスだ。
彼は日本で一番卖れている周刊の漫画杂志をこちらに寄越してきた。これを使って|殴《なぐ》られなかった程度には友情というものは存在したらしい。
青发ピアスは漫画杂志の里表纸をぺらりとめくる。、
そこには通信贩卖のカラ—广告が载っている。、
「ほらこの栏にある『|肩揉《かたも》みホルダ—君』ってのがあるやろ」
「あん?」
「气になるねんこれ。ここんトコ右肩の边りが妙に痛いし、自分で自分の肩をグニグニしとると今度は左の肩が痛くなってくるんや」
ものすごく小さな商品见本の写真には、プラスチック制のU字の器具が写っていた。おそらくサイズ的には一五センチから二○センチぐらいだろう。U字の部分を直接肩にはめて使うものらしい。二个セットで买うとさらにお德になるようだ。
「そういや、これ深夜の通贩番组でも宣传されてたな」
「そやろ!こんだけ派手派手に绍介されてるって事は、きっとこの肩揉みマシンはものすごく气持ちええんよ!!」
「え—」
と|胡散臭《うさんくさ》そうな声を出したのは|土御门《つちみかど》だ。
「こりゃ多分ブラフだぜい。特に『气持ち良かったか良くなかったか』なんてのは明确な数字で示せるものじゃないし、『テストメンバ—は全员气持ち良いと答えました。あなたは知りませんけど』ってオチじゃね—のかにゃ—?」
「けっ!|义妹《ぎまい》に每日|采《も》んでもらっとるお前には分からんわい!!」
「每日じゃね—ぜい三日に一回ぐらいだにゃ—っ!!」
话の轨道や主题がワンフレ—ズで切り替わっていく边りが何とも世间话な感じだが、この二人は自分に何をやって欲しいんだろう、と|上条《かみじよう》は首を|倾《かし》げる。
それに对し、二人は言う。
「で、カミやんとしてはどうなん?ボクは绝对效果があると思うねん」
「いやこれは喜びの声は闻かせらんね—と思うけどにゃ—」
ようは二人じゃ多数决にならないから三人目の意见が欲しいだけか、と上条は|呆《あき》れた。
そもそも何でこの二人はこんなに肩操みマシンに梦中なのだろう?
「っつか、别に俺は肩揉みのスペシャリストじゃないんだし、何を言っても说得力なんかないだろ。それだと多数决の意味そのものがなくなっちまうぞ」
「んな使えねえ指摘はどうでもええねんヘタレ!!」
「使えねえとか言うな!!」
反射的に言い返して、なるほど、これが青发ピアスと土御门が白热している原动力か、と上条は迟まきながらに气づかされる。
そして、气づいていても乘ってしまうのが口ゲンカというものである。
「……俺としちゃ效果なんかねえと思うけどな。肩こりって一言で言っても痛む|个所《かしよ》やレベルは人それぞれだろうし、男女でも效果が违ったりすんじゃねえの?それら全部をみんなまとめて『肩こりなら何でも解消!!』って言ってる时点でちょっと怪しいかな」
「ほら见うにゃ—。やっぱり肩こりには义妹が一番ですよ?」
「そんなの实验してみんと分からんやないかい!」
そもそも肩を揉んでくれる女の子がいねえから困ってんだよ!!と青发ピアスが绝叫し、土御门とポカポカ|殴《なぐ》り合う。目の前の不毛な争いに对し、上条は第三者视点で、
「そうだな」
青发ピアスと土御门を引き|剥《は》がしつつ言う。
「だったらこれから实际に试してみようじゃねえか。しょっちゅう肩こりに恼まされていて、なおかつこういう通贩グッズに目がない人间を、俺は一人知っているぞ」
2
|上条当麻《かみじようとうよ》のクラスには|吹寄制理《ふきよせせいり》がいる。
つい先日まで|大霸星祭《だいはせいさい》实行委员を务めていた责任感の强そうな少女で、黑い发を耳に引っ挂けるように分けた发型に、学生にしては大きめな胸を持っている。规则にうるさそうな|氛围气《ふんいき》を|酿《かも》し出していて、今も休み时间なのに早くも次の时间の教科书やノ—ト类などを机の上に出している。服装は|长袖《ながそや》のセ—ラ—服で、スカ—トが|若干《じやつかん》短い事を除けばスカ—フから|上履《うわば》きまで何もかもが定规で测ったように机格统一されていた、
ちなみに彼女は健康系の通贩グッズ集めが|趣味《しゆみ》である。
何らかの引け目があるのか、とある少年以外にその事实を知っている者はいない。
特にこの段阶から慌てて宿题のノ—トを见せ合ったりする事もなく、席に座ったまま近くのクラスメイト、|姬神秋沙《ひめがみあいさ》と世间话をしていた吹寄制理だったが、
「吹寄はいるか—っ!?」
ズパン!!と教室のドアが开け放たれた途端、同方角から飞んできた叫び声に彼女はわずかに身を退かせた。相手は上条、青发、|土御门《つちみかど》という|クラスの三バカ《デルタフオ—ス》である。これまでも数々のトラブルを起こしてきたこの三人に、吹寄はこれから何があっても平常心を保とうと强く誓ったのだが、上条はそこへ开口一番、
「一生のお。愿いだから|揉《も》ませて吹寄!!」
ビキリ、と一发で巨乳少女の头の中から变な音が闻こえた。
へ—じょ—しん、という言叶が脑里を|掠《かす》める前に、飞び挂かってきた土御门|元春《もとはる》と青发ピアスを|正拳《せいけん》で|迎击《げいげき》し、その二人の|剃《な》ぎ倒されっぷりを见て颜を引きつらせる上条当麻に硬いおでこを|叩《たた》きつけて吹き飞ばす。ゴロンゴロンと转がっていく恶党|达《たち》を见下ろして胜者吹寄が两手の|掌《てのひら》をパンパン叩いて|埃《ほこり》を落としていると、そこへ身长一三五センチの女教师、|月咏小萌《つくよみこもえ》が教室へ入ってきた。
「さ—て皆さん、本日最後の授业は先生のバケガクなのですよ—……って。ぎゃああ!?ほのぼのクラスが一转してル—ル无用の不良バトル空间っぽくなってます—ッ?」
いきなりの惨事にうろたえる小萌先生に、吹寄は极めてク—ルな颜で、
「平和のためです」
「一体何があったのですか?吹寄ちゃんが平和维持部队みたいになってるのです!!」
小萌先生の泣く寸前の声が届いたのか、うう、と上条が|呼《うめ》き声をあげる。
上条は床に倒れたまま、
「せ、先生……别に|谁《だれ》が恶かったという译では……」
「じやあ何でこんな事に—っ!?」
映く|小萌《こもえ》先生に、|上条《かみじよう》は|吹寄制理《ふきよせせいり》の颜から少し下の边り。をふら。小らと指差すと、
「……ただ、吹寄さんはすごく气持ち良さそうなのを持ってるのにちっとも|探《も》ませてくれないんですッ!!」
その一言で小萌先生は颜を真っ赤にするとバタンと真後ろに倒れ、それを确认するまでもなく吹寄制理が|追击《ついげき》の|拳《こぶし》を握り|缔《し》めてゆらりと迫ってきた。
3
病院には四人の少女がいた。
出入り口から病室まで|系《つな》がるル—ト上から大きく外れているため、特に立入禁止でもないのに自然と谁もやって来ないような场所である。临床研究エリアと院内では呼ばれているその区画は、|仰々《ぎようぎよう》しい通称に反して。ポカポカと暖かい|阳射《ひざ》しを窗から取り?んでいる。
少女|达《たち》がいるのは廊下だ。
四人全员が肩まである茶色い发に、透き通ったような白い肌をしていた。目の形から色、|虹彩《こうさい》や|网膜《もうまく》に至るまで|全《すべ》てが同一という违いのないシルエット。服装は灰色のプリ—ツスカ—ト
<img src="img/禁书目录12_021.jpg">
に|半袖《はんそで》の白ブラウス、袖なしのサマ—セ—タ—と、やや季节迟れな|常盘台《ときわだい》中学の夏服で统一されていた。
彼女|达《たち》を示す名は复数ある。
|妹达《シスタ—ズ》。
|欠陷电气《レデイオノイズ》。
|超能力者《レベル5》の军用量产モデル。
遗传子操作や药物を用いた成长促进技术などの|影响《えいきよう》によって寿命が削られた者达である。それを打开するために病院で样々な处置を受けていたのだが、それも今日で第二杀阶へと移る。
今までは病院暮らしだったが、これからは少しずつリハビリのために外へ出ていくのだ。
そんな|妹达《シスタ—ズ》に、颜がカエルに似ている医者が话しかける。
彼が手にしているのは、ウェイタ—が持っていそうな小型のクリップボ—ドだ。
「で、外出着は全员常盘台中学の冬服で良かったのかな?」
「问题ありません、とミサカ一○○三二号は返答します」
告げたのは四人の内の一人だ。
彼女达は名前ではなく|检体番号《シリアルナンバ—》によって个体识别がなされている。これはカエル颜の医者が决めたのではなく、もっと以前の制造段阶から定められていた事らしい。
「サイズの方は四人|一绪《いつしよ》で良いのかな?」
医者はクリップボ—ドに『注文』を书き?みつつ言う。
质问に对して、四人の|妹达《シスタ—ズ》は颜を见合わせる事もなく、何を当然な事をと言った颜で、
「いちいち计测するまでもなく全员一致です、とミサカ一○○三二号は答えます」
「|全《すべ》てのミサカは同一の遗传子から制造された!!量产モデルですから、とミサカ一三五七七号は补足します」
「そのように作られている以上、サイズの差异など考える必要はありません、とミサカ一○○三九号は结论を出します」
「み、ミサカは……」
最後の一人だけ言い淀んだ。
「「「……?」」」
三人の|妹达《シスタ—ズ》が齿切れの恶い|台词《せりふ》に振り返ると、|检体番号《シリアルナンバ—》一九○九○号が目を|逸《そ》らして身を缩めていた。两手を使って、特に上半身を隐そうとしている意图が受け取れる。
一○○三二号───とある少年からは『|御坂《みさか》妹』と呼ばれている少女は、ほんのわずかに|怪《け》诸な目をすると、ふと思いついたように一九○九○号の元へと近づいていく。
そして两手の|拳《こぶし》を握ると亲指だけを立てて、その拳をひっくり返すと、左右の亲指を一九○九○号のスカ—トと|身体《からだ》の间に、ズボッと突っ?んだ。
「むっ!?スペックシ—トではピッタリのはずなのに亲指が二本も入るほど余裕があります、とミサカ一○○三二号は|紧急报告《きんきゆうほうこく》します!!」
「|全《すべ》てのミサカは同一のミサカであるはずなのに、とミサカ一三五七七号は|惊愕《きようがく》を|露《あらわ》にします!」
「ウェストもそうですがその他はどうなのですか、とミサカ一○○三九号はあくまで冷静な态度で精密检查を提案します」
言叶に从って一○○三二号がスカ—トに突っ?んだ指を拔いて上へ持って行こうとすると、一九○九○号は两手を使ってこれを|迎击《げいげき》した。|他《ほか》の个体と违い、颜がちょっぴり赤くなっていたりと感情表现も多彩な气がする。
カエル颜の医者は呆れたような颜で、
「一卵性双生儿だって食事や运动の差异によって颜や体格に个性は出るからね?クロ—ン人间の阀でスタイルにメリハリが出ても不思议じゃないんだよ」
余计な事を言ってしまったか、と医者は内心で後悔していた。
女性というのは|瘦《や》せている方が优秀であり、优秀な女性を男性は选择する倾向が强い、といった知识を教えたらこんな调子だ。これらはカエル颜の医者の偏见?みの|趣味嗜好《しゆみしこう》なのだが、そもそも|妹达《シスタ—ズ》は男性の知り合いが极端に少なく、彼女|达《たち》にとってはカエル医者ほ一般男性であり『この男がそう言うならあの高校生[#「あの高校生」に傍点]もそう思っているのでは?とミサカはゴニョゴニョ考え事をしてみます』とかいう结论を|弹《はじ》き出したらしい。
そしてどこから仕入れてきたのか『世の中には药指にはめる特别な指轮というものがあって、それを手に入れるには何事も优秀な方が良いらしい』という正解なんだか问违っているんだか判断に困る知识を元に行动しているため、|妹达《シスタ—ズ》の问でも少しずつ个性というものが现れ始めているようだ(もっとも、彼女达自身はあまり自觉していないようだが)。
「つまりコイツは他のミサカに|内绪《ないしよ》でコソコソと|污《ダイエ》い|真似《ット》をしていたのですか、とミサカ一○○三二号は迫及を续けます」
「全てのミサカ达を束ねる二○○○一号『|最终信号《ラストオ—ダ—》』は何をしていたのでしょうか、とミサカ一三五七七号は使命や役割という言叶を仙ってみます」
「あの|小《ち》っこいのにはその行为が何のための努力か分から。なかったのかもしれません、とミサカ一○○三九号は心を乱さずに推测してみます」
それぞれが好き胜手に言い合っている最中、カエル颜の医者はさらに言う、
「しかしそれほど色めき立つ事はないだろうね?君达は全て同一の个体なんだから、その一九○九○号さんと同じ事をすれば同じ分だけ变化が访れるだろうさ」
「「「……、ッ!!」」」
グリン!!と三人の|妹达《シスタ—ズ》が残る一人へ高速で振り返る。
一足お先に|瘦身《そうしん》テクを身につけた一九○九○号はじりじりと後退しつつ、
「ミサカは自身の危机管理能力に从い逃亡します!とミサカは───ッ!!」
叫び终わる前に少女达が飞び挂かってきた。
4
|妹达《シスタ—ズ》が暴れ回っているのと同じ病院内に、|芳川桔梗《よしかわきさなう》という女性がいる。
学园都市に存在する|无能力者《レベル0》、|低能力者《レベル1》、|异能力者《レベル2》、|强能力者《レベル3》、|大能力者《レベル4》、|超能力者《レベル5》の区分の上に、新たに|绝对能力者《レベル6》という分类を筑き上げようとした『实验』を立案、实行に移した研究者グル—プの元]员だ。
『优しいのではなく甘い人格』を自认している彼女は、总数二万强ものクロ—ン人间を作り出し、その内の半分以上を『实验』の过租で杀害している。实际に手を下したのは|绝对能力者《レペル6》候补と呼ばれていた、とある|超能力者《レベル5》の学生なのだが、それが言い译になるはずがない。
现在では『实验』は致命的欠陷があるとされ、冻结ではなく中止となっている。
だが、それは『实验』に关する|全《すべ》ての事柄が、その时点でスッパリと消えてなくなった译ではない。杀されるためだけに作られた少女|达《たち》と、彼女达を杀す事だけを命じられ续けた超能力者……特殊な环境や体质を得ているとはいえ、やはり彼らは人间の子供达だ。その上にのしかかる精神的な重压は想像を绝するものだろう。个人の间题はもちろん、彼らの间には绝对的に深い沟があり、その人间关系など|坏灭的《かいめつてき》の一言に尽きる。普通に考えれば构筑などできっこない。
が。
「やだ—っ!ってミサカはミサカは拒绝してみたり!降りない绝对降りないこのスポ—ツバッグの上はミサカの|敷地《しきち》だ!ってミサカはミサカはあなたの抱えるバッグの上で正座しながら强气の抗议をしてみる!!」
「オマ……ッ!!人が肩で|担《かつ》いでるバッグの上ではしゃいでンじゃねえぞクソッたれがァ!!人が|病《や》み上がりだっつ—事实を忘れてねェか?」
当の被害者たる彼らは今日も元气だ、と芳川は思う。
|一方通行《アクセラレ—タ》と呼ばれる『杀してきた方』はトンファ—のように现代的な|杖《つえ》を右手につき、左の肩にスポ—ツバッグの厌?をかけてフラフラと立っている。色の拔けた白い发に赤い曜が特徵的で、今は灰色を基调とした衣服をまとっている
|打ち止め《ラストオ—ダ—》と呼ばれる『杀されてきた方』はそんな彼のスポ—ツバッグの上にチョコンと正座して、ブランコ风に肩纽に左右の千をそれぞれ添えている一○岁前後という见た目だからこそ可能な技だが、それでも杖をつくような人间には|辛《つら》いかもしれない。肩まである茶色い发に、同色の瞳、空色のキャミソ—ルの上から男物のワイシャツに腕を通して羽织っている。
八月三一日に额に弹丸を受けて入院していた|一方通行《アクセラレ—タ》だが、一ヶ月を经てようやく退院の许可が下りたのだった。严密に言えば体が治ったのではなく、やるべき处赝は全部|施《ほどこ》した、というのが正确である。碎けた|头盖骨《ずがいこつ》の破片によって伤つけられた脑の後遗症は拔け切れておらず、今も首に卷いたチョ—カ—型の电极によって机能の一部を补っている状态である。それがなければ言叶を交わす事もできないし、自分の足で立つ事もできないほどなのだ。まあ、あれだけの伤を负って、日常生活に戾ってこれただけでも奇迹的ではあるのだが。
そんな事情もあり、彼らは现在病院の正面玄关に立っている。
本来なら|芳川《よしかわ》自身も先月末日に心脏を|掠《かす》める形で铳弹を受けている身であり、子供の面倒を见ていられるような体调ではないのだが、それでも彼女はこの役を引き受けた。
やらなければならないのではない。
これは自分でやりたいのだ。
「はいはい。ここは出入り口だから游んでいると|他《ほか》の人の迷惑よ。そういうのは荷物を世いて一段落ついてからにしましよう」
「ミサカは游んでないもん!って重心を下へ下へと押し付けながら真剑な颜で抗议してみたり!!」
「この|滴《したた》り落ちるほどのレジャ—感觉が游びじゃなけりゃ何なンだよオマエ!!」
今にもスポ—ツバッグに押し|溃《つぶ》されそうになりながら、|一方通行《アクセラレ—タ》が叫ぶ。芳川はそういったやり取りを闻かずに玄关から少し|离《はな》れると、待たせてあったタクシ—の运转手に轻く手を振る。
ゆったりと手惯れた动きで乘用车がこちらへやってきた。
|一方通行《アクセラレ—タ》は|打ち止め《ラストオ—ダ—》の乘っかった荷物を运转手に揭げ、
「丸ごとトランクに押し?ンでやるから今すぐ开けろ」
「ミサカお荷物?い!?ってミサカはミサカは|战杰《せんりつ》と共に後部座席に逃げ?んでみる!!」
|一方通行《アクセラレ—タ》は後部座席にスポ—ツバッグを投げ?んで|打ち止め《ラストオ—ダ—》をムギュ—と押し溃すと、空いたスペ—スに腰挂ける。
後部座席は人数的にまだ余裕があったが、あのドタバタに卷き?まれるつもりはないので芳川は助手席の方に回る。
念のために运转手に言っておいた。
「彼らは退院直後のシャバの空气でハイになっています」
「あはは。子供さんの场合はそれぐらい元气があった方が良いんじゃないですか」
「あと小さい方は车に惯れていないので吐くかも」
「ッ!?」
运转手がビクゥ!!と体を|震《ふる》わせた。新人かな、と芳川は适当な评价を下した。|一方通行《アクセラレ—タ》がスポ—ツバッグを确保して|打ち止め《ラストオ—ダ—》から离れていくのがドタバタした音で分かる。实は芳川のバッタリで、この文句を言っておくと运转がより|丁宁《ていねい》になるというだけだったのだが、あんまりメジャ—な里技ではなかったようだ。
生卵の运搬业者のようにタクシ—は|滑《なめ》らかに发进する。
|芳川《よしかわ》は运转手に行き先を告げ、メ—タ—の上にあるデジタル时计を确认すると、时刻はもうすぐお昼の一二时といった所だった。
|先《さき》の吐くかも宣言を本气で信じた|一方通行《アクセラレ—タ》は、近づいてくる|打ち止め《ラストオ—ダ—》の颜を|掴《つか》んで远ざけながら、|怪诽《けげん》そうな颜で芳川の後头部を见た。
「どこ向かってンだ」
「わたしの知り合いが动いている学校。待ち合わせみたいなものよ。キミ、今の学校を辞めてしまうのでしょう?それが何を意味しているかは分かっているわよね」
学园都市に住むほとんどの学生は|寮《りよう》を利用している。中には街のパン屋などに|居候《いそうろう》しているケ—スもあるが、それは极めて|稀《まれ》だ。
この街で学校(正确には学校含む能力开发机关)の?から拔けるというのは、同时に寮という住所を失う事でもある。常に学园都市の不良|达《たち》から|狙《ねら》われ、寮の部屋も荒らされている|一方通行《アクセラレ—タ》には|住处《すみか》に对する未练はない。家具だって一つ残さず|坏《こわ》されているだろうから仙值もない。だが、屋根のある空间を夺われるというのは结构大きな出来事であった。
そういったリスクを负ってでも、|一方通行《アクセラレ—タ》が学校を舍てるという选择を采ったのは、
「……|绝对能力《レベル6》だなンだっつ—のに|关《かか》わンのはもうゴメンだからな」
一应、直接的にその「实验』を行ってきた机关はもう|溃《つぶ》れている。しかし、|妹达《シスタ—ズ》を使った研究施设が消えたとしても|咒缚《じゆばく》が|全《すべ》て解ける译ではない。彼の通ってきた学校にも、规模の违いこそあっても『|特殊开发研究室《とくべつクラス》』というものが存在する。教室の生徒は彼一人だけという、实质的には实验动物を|隔离《カくリ》する饲育小屋のような四角い空间が。
あらゆる意味で血まみれの世界と决别するなら、これまであった全てを舍てるしかない。研究所も、学校も、学生寮も、その企てを、だ。
今度はそういった『强い意志』を持たない学校を选ぶしかない。|一方通行《アクセラレ—タ》という|魅力的《みりよくてき》すぎる研究。对象を前に、本当に目の色を变えない研究者など存在す。るかどうかは分からないが、探すしかない。
あまりにも特殊すぎる|一方通行《アクセラレ—タ》や|打ち止め《ラストオ—ダ—》は、学园都市の外には居场所がない
そして、学园都市内部で学校を利川しなければ、後は路地里の|武装无能力集团《スキルアウト》のように生きていかなければならない。学园都市最强の|超能力者《レベル5》がそんな选择を采れば、待っているのは全ての破灭だ。
|一方通行《アクセラレ—タ》は唇を|歪《ゆが》めて、
「で、今後はオマエの管理下に收まるっつ—のが统括理事会の决定か?まァ、オマエだったら研究分野的にもおあつらえ向きだとア思うけどよォ」
芳川はかつて『实验』に参加していた研究メンバ—で、|打ち止め《ラストオ—ダ—》などのクロ—ン制造の|他《ほか》に|一方通行《アクセラレ—タ》のメンテナンスも行っていた、
|绝对能力《レベル6》关连の研究が中止になったとしても、彼は相变わらず学园都市最强の|超能力者《レベル5》であり、优れた研究素材でもある。|芳川《よしかわ》に色々と调べさせて、新たな能力开发技术に应用できれば|莫大《ばくだい》な利益を得られるはずだ。
どこまで行っても何者かの思惑や|影响《えいきよう》を感じ续ける。
まあ、|一方通行《アクセラレ—タ》がこれまで出会ってきた人间の大半は|外道《げどう》の一言に尽きるような连中ばかりだ。そういった大人|达《たち》の|咒缚《じゆばく》から逃れられると思えば、まだ芳川に行动の决定权を贷しておいた方がいくらか气が乐かもしれない。无论、彼女のやり方に纳得いかない场合はさっさと|叩《たた》き|溃《つぶ》して|他《ほか》を当たるが。
しかし、
「违うわよ」
芳川|桔梗《ききよう》は、振り返りもせずに一言で告げた。
「あン?」
「わたしはキミの次の管理者ではないと言っているの。冷静に考えてご览なさいな。今の芳川桔梗は研究职を终われて无职に近い状态なのよ。しかも『实验』当时と八月三一日の二回もキミが中心となる事件に关与した。これで保护者役が务まると判断したなら统括理事会は全员今すぐ首を切るべきだわ」
「……って事はナニか?オマエはただの使いっパシリってトコか。これから俺达を见知らぬ研究者に引き渡すっつ—译だな」
「|猜疑的《さいぎてき》ね。キミの生活环境を见れば当然でしょうけれど。ただ、その意见には二つの间违いがあると指摘しておくわ。一つ目はキミも知ってる人に引き渡すつもりだし、二つ目はその人は研究职の人阀でもない」
「───、」
|一方通行《アクセラレ—タ》は目を细めて芳川の言叶を头の中で吟味する。
信用ならない。
|邻《となり》に座っているこのガキの存在が气に|食《く》わないが、この程度のハンデを抱えていても敌对者は叩き溃せる。これから长期间にわたって见えない|袭击者《しゆうげきしや》を警戒し续けるよりも、ここで颜を见てから|丁宁《ていねい》に溃していった方が手っ取り早そうでもある。
(……退屈な事になりそォだな)
と。
そこへ、|完壁《かんぺき》に无邪气な|打ち止め《ラストオ—ダ—》が|吞气《のんき》に言った。
「研究者じゃない人なんてヨミカワぐらいしか知らないかも、ってミサカはミサカは手を举げてから发言してみたり」
「正解」
芳川は乐しそうに答える。
ヨミカワというのは、芳川桔梗としても数少ない『表世界の友人』であり、学园都市の|警备员《アンチスキル》を务める女性の事だ。|芳川《よしかわ》が铳弹に倒れてからは、|暂定的《ざんていてき》に病室の|一方通行《アクセラレ—タ》と|打ち止め《ラストオ—ダ—》の面倒を见ていたジャ—ジ女である。
言われるまでその可能性に气づかなかった|一方通行《アクセラレ—タ》は小さく舌打ちした。
それを闻いた芳川が寻ねてくる。
「あら。答え合わせは终わったのにまだ|紧张《きんちよう》しているようね」
「……何なら今から丁宁に闻き出しても良いンだけどな」
「まあ、|嘘《うそ》かどうかは着けば分かるのだし、キミの场合、|今後《こんご》も他人からの甘い言叶に警戒する|癖《くせ》はそのままの方が良いかもしれないわね。守るべきものの价值を知っているのなら、特に」
芳川はちっとも|堪《こた》えていない。|一方通行《アクセラレ—タ》は助手席から视线を|逸《そ》らすように、|忌《いまいま》々しげに车窗の外へ目を向けた。|打ち止め《ラストオ—ダ—》だけはやり取りに气づいていないようで、『え?ヨミカワじゃないの?ってミサカはミサカはあなたの肩をぐいぐい引っ张ってみる』とか言っていた。
5
お昼になったので学校は终わった。
特に部活などに参加していない|上条《かみじよう》は、後は|寮《りよう》に归るだけである。
彼は|下驮箱《げたばこ》で革靴を|履《は》いて、テクテクと学校の|敷地《しきち》の外へと步きつつ、
「何が恶かったんだろうなあ」
と|咳《つぶや》いた。
脑里にあるのは、もちろんマッサ—ジ机と|吹寄制理《ふきよせせいり》の头突きの关连性についてだ。
(う—ん。やっぱり『|操《も》ませて吹寄』では少々|驯《な》れ驯れしかったか?でもあの後に『揉ませてください吹寄サマ』でも殴られたし『拜启、秋の色も深くなり~~』から始めたら头突きで吹っ飞ばされたしなあ何が气に|障《さわ》ったんだろ?)
基本的にこの少年は身に降りかかる不幸にとにかく惯れていて直接的な|打击《だげき》に关してもやたら打たれ强い体质を夸っているため|绊创膏《ばんひこつこう》などは特にない。|常日顷《つねひごろ》から空腹少女に头を|啮《か》み付かれている上条|当麻《とうま》の耐久力は|半珊《はんぼ》吨てはないのだ。
そんな风に、根本的な所に气づかないまま『もっとさりげなく季语を取り?むべきだったか』などと延々と考え事をしながら、上条は学园都市の整えられた街并みを步いていく。
残暑の|名残《なご》りも、九月三○日となれば完金に|拂拭《ふっしょく》されていた。风力发电のプロペラを回す|缓《ゆう》やかな风は、もうエアコンの冷房が不要になった事を示していたデパ—トの壁に取り付けられた大画面に映っている天气予报も、『热中症に注意してください』から『季节の变わり目なので体调管理にお气をつけて』へと一言メッセ—ジが变更されている。
そうした中、
「いたいたいたクソいやがったわねアンタ!!」
昨今の日本语は乱れつつあるのです、という言语评论家の意见を丸ごと证明してしまうような少女の|台词《せりふ》が|上条《かみじよう》の元へと飞び挂かってきた、。
上条がそちらへ振り返ると、お|娘样《じようさま》学校で知られる名门|常盘台《ときわだい》中学の|见《みめ》!!|丽《うるわ》しい(はずの)女の子が、どだだだだだ—っ!!と高速で接近してくる所だった。
|御坂美琴《みさかみこと》。
肩まである茶色い发に、上条よりも七センチほど低い背丈の少女。今までの夏服と违い、今はベ—ジュ色のブレザ—に绀系チェック柄のプリ—ツスカ—トを穿いている。昨日の今日でピカピカの冬服を受け取ったはずなのに、すでにスカ—トは短くなっていた。何ともお娘样な事に、|薄《うす》っぺら。い学生|?《かばん》の|他《ほか》に今日はバイオリンらしき乐器のケ—スまで|携《たずさ》えている。
上条はその颜を见るなりうんざりした颜で、
「これは、まぁ、あれだな。───不幸だ—」
「人の颜を见るなりその反应は何なのよ!!」
ぎゃああ!と|骚《さわ》ぐ美琴。ちなみに上条は午前中に|吹寄制理《ふきよせせいり》から|正拳《せいけん》及び头、突きを受けている译だが、不幸的インパクトはこち。らの方が强かったらしい。この|超电磁炮《レルガン》と名のつく少女から|雷击《らいげき》の|枪《やり》だの何だの受け续けているのだから当然かもしれないが。
上条はただでさえ薄っぺらい学生?を、いかにも重たそうに持ち直しながら、
「で、なんか用事でもあんのかお前?手短にな。できれば步きながらな。いっそもう归って良いか?」
「ただでさえムカつく对应により一层の拍车がかかってるわね……」美琴はわずかに首を横に倾け、唇を邪恶に|歪《ゆが》めつつ、「っつか、今のアンタにそんな大それたクチを闻くだけの权利があるとでも思ってんのかしら—?」
「あん?」
平べったい美琴の言叶に何やら邪恶な意思らしきものを感じ取った上条は、ゆっくりと彼女から|距离《ヱさトホリ》を取ろうとする。
そこへ常盘台中学のエ—ス、品行方正(でないと困る)なるお娘样は腕を组んで一言、
「|罚《ばつ》ゲ—ムよん?」
上条|当麻《とうま》の|眉《まゆ》がピクリと动く。
罚ゲ—ム、というのは九月一九日から七日间にわたって缲り广げられた、学园都市总出の大组模体育祭『|大霸星祭《だいはせいさい》』で上条と美琴の间で取り决めを行った『|赌《か》け』にまつわるものだ。简单に言って、顺位の低かった方が相手の言う事を闻く、という内容である。
能力开发の街である学园都市では、体育祭でそういった能力を使用する事も许可されていた。
そして常盘台中学の面々は数亿ボルトもの高压电流の枪や风速八○メ—トルもの突风の壁などを用いて对战校の生徒|达《たち》を|剃《な》ぎ拂っていく、という自然灾害みたいな战法を取ってきたのだ。
|上条《かみじよう》は高校生で|美琴《みこと》は中学生なのだが、そんな年龄差など大自然の胁威の前にはどうにでもなってしまい、三日目の直接对决などでボコボコにされてしまった译である。その上、上条、|土御门《つちみかど》、|姬绅《ひめがみ》、|吹寄《ふきよせ》などのメンバ—は|大霸星祭《だいはせいさい》初日のゴタゴタで|怪我《けが》を负っていた。色々な事が重なって败北した译だ。总合的な顺位も散々で、こんな状态で名门|常盘台《ときわだい》中学をどうにかできるはずがなかった、
しかし负けは负け。
そんなこんなで、|御坂《みさか》美琴の『|罚《ばつ》ゲ—ム』发言は正统なる手顺に从って放たれたものだったのだが、
「あれ?それってまだ有效だったっけっ?」
「一人で胜手に水に流してんじゃないわよアンタ!!とにかく本当に何でも闻いてもらうんだから!はん、今の今まで利子とかつけずに待ってただけでも美琴さんに感谢しなさいってのよ!!」
やたら胜ち夸って胸を张る美琴。
表通りの学生达が『何だ何だ?』という目を向けてくる。
どうもこの过剩な反应には、『もっと早くにやっておきたかったけど上条が病院とかイタリアとかに行ってて放ったらかしにされていた分』の|郁愤《うつぶん》が良い感じに爆发しているのもあるようだ。利子あるじゃん、と彼は|咳《つぶや》きかけたが、大人なので|默《だま》っておく。
上条はため息を|吐《つ》いて、
「别にそういう话なら良いんだけどさ。|俺《おれ》にできる事なんてたかが知れてるぞ?」
「ふ—ん。そういう风に言ってごまかしちやうんだ—?」
「いやそういう译じゃなくてだな」
「そ—よね—。アンタみたいな凡人じゃできる事なんて、た·か·が、知れてるもんねぇ?あら|大丈夫《だいじようぶ》よ、アンタと违ってとっても素晴らしい美琴さんはその边もしっかり|考虑《こうりよ》してるから。|马鹿《ばか》にできない事を|赖《たの》むつもりはないし、凡人は凡人らしくヒ—ヒ—顽张ったら—?」
「───、」
ビキィ!!と上条のこめかみから变な音が闻こえる。
大体こんな调子になるとロクな结果を招かないのだが、それを冷静に确认できるほど上条|当麻《とうま》は聪明なる优等生ではない。
「分かったよ」
|佣《うつむ》き气味の上条の投げやりっぽい返事に、美琴は|何故《なぜ》かホッと|安堵《あんど》の息を|吐《は》く。
しかし。
彼は突然、佣いた颜をグバァ!!と势い良く上げて美琴の颜を正面から见据えると、腹の底に思い切り力を?めて一言、
「よろしい!!ならばこの|爱玩奴隶上条当麻《あいがんどれいかみじようとうま》に何なりとお申し付けるがよい!!」
人混みの动きがピタリと止まった。
彼らは言った上条と言われた|美琴《みこと》を交互に见ながら、ヒソヒソと何か言叶を交わす。数秒ほど问を挟んで、ザザザザァァァ!!と上条と美琴の周边から人垣が波のように引いていく。
「は……?なに、ドレ、ええッ!?何言ってんのアンタ!!」
それに负けず劣らず美琴の颜から血が引いていくのが分かったが、その程度で许しを与えるような甘い人间に育ったつもりはなかった。
上条は|恭《うやうや》しくその场に|跣《ひざまず》くと、|薄《うす》っぺらい学生|?《かばん》の中からペラペラの|下敷《したじ》きを取り出し、全く|茶化《ちやか》したりせず、真剑そのものといった颜つきで|缓《ゆる》やかに|扇《あお》ぎ、
「基本はやっぱり快适な环境を整える事からですよねお|娘样《じようさま》。わたくし上条当麻はこういう事に不惯れですので色々手间をかけると思いますがどうぞ|平《ひら》にご|容赦《ようしや》を」
「ちょ、|马鹿《ばか》!!アンタ色々とノリが良すぎるしスカ—トの下から思い切り扇ぐな!!」
美琴は青くなっていた颜を早くも赤く染め直し、ただでさえ短いスカ—トを两手で押さえながら叫び返した。下はどうせ短パンだろうが气分的な问题があるらしい。
と、その时、
「お姊样ぁ—っ!!」
|若干《じやつかん》引き气味な人垣を突き崩すように、ツインテ—ルのブレザ—少女、|白井黑子《しらいくろこ》が势い良く飞び?んできた。
「こ、これは……ッ!?」
|普段《ふだん》ならそのまま美琴に抱き着くor两手を握るぐらいの事はしそうだが、今日に限っては美琴に接近する前にまるで见えない壁にぶつかったようにその上半身を大きく|仰《の》け反らせる。目の前に广がる壮绝な光景にかなりの|冲击《しようげき》を受けているらしい。
「く、黑子?」
公众の面前で年上の男を足元にひれ伏させ、扇で风を送らせている(ように见えている)美琴は、引きつった颜で首だけ动かして自分の後辈を见る。
しかし白井黑子は|爱《もと》しのお姊样の声が闻こえていないようで、その小さな体をわなわなと|震《ふる》わせていた。
その视线は、ただ|忠义《ちゆうぎ》の|徒《と》と化している(ように见えている)上条当麻にのみ注がれている。
彼女は语る。
「な、なんという|洁《いさぎよ》い直球从属姿势……。しかしその役目は本来わたくしだけのものだッ!!」
白井の|瞳《ひとみ》の中にあるのは、|羡望《せんぼう》と|嫉妒《しつと》、そしてわずかな尊敬の念だ。
「やめなさい马鹿ども!!ふっ、二人して低头してんじゃないわよ何の|仪式《ぎしき》だこれ私はどこぞのカルト教团の教祖样か—っ!!」
|御坂美琴《みさかみこと》は绝叫したが、|上条当麻《かみじようとうな》は无心で下から|扇《あお》ぐ行为に余念がなく|白井黑子《しらいくろこ》は强敌の存在を改めて确认し、|战怀《せんりつ》の|震《ふる》えを止められずにいた。
6
|月咏小萌《つくよみこもえ》は职员室でやつれた息を|吐《は》いた。
身长一三五センチ、见た目は一二岁程度という外见からはあまりに不钓合いな疲劳感だったが、それも无理はない。午前中に起きた生徒间の暴力|沙汰《ざた》(そう、上条当麻の周边では目立たないかもしれないが、普通の学校生活で考えれば结构大きなトラブルなのだ)もそうだが、その|他《ほか》にも原因はある。
それはスチ—ル制の机の上に散らばっていた。
そこにあるのは安物の印刷物で、进路希望调查票、と书かれている。もっとも、一年の段阶での调查は结构|暖昧《あいまい》なもので、『将来どんな仕事に就きたいか』ぐらいのものでしかない。具体的な进学や就职、そして进学するならどこの学校のどんな学部を狙うのか、就职するならどこの企业へどんな手顺でアタックするのか、といった话はもう少し先。の事だった。
が、
「はぁぁぁ—……」
小萌先生は思わず头を抱える。
|土御门元春《つちみかどもとはる》は『メイドの国へ行きたい。そしてク—デタ—を起こし、このオレが军师になって|薄幸《はつこう》メイドを女帝にする』とこの上なく|真面目《まじめ》な笔迹で书いていたし、青发。ピアスは『モテたい』と调查票の?からはみ出るぐらい大きな文字を、上条当麻などは『しあわせになれればなんでもいいです』と何だか泪を|诱《さそ》うような切实な愿いを记していた。
(最近の若者は具体的な仕事への意欲が欠如しつつある倾向にある、って伟い人が言ってましたけど、これは何だかちょっぴり违う气がするのです—……)
おそらく彼らは调查票を书く气がないから适当にシャ—ペンを走らせた译ではなく、极めて本气で取り挂かっているのだろう、だからこそ色々と困る。
そこヘジャ—ジ姿の女教师、|黄泉川爱穗《よみかわあいほ》がやってきた。
「おっす—。センセ、气分转换は|烟草《タバコ》とお酒のどっちがいいじゃんよ—?」
「勤务中のアルコ—ルは禁止なのですよ—……」
いつもなら大声で反应して教师とは何かを说き始めるだろう月咏小萌だが、|流石《さすが》に今日は少し疲れが|溜《た》まっているらしく、返事の起伏も|薄《うす》い。
黄泉川は小萌先生の机の上にザッと目を走らせつつ、
「じゃ—烟草じゃんね—」
|小萌《こもえ》先生は|黄泉川《よみかわ》の差し出した|烟草《タバコ》の箱から一本引き拔くと、それを口に|哑《くわ》え、
「あれ?何やら高级感が漂ってくる口触りなのですよ?」
「そりゃあれだ、最近できた契烟バ—で手に入れたモンだから。一本七○圆の高级品ってヤツじゃんよ」
禁烟エリアが扩大しつつある昨今、逆に契烟专门の店铺を作る风潮も广まりつつあった。カクテルの代わりに世界各国の烟草を|?《そろ》えたバ—も珍しくない。一本七○圆どころか、南米产の叶卷などになると三○○○圆ぐらいのものまで?っている。
学校など大抵は全面禁烟が|敷《し》かれていそうなものだが、学园都市では意外に校内の契烟が认められている场合が多い。これは学校の教师が样々な分野の研究者を兼ねているパタ—ンが多。く、彼らの集中力をごっそり欠く事が学园都市全体の损益に|关《かか》わる、という统括理事会からの|配虑《はいりよ》だ。
そんな译で、契烟申请を出した教师には小型の高性能空气清净机が支给される。小萌先生はスチ—ル机の引き出しを开けると、その中から烟草の箱を二つ积んだぐらいの机械を四つ取り出した。机の四隅にそれぞれ配置する。
|各々《おのおの》は一方向からの空气しか吸い?まない。しかし四つそれぞれが作动すると、まるで|洗濯机《せんたくき》に|搅绊《かくはん》されるように机の上の空气が圆状に动く。|薄《うす》っぺらな纸切れ一枚动かない憾どの空气の流れだが、それが确实に烟草の烟を捕らえて吸い?み、フィルタを通して清洁な空气を吐き出すのだ。空气力学を应用した最新モデルであり、同时に无料支给できるほどコストを抑える事にも成功した、|正真正铭《しようしんしようめい》の实用品だ。
「よっと」
小萌先生は机の端に置いた空气清净机のスイッチを入れる。
绿色のジャ—ジを身にまとった信じられないほどの巨乳教师、黄泉川|爱穗《あいほ》は自分も一本口に哑えると、小萌先生の机にあった小さなライタ—で火を|点《つ》けて、
「ベルギ—产のレア物らしいけど……うえ。こりゃ失败じゃん。|驮目《だめ》だ、私には细かい味は分かんないじゃんよ」
「黄泉川先生は一本一本を味わわないでバカ吸いしてるから钝ってるんです—」
「一日に私の优に五倍は吸ってる『|山盛り灰皿《ホワイトスモ—カ—》』|月咏《つくよみ》センセには言われたかないじゃ—ん」
ぶは—、と二人して机の板の表面に吹きつけるように烟を吐く。
机の上に当たった白っぽい烟はそのままあちこちに散らばるが、ちょうど机の缘の边りで见えない壁にぶつかったように动きを止めると、ぐるぐると涡を卷いて机の四隅へ吸い?まれていく。
空气清净机の恩惠は『机の上』しかないため、|椅子《いす》に座っている小萌先生はともかく、黄泉川の方はやや|前屈《まえかが》みになって颜の位置を机の上に调节しなくてはならない。この边がまだまだ改良の余地ありなのだった。
「また|烟草《タバコ》が值上がりするみたいなのですよ—。先生はがっくりなのです」
「お果子や漫画に比べりゃまだマシじゃんよ」
学园都市の人口の八割は学生だ。大学生は除外されるにしても、契烟、饮酒が许可されている人间は|惊《おどろ》くほど少ない。そういったものに税をかけても大した予算增にはならないのが现状だ。よって、子供が好きそうなものに课税されるのが学园都市の|暗默《あんもく》の了解だった。
基本的にこの街は勉强をするための所であり、それに必要のない物品や|嗜好品《しこうひん》については税をかけても问题なし、という风潮がある。代わりに学园都市では一般的に|寮《りよう》の家赁や学食などが(学园都市の『试作品』という事もあるのだが)激安になるので结局プラマイゼロなのだった。まあ、学バスや教材などで|储《もう》けようとする学校もあるにはあるのだが。
「でも生徒さん|达《たち》の生活费は学园都市からの奖学金とか补助金。がほとんどじゃんよ。何だか回りくどいやり口な气もするけどねぇ」
「直接奖学金を减らすと言うとクレ—ムが杀到するのです—。『烟草に课税する』のと『お给料を减らす』のでは、お金の行き先は一|绪《いつしよ》でも反应が全く违うのとおんなじですよ—」
そんなもんかね、と|黄泉川《よみかわ》はジャ—ジのポケットから取り出した携带灰皿の中に、烟草の先。端に|溜《た》まった灰をトントンと收める。
と、黄泉川はそこで气づいた。
|小萌《こもえ》先生が唇の端に烟草を|?《くわ》えてゆっくりと上下に振っている。
今までなかった|癖《くせ》だ。
「ははあそれが例の契烟神父效果ですか、|月咏《つくよみ》センセ」
ビクゥ!!と小萌先生の肩が大きく动いた。
彼女は慌てて烟草を口の端から中央へと戾し、
「ちっ、违うのですよ?黄泉川先生たら一体いきなり何を日走ってるのですか?癖が移るとかそんな|马鹿《ばか》な事がある译がないのです—っ!!…」
「违うなら良いけど」
完金ガ—ドの姿势を固める小萌先生に对し、黄泉川はあっさりと退いた。拍子拔け状态の小萌先生は、しかし逆にその表情が真笑を语ってしまっている。
むぐぐ、と未だに警戒を续ける小萌先生に对し、黄泉川はもう一度烟を吐いてから、
「さて、と。それじゃそろそろ行くとしますか」
「あ、黄泉川先生の言っていた例の子达がそろそろ来るのですか—~」
「そういう事。ちょいと|厄介《やつかい》な事情を抱えてんだけど、まあ、それぐらい马鹿な方が私好みだし。私のクラスは|?《そろ》いも?って优等生ばっかだからつまんね—じゃんよ」
「っとっと!まだ烟草は长いのです、もうちょっとだけ吸わせてくださいなのですよ—っ!」
基本的に职员室以外は禁烟という现状を|鉴《かんが》みて、小萌先生は黄泉川の手を|掴《つか》む。
数分後、フィルタ—のすぐ手前まできっちり吸いきった小萌先生はジャ—ジ体育教师に连れて行かれる形で职员室を出た。
7
背後でタクシ—が走り去っていくエンジン音が闻こえた。
|一方通行《アクセラレ—タ》はそちらを见ない。
横で|打ち止め《ラストオ—ダ—》が何か言っているがそちらに视线も向けない。
ただ、目の前に广がる不可思议な光景に目を夺われている。
より详しく言うと、ここはとある高校の校门近くだ。远目に见てもごくごく普通の平均的な、突出した所は何もないだろうという感じが|窥《うかが》える铁筋コンクリ—トの校舍があるのが分かる。
しかし、それは问题ではない、
|一方通行《アクセラレ—タ》が见ているのもそういった校舍ではない。
彼の前に立っているのは、その高校で教师をやっているという二人の女性。
一人は颜を知っている。
长い发を後ろで束ねた、绿のジャ—ジを着た女だ。|黄泉川爱穗《よみかわあいほ》とかいう名前で、学园都市の|警备员《アンチスキル》も务めている。子供に武器を向ける|趣味《しゆみ》はないとの事で、|强能力者《レベル3》程度なら盾一つで|叩《たた》きのめすというトンデモ体育系教师だった。
彼女も问题ではない。
|一方通行《アクセラレ—タ》が|凝视《ぎようし》しているのは、もう一人である、
「な、何なのですか—……?」
|月咏小萌《つくよみこもえ》と名乘ったその女性だが……下手すると、またもやスポ—ツバッグの上で正座を始めている|打ち止め《ラストオ—ダ—》よりも小柄だ。
|一方通行《アクセラレ—タ》は少し考え、やたら背の低い女をチラリと|一瞥《いらべつ》して、
「何だこの说明不能な生き物は?どっから入り?ンできた」
「违うのですよ。先生は普通に大学を卒业して学园都市へやってきたのです—」
ますます状况を混乱させる一言に、|一方通行《アクセラレ—タ》は思わず目を细める。
それから、
「细胞の老化现象を抑える研究はもォ完成してたって译かァ。クソッたれが、これが『实验』当时ささやかれていた『二五○年法』の实态ってトコだな。世界の里の里まで知ったつもりでいたが、学园都市ってなァどこまで科学技术を先に进めちまってやがる……ッ!」
「え、ええと、そうでなくてですね—」
「あるいは研究は未完成で、この人はそれらを解析するために捕获された生体サンプルなのかも、ってミサカはミサカは少々真剑な颜でお传えしてみる。……|可哀想《かわいそう》に、きっと实验だらけでもうこのままず—っと自由时间とかないんだ、ってミサカはミサカはハンカチ片手に语ってみたり」
「あのう!何で先生は自己绍介しただけでそこまでシリアスな言叶を投げかけられなくてはならないのですか!?|黄泉川《よみかわ》先生も笑っていないで何とかしてくださいですよ—っ!!」
おろおろとするミニ教师に、ジャ—ジ女は腹を抱えて笑っていた。ここまで|一方通行达《アクセラレ—タたち》を连れてきた|芳川桔梗《よしかわききよう》も、まさかこんな同行者がついてくるとは思っていなかったのだろう。彼女も笑颜を浮かべているが、それはどちらかというと研究者|魂《だましい》に火が|点《つ》き始めた少々危うい感じの表情だ。
笑い续ける黄泉川は|一方通行《アクセラレ—タ》へと视线を移し、
「って—译で、これからはこの黄泉川先生が君达のお世话をするじゃんか。ま、部屋は余ってるしこっちは|居候《いそうろう》ができても问题なしじゃんよ」
「……あくまで|暂定的《ざんていてき》だがな」
|一方通行《アクセラレ—タ》のつまらなそうな声に对しても、『ごっ、误解は解けたのですか—?』とか何とか言っている|小萌《こもえ》先生の头をぺしぺし|叩《たた》きながら、黄泉川は笑っている。
「っつか、オマエはそれで良いのかよ?」|一方通行《アクセラレ—タ》は极めて普通の口调で言った。「|俺《おれ》を。取り卷く环境がどンなモンかは分かってンだよな。深夜に火炎瓶を放り?まれる程度だと思ってンなら考えが甘ェぞ。俺を|匿《かくま》うってなァ、学园都市の|丑《みにく》いクソ暗部を丸ごと相手にするよォなモンなンだからな」
「だからこそじゃんよ」
黄泉川も、これに当たり前のように对应する。
「私の职业を忘れたか。|警备员《アンチスキル》としちゃそっちの方がやりやすいじゃんか。つっても、|警备员《アンチスキル》の自宅へ|马鹿《ばか》正直に|袭击《しゆうげき》を仕挂ける连中は少ないと思うけどね。この街の|暗《やみ》は、私达から见えない位置で活动するのが基本じゃん。下手に宣战布告すれば、どっちが|溃《つぶ》されるかなんて目に见えてんだし」
「……、」
|一方通行《アクセラレ—タ》はわずかに|默《だま》って、黄泉川の言叶を吟味する。小萌先生だけが、『あれ?いつの斗にか切り替わったこの空气は何なのですか2』と周围を见回していた。
「死ンでから文句を言うンじゃねェぞ」
「|大丈夫《だいじようぶ》だよん」
「オマエの名前が『连中』のリストに登录される事だってあるかもしンねエ」
「その不良グル—プってのを更生させんのが私の仕事でね。助けるべきガキを怖がってたら最初の步み寄りもできないじゃんよ」
|一方通行《アクセラレ—タ》は舌打ちした、。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》といいコイツといい、いつの问にか自分の周りにはこの手の马鹿が增え始めている。
こういう场所にいると、彼は自分がすごく场违いな位置に一人で立たされているような气分にさせられる。
苦いものを|啮《か》み|缔《し》めている|一方通行《アクセラレ—タ》に、|黄泉川《よみかわ》はあまり大人の女性らしくない笑みを浮かべて、
「にしても、良かったよ。アンタは闻いてたより助けるのは简单そうじゃん」
「本气で言ってンのか?」
黄泉川が告げているのは、更生できるかどうかの话だろう。
彼女が知っている|由《よし》もないが、|一方通行《アクセラレ—タ》はすでに一万人以上の人问をこの手で直接杀している。その事实を踏まえると、黄泉川の言叶がどれだけ啮み合わないかが分かるだろう。
しかし。
そんな事など气づかないまま、黄泉川|爱穗《あいほ》は续けて言叶を放った。
「だってそうじゃんよ。なんだかんだ言いながら、私と住む事になったって闻くと、チェックリストに一つ一つ印つけていって死角を|溃《つぶ》そうとしてんじゃん。どんな小さな穴でも|塞《ふさ》いで、万に一っも实际に|袭击《しゆうげき》されないようにって。つまりそれって私|达《たち》を守る气まんまんなんでしょ?」
「───、」
|一方通行《アクセラレ—タ》は|眉间《みけん》にしわを寄せた。
だからこォいう现状を确かめらンねェ|马鹿《ばか》は手に负えねェンだ、と口の中で|?《つぶや》く。
8
|御坂美琴《みさかみこと》とは一回别れる事になった。
理由は单纯で、|上条《かみじよう》はお|腹《なか》が减っているからであり、汗を吸った制服から私服に藩替えたかったからであり、自炊しないと余りに余ってしまった|膨大《ぼうだい》な量のそうめんを处分できなかったからだ。
乾燥状态のそうめんの赏味期限がどんなものかは知らないが、何となく气分的に今年のそうめんを来年まで|缲《く》り越すのは|避《さ》けていきたい上条である。
美琴は『たかがそうめんが何なのよ—っ!』と叫んでいたが、上条の「じゃあ朝昼晚とそうめん渍けになってサラダ风パスタ风うどん风など创意工夫に明け暮れる日々を送ってみるか?段ボ—ルいっぱいのそうめん送り付けんぞコラ!!』というあまりの气迫にたじろぐ形で彼女からオッケ—を得た。
待ち合わせの时间までそんなに余裕がないため、上条は心なし早足で自分の学生|寮《りよう》に向かう。
「くそう。この前のス—パ—のセ—ルでやけにそうめんが安かった时点で|?《わな》の可能性に气づいていれば良かった。值段の割に|谁《だれ》も手に取ってなかったのはこれが原因か……」
溢まけにタイミング恶く、それだけのそうめんを仕入れた直後に、学园都市の外で生活している|上条《かみじよう》夫妻からも『いや—福引きで当たっちゃってさ—。|当麻《とうま》も好きだうそうめん?』と|膨大《ぼうだい》な童の乾燥|面类《めんるい》が送られてきている。この边は每度の事ながら、不幸の一言に尽きた。
そんなこんなで|寮《りよう》の前まで归ってくると、ちょうど|土御门舞夏《つちみかどまいか》が出てきた所だった。ここは基本的には男子寮なのだが、彼女のようにメイド见习い少女が义理の兄の部屋を片付けに来たり上条の部屋に空腹少女が转がっていたりなど、|近顷《ちかごろ》は风纪の乱れが目立っている。
この舞夏という少女、|普段《ふだん》はドラム缶型の自律清扫ロボットの上にチョコンと正座している事が多いのだが、今日は普通に地面を步いていた。
前发がメイド特有のフリルのついたカチュ—シャみたいなのに持ち上げられているため、おでこが大きく见えている。服装は绀色っぽい|长袖《ながそで》のメイド服というとんでもない|代物《しろもの》だったが、これで一应学校の指定制服(冬服)という事らしい。
彼女は家政学校に通っているのだ。
上条はチョコチョコと小さな步幅で步いてくる舞夏を见て、
「ありゃ。お前、いつもの清扫ロボットはどうした译?」
「うふ—、あのゆったり速度を待っていられないほど今の私は机嫌が良いのだぞ—」
この女の子も|姬神秋沙《ひめがみあいさ》に负けず劣らず表情が|掴《つか》みにくいのだが、今日に限っては颜を见るだけで喜怒哀乐の喜がズバァ—ッ!!と|闪光《せんこう》を放っているのが分かる。何だ何だ何が起きたんだ?と上条が首をひねっていると、舞夏は自分の右手の甲を左の|颊《ほお》に当て、おっほっほ—、とメイドらしからぬ|高飞车《たかびしや》っぽい仕草をして、
「これだよこれこれ—。カフスが|上手《りつよ》くいってだな—」
「かふす?」
「袖口って事だぞ—」舞夏はニコニコと|微笑《ほはえ》みながら、「メイドってのは基本的に目立っちゃ|驮目《だめ》だからな—、あんまり派手派手な发とかアクセサリ—とかはまずいの。だから袖口とか|襟元《えりもと》とか、小さな所にこだわる事でこっそり个性を出してるんだぞ—」
ああそうなんだ、と上条は舞夏の手の边りを改めて见る。
袖の布地を手首の所で折り返したようなものだ。いつもとどう违うのか、上条には良さが理解できないが、ようは女の子が初めて支给された制服のスカ—トの丈を短くして喜んでいるようなものだろうか?
舞夏はうっとりした颜で、柔らかそうなほっぺたに自分の袖をスリスリ|擦《こず》り付けると、
「はぁぁ—……、。今期の『ガントリット』は本当に大成功なのだぞ—。私は今と—っても气分が良いからちょっとしたお恼みぐらいは闻いてやってもよろしい—」
「そうか?なら|莫大《ばくだい》に余ったそうめんの处分法が知りたい」
「茄でたそうめんを细かく切って、春卷きの具などに混ぜてしまうと意外に味は变わらないモンだ—。手轻にボリュ—ムアップできるしな—」
舞夏は答えると、ててて—、と小走りでどこかへ去ってしまう。その背中を见るだけで喜び光线があちこちに放出されていくのが|窥《うかが》えた。
|上条《かみじよう》はしばらくそちらを眺めていたが、
「……そりゃ味の浓いものにぶち?みゃどんなモンでも味は分からなくなっちまうだろうよ」
结构投げやりな|舞夏《まいか》の回答をボソッと寸评しつつ、ここにいても仕方がないので学生|寮《りよう》へ入る事にした。
オンボロのエレベ—タ—に乘って七阶に着くと、後は|真《ま》っ|直《す》ぐの通路を步けば、ズラリと并ぶドアに混じって上条の部屋がある。
|键《かぎ》を开けて中に入ると、空腹少女インデックスが床の真ん中でバタリと仰向けに倒れていた。どうせまたお|腹《なか》が减っているのだろう。上条は|薄《うす》っぺらい|?《かばん》をその边に投げると、
「今日もそうめん」
「やだぁ!!」
ズバン!!と真っ白な修道服を着た银发の少女は势い良く起き上がった。彼女は绿色に|辉《かがや》く|瞳《ひとみ》に不满いっぱいの感情を乘せると、
「何でとうまはここの所ずっと日本制の|面类《めんるい》ばっかりなの!?これ何の|仪式《ぎしき》!食という文化を应川した体内调节|魔术《まじゆつ》の一种なの!?」
ぶ—ぶ—文句を言っているインデックスだが、实际にそうめんが食卓に并ぶと结构美味しそうに平らげてしまうので大きな问题はない。ようはそうめん|倦怠期《けんたいき》なのだ。倦怠と言ってもあくまで一时的なものであって、根本的な所では大好きだからこそ起こりえる心の动きなのである。
上条はコクリと|颔《うなず》くと、
「……恋爱って难しいな」
「とうま?」
インデックスが不审人物を见るような目でこちらを窥っていたが上条は气にしない。
ちなみにこの部屋にはもう一匹の|居候《いそうろう》がいて、その|三毛猫《みけねこ》はベランダ近くの|日向《ひなた》でポカポカした|阳射《ひざ》しを受けていた。ついこの间まで风通しの良い场所を选んで丸まっていたのだが、この边りが季节の移り变わりといった所か。コイツはそうめんとか关系ないので|吞气《のんき》なものだ。
|近顷《ちかごろ》は冬毛に变わりつつあるのか、あちこちに猫の毛が散らばっている。あと体のサイズが少しずつ大きくなってきている气がする。
上条はユニットバスで着替えるための私服に手を伸ばしつつ、
「とにかく今日は舞夏から秘策を传授したので早速实行です。目指せ春卷き风そうめん1」
「なら普通に春卷きで良いかも!?」
インデックスが叹きの声を放ったその时、不意にインタ—フォンが鸣った。
「|谁《だれ》だろ?」
上条がドアを开けると、そこにいたのは|土御门元春《つちみかどしとはる》だ。
「お—、いたいたにゃ—。カミや—ん、恶いんだけどちょっと手传ってくんね—かにゃ—」
その言叶に|上条《かみじよう》は警戒。し、
「な、何の手传いだ?まさかまた国际规模|魔术舰队《まじゆつかんたい》を沈めて来いとかそういうヤツか?」
「カミやん……もうスム—ズにそんな言叶が出てくるなんて……同情して良い?」|土御门《つちみかど》は哀れむようにこち。らを见た後、「そ—いうんじゃなくて、|舞夏《まいか》がちょいと料理を作りすぎちまってにゃ—。なんか一○时间ぐらい煮?んだシチュ—をさっき|锅《なべ》ごと持ってきたんだけど、そんなの食べきれないぜい。かと言って舍てちまうのももったいね—し、良かったら|一绪《いつしよ》に───」
「───食らう—っ!!」
叫んだのは上条ではなくインデックスで、その上一应の家主さんである少年を背後から|弹《はじ》き飞ばす形で急接近してきた。土御门の衣类に食べ物の?いがわずかに残っているのか、今まで部屋でくつろいでいた|三毛猫《みけねこ》も小走りで近づいてくる。
上条は文句の一つも言いたかったが、インデックスの寻常ではないノリを前に口は闭ざしておく事にした。贤明、の二文字が脑里に浮かぶ。
そんなこんなで|一行《いつこう》はすぐ|邻《となり》の土御门の部屋へ。
全体的な间取りは、もちろん上条のものと全く同じだ。しかしジムにあるようなトレ—ニング机材があちこちに置いてあるだけで、随分と印象は变わってくるものだ。あと|壁际《かべぎわ》に本棚がニつあってその内の片方がメイドの出てくる漫画等で埋め尽くされた|特殊空间《コレクタ—フイ—ルド》と化しているが、そっちには触れないでおくのが友人の务めだと上条は思う。
「これだぜい」
と言って、土御门が指差したのはテ—ブルの上。舞夏が今まさに持ってきた所なのか、料理人が使っていそうな银色の|寸胴《すんどう》锅がそのままズドンと置いてある。もちろんあんな巨大な锅を受け入れる|锅敷《なべし》きなど普通の|寮生《りようせい》が持っている译がないので、古新闻がテ—ブルに敷かれていた。
土御门が锅に近づき、カパッと|盖《ふた》を开けると、中にあったのはオレンジ色のシチュ—だ。
「ベ—スはニンジンらしいんだけど|完壁《かんぺき》に煮崩してあるにゃ—。その上から改めて具材になる野菜とかを放り?んだっつ—とんでもないシチュ—だぜい」
「ニンジンっていうと结构甘いんじゃね—の?」
?いを|嗅《か》いでみる限りではそんな感じだ。砂糖をそれほど使わず、野菜から出てくる甘みだけで味をつけているのかもしれない。
とりあえず、底の浅い大川におたまでシチュ—を盛っていく。ジャガイモや豚肉などは大きめに切ってあった。野菜は结构な种类取り?まれていて、何だか健康饮料みたいに普通のご饭じゃ摄取しにくいような荣养まで|?《そろ》ってしまいそうな充实っぷりだ。ちなみにタマネギが使われているため三毛猫には分けられなかった。『何だよそれ食べたい食べたいこれ食べた—い!!』とゴロゴロ转がる小动物に目を合わせられない。
そんなこんなでお食事开始である。
思いがけず食事が豪华になったのだが、そうめんどうしようと思わなくもない。
|上条《かみじよう》は『いただきます』と言ってから、スプ—ン片手に|土御门《つちみかど》の方を见て、
「でもお前も太っ腹だよな—。なんつ—か、见习いっつっても|舞夏《まいか》のレベルってそこらの料理店に匹敌するぐらいなんだろ?」
「にゃ—。だからこそなんだぜい。そんだけ价值のあるものを食わずに|驮目《だめ》にしちまいましたなんつったらどうなんだよ。こんなに大量にあると|流石《さすが》に一人ではきついにゃ—」
「そんなモンか。でもこのシチュ—って保存が|利《き》きそうだけどな」
ピク、と土御门の动きがわずかに止まった。
この男、基本的に外食だったり义理の妹に料理を作ってもらったりと、一人暮らしにあるまじき自炊ができない学生だったりする。だからこそその可能性を思いつかなかったのだろう。
自炊派少年上条|当麻《とうま》はさらに指摘する。
「あと、こんだけの量を舞夏が作ってくるって事は、アイッこれからしばらくお前の部屋には来れなくなっちまうんじゃね—の?だからお前が饥え死にしないように、荣养があって保存の利くものをいっぱい用意しておいたんじゃ───」
|三毛猫《みけねこ》が前脚を使って箱のようなものをペシペシと|叩《たた》いていた。
见ると、そこにあるのは保存用の密闭容器だ。メチャクチャ大きい。
「……、」
「……、」
「……、」
上条当麻とインデックスと土御门|元春《もとはる》はそれぞれ颜を见合わせる。
土御门舞夏の大いなる优しさと、土御门元春の驮目っぷりを比较し、なおかつこの长期战用シチュ—が夺われるとサングラス少年の未来にどれだけの影が差すかなども推测してみる。
|沈默《ちんもく》する事およそ数秒。
三毛猫が、みゃ—と鸣いた。
それを合图に、上条とインデックスはほぼ同时に、ガツガツガツガソバクバクバクムシャムシャ—ッ!!と势い良くシチュ—を食べ始める。
颜が青くなったのは土御门だ。
「ちょ!?カミやんストップストップ!!オレの思い违いだったこれはお前らには分けられないってか入の话を闻けよ义妹の料理はオレのもの—っ!!」
「アッハ—残念だがお预けなんて纳得できるか!!っつか止めるんなら俺じゃなくてインデックスの方にするんだな!!早くもアイツはおかわりタイムに突入だッ!!」
にゃ—っ!?と土御门が绝叫するがインデックスはもはや止まらない。ともすれば|锅《なべ》ごとがっついてしまいそうな势いでスプ—ンが动く。
なんというか、今日も平和だった。
[#改ペ—ジ]
行间一
ロンドンのランベス宫とは、元々イギリス清教の|最大主教《ア—クビシヨツプ》の官邸として用意された建造物だ。现在は|敷地《しきち》内が观光地として开放されているものの、|未《いま》だに建物の内部へ}般人が入るのは禁止されていて、一切の情报も封じられている。
简单に言えば、谁もその内部がどんなものかを知らない。
历史を感じさせる外观から想像するのが精一杯という|谜《なぞ》と|魅惑《みわく》に包まれた空间であり、多少なりとも地位や权力といったものを意识するイギリス清教徒ならばゴ—ル地点として|狙《ねら》うに值する、玉座そのものと言っても过言ではない确かな『场所』だ。
一般人にはあまり缘のない、それ|故《ゆえ》に|彻底《てつてい》した非公开を不审がられないこの建物は、女王のいるバッキンガム宫殿以上の|魔术的《よじゆつてき》防御|网《もう》が张り巡らせてある。要人警护に当たる者はおろか庭师や清扫系までもが极限の对侵入者用近接魔术を修得し、柱の配握から壁纸の模样、西洋ランプの光量に至るまでその|全《すベ》てが魔术的意味を持った单一のトラップ[#「单一のトラップ」に傍点]として机能する。|馆《やかた》そのものが巨大な一つの装置である以上、『|?《わな》を|游《さ》けて进む』といった通常の侵入方法が一切通用しないという、|屁理屈《へりくつ》をそのまま实现させたような设计思想を持っているのだ。圣职者、そしてアイアンメイデンからの皮肉として|处女の寝室《ネイルベツドル—ム》とも呼ばれている。
そのランベス宫も、现在は深夜の静寂に包まれていた。
日本と英国ではおよそ九时间の时剃があるのだ。
昼间に比べれば人员は减ったものの、实质的な警备レベルは格段に跳ね上がり、なおかつそれを谁にも勘付かせないという『见えざる严戒态势』の中、
|最大主教《ア—クビシヨツプ》ロ—ラ=スチュア—トはバスル—ムにいた。
「ふんふんふふんふんふんふ—ん?」
鼻歌だけが|反响《はんきよう》する、光に满ちたその空暗を见れば、ランベス宫に|憧《あこが》れを抱き高贵なイメ—ジを巡らせている连中は腰を拔かすかもしれない。
バスル—ムと言っても、そこは二○メ—トル四方ものサイズを夸る广大な空间だ。しかしそれに反して大浴场という形式ではなく、小型のユニットバスが何十にもわたってギッシリと配置されていた。
しかもそれぞれの|浴槽《よくそう》には『电气|风吕《ぶる》』とか『マイナスイオン风吕』とか『ジェット水流マッサ—ジ风吕』とか、とにもかくにも科学サイドの?いがぷんぷん漂う机能ばかりがついている。
それもそのはず、これらのお风吕は学园都市がお近づきの印として、割とお中元やお岁暮っぽくロ—ラの元へ赠っている品々だったからだ。
现在、ロ—ラはベ—ジュ色の修道服のスカ—トを两手で大きくめくって、ジェット水流|风吕《ぶろ》の缘に腰挂けて、足だけを|浴槽《よくそう》に突っ?んでいる。
足汤专用の洗面器みたいなお风吕もあるのだが、ロ—ラはこのジェット水流を足に当てるのが气に入っているようだ。
身长の二倍以上もある金发は汤气を浴びて雨滴を受けた|蜘蛛《くも》の糸のようになっているが、こちらは後で整え直すので问题はない。何はともあれまず足汤なのだった。
(んっん—……幸福に满たされたるのよ—。さてさて、足をほぐしたら今度はあちらのビリビリ电气风吕で全身を温めて───)
そんな一日の体の疲れをほぐしていたロ—ラ!!スチュア—トの元へ、
いきなりノックもなく、ドアを|蹴破《けやぶ》るようにステイル=マグヌスが飞び?んできた。
「|最大主教《ア—クビシヨツプ》!!」
赤く染めた发を伸ばし、口には|烟草《タバコ》、两手の一○本指には银の指轮、右目の下にはバ—コ—ドの|刺青《いれずみ》、体からは香水とニコチンの混ざった|?《にお》いを发散させるトンデモ神父の叫びに、ロ—ラはビクッ!!と全身を|震《ふる》わせた。
たかが足汤と言っても、彼女はスカ—トを大きくめくって生足を|露出《うしゆつ》している所である。ロ—ラは慌ててスカ—トを下ろそうとしたが、その急な动きのせいで腰が滑って、座っていた浴槽の缘から中へ盛大に转がった。
ざっぱ—ん、と波がぶつかるような音が广がっていく。
报告书を手にしているステイルは少しも气に留めない。
「この报告书に书かれている项目は本当なんですか!?また|贵方《あなた》の间拔けスキルでも发挥したとかじゃないでしょうね。|最大主教《ア—クビシヨツプ》の一言は世界を动かす事もあるんですからしっかりし……水面下でぶくぶく言ってないで答えてください!これは贵方が书いたものなんでしょう!!」
实はぶくぶく言っているのはジェット水流を颜に受けて苦しんでいるだけなのだが、ステイルから见ると浴槽へ落ちて足をM字に大きく广げたパンツ丸出しの女がハシャいでいるようにしか见えない。
ロ—ラはザバァ!!と势い良く水面から颜を出すと、
「な、なななな何をいきなりレディの浴室に土足で足を|踏《ふ》み入れたるのよステイル?あのその圣职者といえどもイヤ圣职者だからこそこういった场面を见られたるは───」
「い·い·か·ら·答·え·ろ·よ!!」
「驮目よ—ステイル!!炎剑を水面に刺すればお风吕が煮えちゃう!!」
ロ—ラは转がるように浴槽から脱出する。直後、煮えるどころか轻度の水蒸气爆发が起きた。
|濡《ぬ》れた床の上でパクパクと口を开けて呼吸している|最大主教《ア—クビシヨツプ》は、长い长い发が|茧《まゆ》のように全身に|络《から》みついて何ともモンスタ—っぽい。
<img src="img/禁书目录12_066.jpg">
ステイルはこめかみに血管を浮かび上がらせ、
「良いからさっさと报告书の文面を再读し、详细を说明してください。こっちは早く仕事を终わらせて就寝したいというのに、何でこう寂しい女の面倒见なくちゃならないんですか……?」
しかしロ—ラは人の话を闻いていない。
「ハッ!!先ほどのお汤で修道服が肌に张り付きて|**《いんび》なる肢体が|露《あらわ》になりて?いけなし、あちらを向きてステイル!私の肌着は|何人《なんぴと》にも见せたるつもりはなしにつきのだから!!」
「……、」
ブチリ、という小さな音が闻こえた。
ステイルが|烟草《タバコ》のフィルタ—を|啮《か》み|千切《ちぎ》った音だった。
「ま、待ていなのよステイル!?炎剑を|直《コか》に刺すれば私が燃えちゃう—っ!!」
逃げるロ—ラを炎剑片手にステイルが追う。
今日も眠れぬ夜となりそうだった。
[#改ペ—ジ]
<a name="chap3">第二章罚ゲ—ムはどんな味?Pair_Contract.
1
|御坂美琴《みさかみこと》はコンサ—トホ—ル前の广场にいた。
待ち合わせ场所である。
「……、来ない」
あちこちで友人なり恋人なりが合流しては广场から|离《はな》れていく景色の中、一人だけポツンと待ち续けているのは结构しんどい。
美琴の服装は|常盘台《ときわだい》中学の制服のままだった。|薄《うす》っぺらい学生|?《かばん》とバイオリンのケ—スを抱えている。游びに行くのに|邪魔《じやま》だが、|寮《りよう》まで持って扫るのはそれはそれで面倒なのだ。|普段《ふだん》なら自由に出入りできるのだが、运恶く寮监とかに捕まるとしつこく外出目的を寻ねられる场合もある。
なので、待ち合わせの时间に迟れないよう、|敢《あ》えて寮に归るのをやめて先に待ち合わせ场所へやってきたのだ。今ある荷物は近くにいるらしい|白井黑子《しらいくろこ》に取りに来てもらおうかなと考えて电话で连络を入れておいたのだが、
「どっちも来ないってどういう事よ……?」
美琴は|呆然《ぼうぜん》と|?《つぶや》く。
本来は白井にさっさと荷物を押し付けたら时间までカフェで|暇《ひま》を|溃《つぶ》していようと考えていたのだが、そもそも大前提の白井すらやって来ないので、结果としてずっと立ちっ放しだ。
迟刻しないようにあれこれ努力したのに、|上条《かみじよう》の方が|远虑《えんりよ》なく迟れて来るのでは何のための配虑だったのだろう、とため息を|吐《つ》く。
かと言って、今から荷物を寮へ戾そうとしても、すでに待ち合わせの时间は过ぎているのだ。
ここを出た途端にすれ违いになるかもしれない。
はぁ、と美琴は疲れたように肩を落として、
「よくよく考えたらあの马鹿の番号知らないのよね。……でも、こっちから寻ねるのは|?《しやく》だわ」
立っているのも疲れたので、その场でしゃがみこんで薄っぺらい学生?とバイオリンのケ—スを地面に置いた。?はもちろんケ—スの方はそれだけで|骨董的《こつとうてき》价值がありそうだが、美琴はあまり气に留めていない。ケ—スはあくまでケ—スとして机能させるだけである。
と、そんな疲劳感漂うお|娘样《じようさま》に、
「いたいたいました!御坂美琴さんですよね!」
明るい少女の声が飞んできた。自分の名前を呼ばれた|美琴《みこと》は『おや?』という感じで颜を上げる。
そこには美琴よりも小さな中学生が立っていた。黑くて短い发の上に造花をいっぱい取り付けた、セ—ラ—服の少女。确か、|白井黑子《しらいくろこ》と同じ|风纪委员《ジヤツジメント》に所属していたと思う。美琴に直接话しかけてくるより、主に白井の周りをウロウロしている方が多いようだが。
「确か……|初春饰利《ういはるかざり》さん、だっけ?」
「わあ、觉えててくれたんですね!」
|瞳《ひとみ》をキラキラさせる初春。
それはまさに|羡望《せんぼう》の|眼差《まなざ》しそのものだ。が、彼女は实は美琴ではなく『|憧《あこが》れの|常盘台《ときわだい》中学の先辈さん』というおじ抚。栌世界に憧れているだけなので、キラキラ具合は白井と少し方向性が违う。こちらはあくまで健全な尊敬である。
初春は恐る恐るという感じで寻ねてくる。
「あの—、确か、白井さんが荷物を受け取りに来るという话だったと思うんですけど……」
ん?と美琴は|眉《まゆ》をひそめる。
初春は地面に置かれた学生|?《かばん》やバイオリンのケ—スを眺めて、
「ええとですね。白井さん岩袭尽の仕事を押し付け……いや|一生悬命《いつしようけんめい》顽张っているので、ちょっと迟れそうなんです。本人はここへ来る气まんまんなんですけど、ちょっと时间的に无理っぽいので代わりに私がやってきました—」
そうなんだ、と美琴は|颔《うなず》きかけたが、そこで固まった。
白井は(误解のない方向で)近しい人间だから|远虑《えんりよ》なく|赖《たの》み事をできるのだが、こんないたいけな女の子に荷物运びなど任せられない。まして、初春は常盘台中学の人间ではない。|寮《りよう》の中には入れないのだから、必然的に荷物は『寮の|谁《だれ》かに受け渡し、部屋に运んでもらう』事になるだろう。
それが寮监だったりしたら最恶だ。
オトナの女性である寮监サマはおそらく初春にはニコニコの笑颜を向けて快く引き受けるだろうが、美琴が寮に归ってきた时に待っているのは|愤怒《ふんぬ》の|魔王《まおう》である。
なので、美琴は气轻にパタパタと手を振って、
「黑子が来れないんだったら良いわよ。そこらのホテルのクロ—クにでも预けておくから。部屋さえ取っちゃえばそういう风に利用する事もできるし」
「は—、コインロッカ—に预けない边りは|流石《さすが》ですね」
初春はびくびくとした瞳でバイオリンのケ—スを眺めている。确かにそんなに高价なものなら自分みたいな一般人が触れるのは远虑した方がいいのかも、と全身で诉えている。
美琴はさらに手を振って、
「いやいやいや!别に|贵女《あなた》が|丁宁《ていねい》に运ぶか疑っているって译じゃないから落ち?まなくても良いわよ!!」
「でも……」
|初春《ういはる》は冒叶を|浊《にご》す。
が、それ以上は续けず、彼女は话题を变えた。
「それにしても、|常盘台《ときわだい》中学って本当にすごいんですね—。学校の授业でバイオリンを使うなんて普通じゃないですよ」
「そんなモンかしらね。使ってみるとそんなに难しいものでもないけど」
|美琴《みこヒ》はバイオリンを眺める初春の|瞳《ひとみ》に、微妙に|羡望《せんぽう》の光がある事に气づいて、
「ええと、もしかして……ウチの。中学に|憧《あこが》れてるクチ?」
「いっ、いいえそんな!灭相もないです!!」分かりやすいぐらいのうろたえ方だった。「私みたいな平々凡々な一般市民があんなお|娘样《じよヒつみごま》だらけの空间に|踏《ふ》み?めるはずないですってば!!」
「いや、实力さえあれば金钱面はいくらでも补助が效くわよ。ウチの学校は|上《うわ》っ|面《つら》より中身を优先する感じだからね。逆にどっかの王族の娘とかあっさり不合格にしたって话もあるし」
「そ、そんな王家も切っちゃうような超难关エリアじゃますます|驮目《だめ》ですよ—……。バイオリンとか触れた事もないですし。上手に|弹《ひ》けたら格好良いとは思いますけど」
「そりゃあ食わず嫌いだと思うんだけどなぁ」
美琴は地两に置いたバイオリンのケ—スを|掴《つか》むと、
「よし。何ならちょっとやってみるか」
「え!?|听《き》かせてくれるんですか?」
「|贵女《あなた》が弹くのよ」
「ぶぇぇ!?」
初春はギョッとした目で美琴の颜を见たが、常盘台中学のお娘样は早くもケ—スの留め具を外し、|骨董品《こつとうひん》特有の古びた|辉《かがや》きを见せるバイオリン本体と、それを弹く弓を取り出している。
「ほい乐器」
「ぶっ!?な、投げないでくださいっ!!」
值段が全く想像つかない一品を初春はおっかなびっくり受け取る。|坏《こわ》れるどころか汗がついただけで价值が下がるんじゃないだろうか、と固まっている初春。
美琴は初春の|邻《となり》に立つと、适当な仕草でバイオリン各部を指差していく。
「じゃあ言った通りにやってみて。左手で本体を握って、そっちの棒みたいなのを右手に持って|弹《ひ》くの。乐器の|尻《しり》を|颚《あご》と|锁骨《きこつ》の边りで挟んで固定してみ。安物だから力加减とかあんまり气にしなくて良いわよ」
そうは言っても安物というのはお娘样の价值感における安物なのだ。もうさっさとこの爆弹を美琴に押し返してここから逃げたい初春だったが、その拍子にボキッと乐器が折れたら色々と一生モノな气がして大胆な行动に移れない。と、カチコチに固まって指一本动かせない|初春《ういはる》に、|美琴《みこと》は|怪诱《けげん》そうな目で、
「ごめんごめん。やっぱり口だけじゃ分からなかったかしら」
「え、ええ」
「じゃあ手を使って教えてあげよう。こうすんのよ」
「うええ!?」
初春が叫び声を上げたのは、美琴がそっと初春の後ろから两腕を回して、バイオリンを|掴《つか》んだからだ。まるで幼い子供に伟亲が优しく教えるような格好である。
不意の急接近にビキバキに冻りついた初春だが、彼女の背中に密箔している美琴は全く气づいていない。これは单なる偶然なのだが、まるで初春の耳元に息を吹きかけるような姿势でレクチャ—が始まる。
「左手の弦を押さえんのも大切だけど、まずは右手の弓の使い方よね。难しそうに见えるかもしれないけど、弦に对して正しい角度。で|弹《ひ》く事だけ觉えりゃ普通に音が出るから」
初春の手に重ねるように合わせられた美琴のしっとりした手が动く。乐器を调律するような、细い一音だけが长く伸びた。
ちなみに颜を赤くして目をくるくる回している初春は美琴の话などほとんど耳に入っていないが、美琴は美琴で|完壁《かんぺき》に意识していない。|白井《しらい》のような相手ではない限り、基本的に美琴は女の子に优しいのだ。
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「左手の使い方によって奏法は变わっていくの。ピッチカ—ト、グリッサンド、フラジョレット。まぁ色々あるんだけど、どれも难しくないし一つずつやってみましょうか。なに、こんなのすぐに惯れちゃうから|大丈夫《だいじようぶ》よ」
|初春《ういはる》の背中に人肌の|温《ぬく》もりが传わり、耳元には甘い息、两手の指は|缓《ゆる》やかに初春のそれを包み?んでいる。
(こっ、これが|白井《しらい》さんがのめり?んでいるお|娘样《じょうさま》上下关系の|全貌《ぜんぼう》だったのですね!!)
と、ようやく|美琴《みこと》は初春がガチガチになっている事に气づいた。
|紧张《きんちよう》をほぐすように彼女は言う。
「大丈夫よ。ここは大きな广场でパフォ—マンスの规制も特にないから、乐器を使っても人から注意される心配はないし」
「い、いえ、そういう事では……って|见せる行为《パフオ—マンス》!?ひゃあ、いつの间にやら周りに人だかりができてるし、何だか注目の的になって───」
初春のギョッとした声は、途中で途切れた。
|何故《なぜ》ならば。
その人混みの中に、壮绝な表情を浮かべている白井|黑子《くろこ》の颜を发见したからだ。
「ぎゃああああああああああああ—っ!!」
初春の肩がビクッと|震《ふる》える。
腕に不自然な力が入り、ぎぎぎ—っ!と乐器から嫌な音を出してしまう。
それらを眺めていた白井は、人だかりの中心に立っている同僚に向かって念を放つ。
「(……ああそういう事ですの珍しく白井さんの荷物运びの用事を手传ってあげますよとか|殊胜《しゆしよう》な事を需っていると思ったらこんな里がありましたのね油断も|隙《すき》もないとはこの事ですわそもそもわたくしだってそんな|美味《おい》しい目に|遭《あ》った事はないというのにお姊样ったら—)」
テレビの放送コ—ドに引っかかりそうな颜だった。
冷や汗をダラダラかいている初春|饰利《かざり》だったが、やっぱり|御坂《みさか》美琴は气づいていない。
「どうしたの?」
「いっ、いえ何でも!!」
「不审者がじっと见てるとか?」
「不审とか言っちゃ驮目ですっ!!」
初春はほとんど泪目で语ったが、美琴は最後まで白井の存在を考えもしなかった。
2
待ち合わせの时间は午後一时だった。
「すでに一时三○分ってどういう事なのよ—っ!!」
第七学区ではそこそこ目立つコンサ—トホ—ル前の广场で、ポツンと一人で立っていた|御坂美琴《みさかみこと》の绝叫が|响《ひび》き渡る。|上条《かみじよう》は两手を合わせて头を下げながら全力で驱け寄った。
「や—すみませんでした—っ!!」
实を言うと|土御门元春《つらみかどもとはる》と食粮问题を巡って轻い|殴《なぐ》り合いになっていたから迟れたのだが、こういう时は下手な言い译はしないで素直に谢った方が吉である。
美琴は美琴で腕を组み、右足の|爪先《つまさき》でトントンと小さく地面を|叩《たた》きつつ、前发からパチパチと青白い火花を散らせていた。
「私は|罚《ばつ》ゲ—ムを|赌《か》けた战いの胜者なのに、どうしてアンタの事情に振り回されなくちゃならないのかしら。かれこれ一时间もボケ—ッと突っ立たされたさらし者の气持ちがアンタに分かる?待ってる途中で变な男どもに声かけられるし、いちいち|雷击《でんげき》の|枪《やり》で|丁宁《ていねい》に追い拂うのもとっても面倒臭かったのよ—?」
「や—や—っ!本当にごめんですよ!」
实质的には内容ゼロな会话を续けてやり过ごそうとしていた上条だったが、その时ふと彼は美琴の|台词《せりふ》に违和感を觉えた。
「って、あれ?待ち合わせの时间って一时だったよな」
「……アンタ、まさかそれすらスル—してたとかっていう话じゃないでしょうね」
「そうじゃなくて。一时间前から待ってたって事は、お前って待ち合わせの三○分も前からここにいたの?そりゃ、まあ、恶かったな」
ビクッ!!と美琴は肩を|震《ふる》わせて目を丸くする。
彼女は组んでいた两手を解いて、わたわたと|掌《てのひら》を振ると、
「违っ……ば、|马鹿《ばか》ね。|大杂把《おおざつぼ》に言ってるだけで、别にきっちり六○分前からここにいた译じゃないわよ。な、何で胜负に胜った私がアンタを待つ侧に回ら。なくちゃならないの?胜手に变な想像膨らましてニヤニヤしないで欲しいわね」
「お前……」
上条は思わずという感じで言叶を出す。
おろおろとしている中学生の女の子の颜を正面から见据えて、
「……そんなに罚ゲ—ムで俺が苦しむ颜を见るのが乐しみだったのか。前々から思ってたけど、お前って实は结构|阴险《いんけん》なんじゃ───」
言い终わる前に美琴の前发から雷击の枪が飞んだ。
|上条《かみじよう》はとっさにかざした右手でその|一击《いちげき》を|弹《はじ》き飞ばす。ズバチィッ!!という强烈な|炸裂音《さくれつおん》を闻く限り、おそらく电压は亿の单位に达しているものと思われる。
彼の右手には|幻想杀し《イマジンブレイカ—》という力があり、|魔术《まじゆつ》だろうが超能力だろうがどんな异能の力であっても触れただけで打ち消す效果を持つ。
それでも怖いものは陷いのだ。
上条はぶるぶると|震《ふろ》えながら、一言。
「……、图星?」
もう一度雷击の|枪《やり》が飞んできた。
ドバン!!という|大音响《だいおんきよう》に、コンサ—トホ—ル前广场に集まっていたカップル|达《たち》が『おわあ!!』と叫んで逃げ出した。ましてそれをギリギリで受け止めた上条はちょっと泪目である。「何ですか!?|御坂《みさか》さんは一体どのような言叶をご所望なのですか!!」
「良いからさっさと行くわよ」|美琴《みこと》はひくひくと唇の端を震わせ、首をわずかに横に倾けつつボソッと、「……あの时负けた分际で人间样に|盾突《たてつ》いてんじゃないわよクソッたれが」
「この|常盘台《ときわだい》中学のお|娘样《じようさま》がなんか变ですよ!!」
上条は绝叫したが、何だかとっても不机嫌な美琴はあんまりリアクションをしてくれない、コイツは先が思いやられそうだ、と彼はボリボリと头を|搔《か》いて、
「で、御坂。具体的に|罚《ばつ》ゲ—ムって何やんの。さっさと行くって言ってたけど、これからどっかに场所を移すのか?」
それを闻いた途端。
う?と美琴はややキョトンとした颜になった。
彼女はこちらを见る。
上条は|呆《あき》れたように、
「……お前、まさか何にも考えてなかったんじゃ」
「かっ、考えてるわよ!!ええと、あの、その、アレよ!|大霸星祭《だいはせいさい》で胜つために使った劳力分は返してもらうんだから!!」
「つまり实质的には何にも考えてなかったんだな」
「人の话を闻きなさいよ!!」
「自分から言い出したんだからプランはそっちで考えておけって。っつか、自分が受ける罚ゲ—ムの予定を|俺《おれ》が练る译ないってのは最初から分かってんだろ。ったく|马鹿《ばか》だな—」
「……、」
美琴はやや|默《だま》った、それから改めて上条の颜を见直す。
「えと、御坂───ううっ!?」
いつまでも|沈默《ちんもく》している彼女に话しかけた上条は、そこで思わず後ろへ下がりかけた。
理由は单纯。
お|娘样《じようさま》の目が据わっていたからだ。
|上条《かみじよう》はとても嫌な予感がした。
「アンタは|罚《ばつ》ゲ—ムで何でも言う事を闻くのよね?」
「いやその!何でもと言ってもできる范围というものがありましてね!!」
「闻·く·の·よ·ね?」
「───、」
「ついて来なさい」
「どこへ!?」
上条は绝叫したが、|美琴《みこと》は彼の手をガシィ!!と|掴《つか》んで|离《はな》さない。そのままズルズルとコンサ—トホ—ル前广场から远ざかっていく。
彼女は言う。
「|默《だま》ってついて来なさいっつってんのよ!それが最初の罚ゲ—ム!!」
「最初!?罚ゲ—ムって一つじゃね—の!?」
何やら颜が真っ青になっている上条|当麻《とうま》と、お怒りで颜を真っ赤にしている|御坂《みさか》美琴。
|密《ひそ》かに手と手を|系《つな》いで街を步いている状态なのだが、幸か不幸か二人とも全く自觉がなかった。
3
|一方通行《アクセラレ—タ》が见上げているのは、教职员向けに建てられたマンションだ。
学园都市の住居は基本的に学生|寮《りよう》ばかりで、こういったマンションなりアパ—トなりといった施设は生徒にあまり缘がない。
建物の外观だけを见れば学生寮もマンションもそう大した违いはないのだが、サ—ビス面に细かな违いがあり、それらが积み重なって个性となっていた。なんだかんだ言っても学生寮は『子供を管理する建物』である。寮はセキュリティという大义名分の下、防犯カメラの位置などに|远虑《えんりよ》がないのが特徵的だが、このマンションにはある程度の配虑がされていた。
「何阶だ?」
|一方通行《アクセラレ—タ》が寻ねると、ここまで案内してきた|黄泉川爱穗《よみかわあいほ》が笑いながら答えた。
「一三阶。停电になると阶段使うの苦しいじゃんよ—」
お—、と背の高い建物を见上げて声を出しているのは|打ち止め《ラストオ—ダ—》だ。彼女は|件《くだん》の一三阶を眺めようとしたらしいが、途中で太阳を直接见てしまってくらくらと头を振った。
その小さな肩を背後から支えたのが|芳川桔梗《よしかわききよう》だ。
「まぁ、一阶や二阶に比べれば|袭击《しゆうげき》の机会は减るんじゃないかしら」
「……建物ごと吹っ飞ばされる场合は上の阶の方が被害はデケェンだけどな」
|一方通行《アクセラレ—タ》が|寮《りよう》生活をしていた|顷《ころ》は|流石《さすが》にそこまでやられなかったが、别にこれからもそうだと保障された译ではない。
|黄泉川《よみかわ》は出入り口のオ—トロックで使うのだろう、ラミネ—ト加工のカ—ドを取り出しつつ言った。
「さてさて。ちょっと迟めになるけどお昼も食べなくちゃいけないし、とっとと部屋に入るとしようじゃん」
マンションの出入り口は一见开放的なガラスの自动ドアだが、耐爆仕样になっているのが|窥《うかが》える。カ—ドを通すだけのロック机构も、实质的にはカ—ドを握る指先から指纹や生体电气信号パタ—ンなどのデ—タもやり取りしているようだ。
いわゆる高级マンションなのかもしれない、と思った|一方通行《アクセラレ—タ》は|胡散臭《うさんくさ》い目で黄泉川を见て、「公务员の给料ってのは削减する方向じゃなかったンかよ?」
「结构安月给でも何とかなるものじゃん。これも建筑方面の实地试验を兼ねた『施设』だから、家赁のいくらかは大学侧が出してるじゃんよ。代わりに、セキュリティの方式なんかがいきなり变更されたりもするんだけどね」
それに、と黄泉川は付け加えて、
「|警备员《アンチスキル》って基禾的にボランティアだから无给なんだけどさ、あっちこっちで案外善意のサ—ビスしてくれたりするじゃんよ。ス—パ—のお肉が安くなったりとかね」
「……マンションの家赁と特卖日が同じ?いなのかよ」
そんなこんなで、|一方通行《アクセラレ—タ》、|打ち止め《ラストオ—ダ—》、黄泉川、|芳川《よしかわ》の四人はマンションの中へと入る。ちなみに|小萌《こもえ》先生は别の用事があるとかで今はここにいない。
おそらくこれも试作品の一つなのだろう、低振动エレベ—タ—に乘って浮游感も觉えずに一三阶まで|?《たど》り着くと、すぐそこのドアが黄泉川の部屋だった。
「どうぞ—」
と黄泉川が玄关のドアを开けると、そこに待っているのは4LDK。どう考えても家族向けで、なおかつ一生をかけてロ—ンを拂い续ける规模の部屋だ。实验协力として大学侧がある程度の额を免除しているとはいえ、本当に公务员の安月给で何とかなるのだろうか?
ピカピカに|磨《みが》かれたフロ—リングのリビングは、一人暮らしというイメ—ジに反して|小绮丽《こぎれい》に整えられていた。お酒のビンやグラスなどが棚の中に饰られていて、杂志や新闻なども专川のラックに收められている、テレビ、エアコン、コンポ、录画デッキなどのリモコンはテ—プルの角に并べて置いてあった。ソファの上のクッション一つ一つまで|丁宁《ていねい》に位置取りしてある。|打ち止め《ラストオ—ダ—》は目を丸くして、
「すごいすごい、ホコリもほとんどないかも、ってミサカはミサカはソファの上に飞び?みながら|褒《ほ》めてみたり」
柔らかいソファに沈む|打ち止め《ラストオ—ダ—》の明るい声に反して、|芳川《よしかわ》は|呆《あき》れたように息を|吐《は》いて、
「……|贵女《あなた》、また勤め先で始末书を书かされたのね」
ギクリ、と|黄泉川《よみかわ》のジャ—ジ姿が大きく摇れた。
「あ、あはは。何の事じゃ—ん?」
「どういう意味?ってミサカはミサカはゴロゴロしながら首を|倾《かし》げてみる」
「彼女は昔っから问题が起きると部屋の整理|整顿《せいとん》を始めるような人间だったというだけよ。しかも後先考えずにとりあえず片付けまくるから、後になって部屋の|键《かぎ》が见つからないとかいう事态にもなるの、气をつけておきなさい」
「それが次の仕事先を|一绪《いつしよ》に探してやっている恩人に对する言叶じゃんかよ—?」
黄果川と芳川は、どうも二人で话す时だけは|若干《じやつかん》ながら言动がガキっぽくなるような气がする、と|一方通行《アクセラレ—タ》は思った。あるいは、それぐらい昔からの付き合いがあるのかもしれない。芳川が面倒见の良い委员长役なら、黄泉川はいつも迟刻ばかりする问题儿役だろう。
芳川は、さらにリビングから|系《つな》がっているキッチンの方へ目をやると、
「その|癖《くせ》が拔けてないって事は、台所の方の癖も相变わらずみたいね」
「おいお—い!整理整顿の|恶癖《あくへき》は认めるけどそっちを指摘されるのは|?《しやく》じゃんよ—っ!|桔梗《ききよう》だって私が出した料理は|美味《うま》そうにバクバク食ってたじゃんか」
「作り方さえ知らなければね[#「作り方さえ知らなければね」に傍点]」
『?』と颜を见合わせる|一方通行《アクセラレ—タ》と|打ち止め《ラストオ—ダ—》。黄泉川が『私の腕は日々进步してるんだ。だったらその目で确かめてみ—っ!』と芳川を连れてキッチンへ行ってしまったため、彼らもその後に续く。
『实验の协力』という名目の通り、黄泉川宅のキッチンには样々な调理器具が并んでいた。水蒸气を利用したスチ—ム电子レンジや、AI搭载の高周波式全自动食器洗い机などなど、何だかメカメカしいものばかり集结している。
が、黄泉川はそういったものをあまり使わないらしい。
そのまま放って置かれていますと宣言しているような未使用感|滥《あふ》れる调理器具よりも|一际《ひときわ》目立つのは、四台五台とゴロゴロ置いてある电子炊饭器だ。シュ—シュ—と汤气が出ている所を见ると、|全《すべ》て|稼动《かどう》状态にあるらしい、、
|一方通行《アクセラレ—タ》はうんざりした颜で、
「……一人一台か。フザけてンのか白米マニア」
「いやいや违う违うそうじゃないじゃんよ」黄泉川は炊饭器を一つずつ指差して、「炊饭器ってのは炊く、煮る、蒸す、烧くと何でもありじゃんか。だから、こっちのがパンを烧いてて、そっちのがシチュ—を煮?んでて、あっちのが白身鱼を蒸してんの」
「……、」
何となく、芳川の言いたい事が分かっていた。
すでにそんな状态を知っている|芳川《よしかわ》は、相变わらずの光景にため息をついて、
「ナマケモノ」
「变な动物みたいな寸评はやめて欲しいじゃんよ。そんなに恶いものかなあ。これ准备さえしておけばボタン一つで胜手に料理してくれるし、火を使わないから昼寝してても全然问题ないっていう优れものなのに……」
「|贵女《あなた》は昔から小麦粉があればどんな残り物でもお好み烧きにできるとか言って大型ホットプレ—トを买ってきたり、压力|锅《なべ》さえあれば一生分の献立を作れるからもう|他《ほか》には何もいらないとか寝言を|唤《わめ》いたり……何にしても极端过ぎるのよ。足して二で割ったら反物质、反应が起きるぐらいにね
「ちやんと味と荣养と满腹感は得ているんだから问题ないじゃんよ—。|寸胴锅《ずんどうなべ》とかフライパンとかあれこれ|?《そろ》えるのは面倒だし。何でもできる万能の一品が欲しいじゃんか」
「はぁ。贵女は一度、苦劳して作る乐しみを觉えた方が良いわね」
と芳川は|谕《さと》すのだが、かく言う彼女の专攻は遗传子分野であって、作っていたものは二万强ものクロ—ン人间だったりする事を考えると、あんまり笑えないコメントなのだった。
4
|美琴《みこと》はバイオリンをクロ—クに预けると、上条を地下街へ引きずってきた。
九月一日にイギリスからやってきた|魔术师《まじゆつし》シェリ—=クロムウェルと、彼女の操るゴ—レム『エリス』によって结构な被害が出た场所だが、今ではもう|破坏《はかい》の|爪痕《つめあと》は见当たらない。碎かれた床や柱は补修され、契茶店のウィンドウなども新しいものと取り替えられていた。よほど颜を近づけてじっくりと见ない限り、违いは分からないだろう。
こんな急ピッチで工事が行われたのは、その後に控えていた|大霸星祭《だいはせいさい》の|影响《えいきよう》もあったのだろう、开催目的の半分近くが学园都市のイメ—ジアップを图った|诱导宣传《プロパガンダ》というぐらいなのだから、街が|坏《こわ》れていては话にならないのだ(とは言っても、结局当日に坏されまくったが)。
地下とはいうが暗いイメ—ジはなく、ピカピカに|磨《みが》き上げられた床や壁を、萤光灯や发光ダイオ—ドを束ねたLED电球が真昼のように照らし出している、。通路に面した契茶店や洋服店などはガラスをふんだんに利用していて、实际の而积以上の开放感を演出していた。
|上条《かみじよう》は周围を见回して、
「お—。そろそろ冷房も弱くなってきてんな—」
「あと二周间もしたら暖房に切り替わるでしょうよ」美琴はてくてくと前を步きながら、「あったあった。こっちよ」
彼女は细い指で店铺の一つを指差す。
ここは地下という特性を生かして、ゲ—ムセンタ—やカラオケボックス、ライブハウスなど|骚音《そうおん》问题の出てきそうな娱乐施设が多。い。なので|上条《かみじよう》は『超难解なゲ—ムをワンコインでクリアせよ。さもなくば|土下座《どげざ》』とかとんでもない要求が出てくるかと思っていたのだが……そういった上条の予测は大きく外れた。
携带电话のサ—ビス店である。
サイズとしてはコンビニの半分ぐらいしかなく、大きなガラスウィンドウ越しには横一线に并べられたカウンタ—と|椅子《いす》、後はマガジンラックに收まった|薄《うす》っぺらい机种カタログぐらいしかない。入口の前に置いてある宣传用の纵长ののぼりには大手メ—カ—の物と学园都市オリジナルの物が分けてあった。
学园都市は、外に比べると科学技术が二、三○年进んでいるとされている。外と中、互いの机种も一长一短ではあるのだが、|紧急时《きんきゆうじ》にはどちらのサ—ビスが先に复归するか分からなかったりするので、何を选ぶかで一周间以上恼みまくる学生もいるそうだ。
|美琴《みこと》はサ—ビス店へと足を向けながら、
「アンタ、『ハンディアンテナサ—ビス』って知ってる?」
「ん?あれだっけ。个人个人の携带电话がアンテナ基地代わりになるってサ—ビスだよな。近くにアンテナ基地がなくても通话できるようになるとかってヤツ」
ようは、街中で携带电话を持ち步いている人全员が中继アンテナになるのだ。例えば上条の近くにアンテナ基地がなくても、人物一、人物二、人物三……と中继アンテナを|系《つな》いでいき、最终的に人物Xの近くに本来の设概型アンテナ基地があればそのまま通话ができる。实际には复数の人问を传い、|网《あみ》の目のように通信ル—トを构筑するので、そうそう简单に断线する事もないそうだ。元々は|震灾下《しんさいか》で地上の通信基地が全灭した际、数の少ない飞行船に设骂型アンテナを付けて飞ばし、临峙の空中通信|网《ざりつ》を整备するために开发されたものらしい。そのため、音质などにあまり气を配っていない节もあるのだそうだ。
プラスの话题としては、大学侧がテスト运用として补助金を出すため、サ—ビス料金がメチャクチャ安くなるとかいう话も出ている。
「私さ、あれに登录してみようかと思ってんのよ」
「え—。でもあの激マイナ—な制度って、利用者みんなが携带电话の电源を常にオンにして持ち步いてないと中继アンテナ效果は期待できないんだよな。そのせいでバッテリ—の减りがメチャクチャ早いんじゃなかったっけ?それ以前にサ—ビス加入人数が少ないと何の意味もないって话じゃ……」
「だからそのサ—ビスを普及するためにも加入するっつってんでしょうが。ペア契约にしちやえば『ハンディアンテナ』だけじゃなくて、その他の通话料金も随分安くなるみたいだしね」
「ペア契约って……あれだよな。确かあらかじめ登录しておいた二人の间だけ、通话料とかパケット代がかからないとかっていうヤツ?」
「そうそう。で、さらに今『ハンディアンテナサ—ビス』とペア契约をセットで受けるとラヴリ—ミトンのゲコ太ストラップがもらえるのね。カエルのマスコット」
「……、オイ」
「即ゲット。だから|一绪《いつしよ》に契约しなさい」
「ようはストラップ目当てかよ!?机种变するとかって言うなら绝对にアウトだぞ!こっちはボロボロケ—タイをあと半年は使い续けるつもりでいるんだ!!」
そして|上条《かみじよう》はブレザ—姿の|美琴《みこと》が持っている学生|?《かばん》を指差す。そこにぶら下がった绿色のカエルのマスコットを|睨《にら》みつつ、
「大体カエルならもう持ってんだろ!」
「ゲコ太とこの子を一绪にすんなッ!!」ぎゃ—っ!!と美琴は叫び、「ゲコ太はこの子の|邻《となり》に住んでるおじさんで乘り物に弱くてゲコゲコしちゃうからゲコ太って呼ばれてんのよ!こんな简单な违いが分からないほどアンタおっさんだった译!?」
「……そのゲコ太おじさんのキャラ付けは本当にラヴリ—なのか?」
上条はげっそりした口调で|?《つぶや》いたが、美琴は旬の话题についてこれない年辈者を|蔑《さげす》んだ目で见ているだけだ。どうも少し幻灭しているらしい。
「ふん。机种变の心配ならしなくても良いわ。『ハンディアンテナ』は元々本体を换えるんじゃなくて追加扩张チップを差し?むだけでオッケ—って话だし、ペア契约の方もあそこの会社のサ—ビスなら全部对应してるから、机种变が必要なんて事はないと思うわ。アンタのケ—タイは别にいじらなくても构わないはずだけど」
「何だ。ようはこっちの番号とアドレスを书类に书き?めば良いだけじゃんか」
「そりゃそうなんだけど」美琴は学生?についている小さなカエルを指先でムミムミ押しながら、「一绪にお店に行ったりいっぱい书类を书いたり何时间も待たされたりするからさ—、その边の|融通《ゆうずう》が|利《き》く人じゃないと协力してもらうのは难しいのよね。ま、半日はかからないだろうし、ちょっと我慢してもらうわよ」
ん—、と上条はお店ののぼり[#「のぼり」に傍点]を见ながら少し考え事をする。
男女のペアじゃないと|驮目《だめ》だからここまで呼ばれたのか、と思う一方、
「?どうしたのよ」
「いや登录に付き合うだけなら良いんだけどな。このペア契约ってさ、そもそも普通は恋人とかで交わすものなんじゃね—の?男女限定とか书いてあるし」
「……ッ!?」
ビクゥ!!と美琴の肩が大きく动いた。
彼女は?についているカエルマスコットをムミュ—ッ!!と握りつつ、
「い、いいいいや|马鹿《ばか》违うわよナニ口走ってんのアンタ!べっ、别に男女って书いてあるだけで恋人同士じゃなきゃいけないとかって决まりはないじゃないそうよ例えば夫妇だって问题ないでしょうが!!」
「もしもし。恋人よりも重たくなってますよ|御坂《みさか》さん」
冷静に突っ?んだつもりだったが直後に|雷击《らいげき》の|枪《やり》が飞んできた。|上条《かみじよう》は|美琴《みこと》の前发から飞んできた一击を慌てて右手で|弹《はじ》き飞ばす。
「さっきから何なんだお前!!」
「あ、アンタの方が译分かんないじゃない!ほら、良いからさっさと济ませるわよ!!」
「ええっ、本当に行くのかよ!?」
「良いから、|罚《ばつ》ゲ—ムだっつってんだから文句を言わずについて来なさいッ!!」
美琴は上条の腕を|掴《つか》んでズルズルとサ—ビス店の中に入る。
地下街通路に比べると、店内はもう少し冷房が|丁宁《ていねい》だった。意味不明な表现だなと上条は思うが、何というか送风ル—トなどを十分に计算してあるため、肌寒さは感じないのに汗は引いていくという绝妙な加减なのだ。
カウンタ—の前に座っていた店员のお姊さんは、引きずられる上条と引きずってきた美琴の形相にやや笑みが崩れかけていたが、それでも对应マニュアルは忘れなかった。
この马鹿とペア契约を登录したい、ゲコ太のストラップはまだ余っているかなどのやり取りを行った後に、店员さんはたくさんの书类をカウンタ—の上に|?《そろ》えつつこう言った。
「书类の作成にあたって写真が必要なんですが、お持ちでしようか」
ん?と美琴は目を丸くして、さらに寻ねる。
「そこらの证明写真用のボックスで|大丈夫《だいじようぶ》ですか?あと、写真の枚数とかサイズの指定とかってあるんですか」
「いえいえ。そんなにお坚いものではなくてですね」店员さんはニコニコ笑って、「これはペア契约でして、登录に当たって『このお二方はペアである』事を证明して欲しいだけなんです。なので、お二人がツ—ショットで写っているものであれば、携带电话のカメラでも大丈夫です。今ならペアの写真立て型の|充电器《クレイドル》を用意するのでそちらにも使用させていただきます。四社共通の规格のものですので、形式番号は气にせずにご利用できますよ」
ぶっ!?と美琴は危うく喷き出しかけた。
「……つ、つ—しょっと?」
「あら。そういうのはあまりやられませんか?なら、この机会にぜひいかがでしよう。登录完了の二○分前に写真をお渡ししていただければ结构ですので、待ち时间などを利用して撮影していただけると助かります」
そんなこんなでいっぱいある书类にボ—ルペンを走らせると、上条と美琴は一度サ—ビス店の外へ出た。问题の写真撮影である。
|上条《かみじよう》は|魔术师《まじゆつし》との战いで伤ついたりアドリア海に落ちたりした、割と顽丈な携带电话を取り出すと、
「证明写真のボックス探すの面倒だし、携带のカメラでさっさと济ますか。|御坂《みさか》、お前って|他《ほか》にデジカメとか持ってないよな」
「え?ええ、まぁ、私の携带电话はカウンタ—に预けちゃったし」
どこか上の空な感じの|美琴《みこと》だったが、上条は气づかない。画面を见ながら亲指でボタンを操作してカメラのモ—ドに切り替えると、腕を伸ばしてできるだけ远くに携带电话を押しやる。
彼は画面を见ながら、
「じゃあ撮るぞ—……って」
「な、何よ?」
うろたえた声を出す美琴に、上条は嫌そうな颜をした。
いつの间にか、美琴が|若干《じやつかん》远くにいる。さっさとパノラマモ—ドにでもして写したら?私つまらないんだけど、とでも言いたげな感じである。
美琴の逃げ腰な样子に、上条は肩を落として、
「……一应确认するけどさ、これってお前から言い出した事だよな」
「わっ、分かってるわよ!!」
实は美琴の颜はちょっと赤くなって学生|?《かばん》を握る两手がそわそわと动いていたのだが、上条にはあんまり好意的に映らなかったようだ。
美琴は上条に近づくか|离《はな》れるかを|逡巡《しゆんじゆん》した後、やがてヤケクソ气味に、
「~~ッ!待ってなさいよゲコ太!!」
ぐいっと上条の肩にぶつかるように、彼女は一息で急接近した。肩と肩を|擦《こす》り、美琴は首をわずかに|倾《かし》げて、上条の肩に头を置いた。携带电话の。画面の中にキチンと二人の颜が收まる。
一方、何もそこまで近づかなくても良いのでは、と患い始めた上条は、こちらもこちらで美琴の发の|?《にお》いなどに少し体を|强张《こわば》らせつつ、
「と、撮るぞ—」
「オッケ—、いつでもきやがれ!!」
ばち—ん、とわざとらしい电子音と共にシャッタ—が切られる。
上条は远ざけていた携带电话を近くへ戾し、今撮った写真を表示してみた。
……。
「颜が引きつってんぞ御坂」
「何でアンタは私から远ざかるように目を|逸《そ》らしてんのよ」
上条と美琴は颜を见合わせて、
「これはペアではないと思う」
「も、もう一回撮ってみましょうか」
ばち—ん、という电子音が再び鸣る。
|上条《かみじよう》と|美琴《みこと》は山面を|?《のぞ》き?んで、
「だから何で表情が固まってんだよ|御坂《みさか》!!」
「アンタはどうして重心を私から远ざける译!?」
ふ—っ!!と上条と美琴はおでことおでこがぶつかるぐらいの|距离《きより》で|睨《にら》み合っていたが、このままではいつまで|经《た》っても终わらない、最恶、『申し译ありません。写真がないと登录はキヤンセルされちゃうんですよ—』とかいう展开になったら今までの时间と劳力が|全《すべ》て|无驮《むだ》になる。上条|达《たち》も困るが店员さんだっていい迷惑だろう。
なので、上条はややヤケクソになって、
「とにかくツ—ショットってな恋人っぽい感じで撮りゃ良いんだろ!御坂こっち来い!こうしてやる—っ!!」
「え、なに?きゃあ!!」
ガシイッ!!と细い肩に腕を回された美琴の颜が急激に真っ赤に染まっていく。
自暴自弃ハイな上条はそういう变化に气づかずに、
「笑え御坂!これ以上いちいち撮り直すのは面倒だ!ようは书类を作れりゃ何でも良いんだろ!割り切っちまえば问题ねえよこんなの!!」
「え?ま、まぁ、そうよね。あはは!别にそれっぽく写真を撮るだけじゃない。そうよね
<img src="img/禁书目录12_099.jpg">
そうそう写真を撮るだけ!ようし行っくわよ—っ!!」
割り切る、という言叶をちょっと气にしつつ、|美琴《みこと》はヤケクソというより颜の赤さを悟られるのが嫌で无理矢理に气分をハイに变えている。美琴の肩に腕を回す|上条《かみじよう》に合わせるように、自分の腕を上条の腰に回して|距离《きより》を缩めていく。二人……というより美琴と|他《ほか》一名を眺める通行人が、『おおっ』と少し|羡《うらや》ましそうな目で见ているがハイになっている彼女|达《たち》には见えていない。
上条は手の中の携带电话を远ざけて、
「撮るぞ—っ!」
「イエス!!」
ばち—ん、という白々しい电子音が鸣る前に、
|空间移动《テレポ—ト》で急速接近した|白井黑子《しらいくろこ》が|上条当麻《とうま》の後头部にドロップキックを|食《く》らわせた。
ゴキイ!!という|轰音《ごうおん》と共に上条の手から携带电话が|离《はな》れ、彼の体が前方へ吹き飞び、宙に浮いている携带电话が一足迟れてシャッタ—を切る。
床に转がる携带电话の画面に映っているのは、ツ—ショットのつもりが高速でブレる上条の头とびっくりした美琴と白井のパンツという极限のスリ—ショットになっていた。
ごろんごろんと转がった上条は、床に突っ伏したまま、
「い、一体何が!?」
「ひ、人がちよっと目を离した|隙《すき》にナニをやっているんですの—……?」
ドロップキック状态から着地して、平べったい声を出しているツインテ—ルの少女、白井黑子はちょうど美琴の|邻《となり》を阵取っていた。ここがわたくしの居场所である、と言外に语っている感じだった。
「こっちが半日授业の後も|风纪委员《ジヤツジメント》として|初春《ういはる》から杂用を押し付けられて、それをようやく终えてお姊样の元へ行ったら初春のバイオリンアタックが待っていて、その後も迫加の仕事を押し付けられて色々顽张ってここまでやってきたっていうのに。……ったく、|新参者《しんざんもの》の|奴隶《どれい》と思って甘く见ていたのが间违いでしたの。それにしても、さっきからお姊样はあちこちで|大盘《おおばん》|振《ぶ》る|舞《ま》いなさって……」
「ばっ、勘违いしてんじゃないわよ黑子!」美琴はわたわたと手を动かし、「私だって好きでやってんじゃないんだってば!ただ私はゲコ太ストラップが欲しいからペア契约を|赖《たの》んで、そこで必要って言われた写真を撮ってただけなのよ!!」
その弁解は白井に对するというより自分に言い闻かせているようにも受け取れる、どっちみち上条は|蹴《け》られ损の赖まれ损なのだった、
まぁ、|罚《ばつ》ゲ—ムなんてこんなものだ。
|白井《しらい》は白井で、|美琴《みこと》の告げた一言にショックを隐しきれない样子で、
「だっ!だったらこんな殿方に头を下げずとも、わたくしとお姊样が二人でペアになれば何の问题もありませんの!さぁ撮りますわよバシバシいきますわよここらで一生の思い出作っちゃいますわよ—っ!!」
|一瞬《いつしゆん》で|沸腾《ふつとう》するほどのハイに|陷《おちい》った自井に美琴はちょっと引きつった表情になったが、床に伏した|上条《かみじよう》はふと颜を上げて、
「え?それでオッケ—なら|俺《おれ》はもう归っちゃって良い?」
「男女のペアじゃなきゃ|驮目《だめ》だっつってんでしょ!!」
素の疑问に对して、美琴は精一杯の|雷击《らいげき》の|枪《やり》を|叩《たた》きつけた。
5
|一方通行《アクセラレ—タ》は寝转がっていたソファの上でうっすらと目を开けた。
小さく舌打ちする。
「……寝ちまったか」
时计を见ると、ほんの一五分ぐらいのものだ。
テレビが|点《つ》けっ放しになっていたため、おそらくそちらからの音で目が觉めたのだろう。ここ最近、眠りが浅いというかふとした刺激で简单に起きる|癖《くせ》がついた气がする。
|谁《だれ》もいない广いリビングで、|一方通行《アクセラレ—タ》はわずかに首を横に振った。
(气が拔け过ぎだ、クソ|马鹿《ばか》)
头の中に|渗《にじ》むのは、|忌《いまいま》々しげな自分の声だ。
元々、|一方通行《アクセラレ—タ》は自分のペ—スで睡眠を取る人间だ。耳元で目觉まし时计が鸣ろうが、クソガキが|唤《わめ》き散らそうが、腹の上で爆弹が爆发しようが、大变|健《すこ》やかに眠り续けるぐらいである。
それは彼の能力が『あらゆるベクトルを变更する』ものだからで、通常は酸索や重力など必要最低限のものを除く|全《すべ》てを『反射』させているからだ。
この状态の|一方通行《アクセラレ—タ》は、たとえ核爆弹の直击を受けても伤一つつかない。
だからこそ『极めて敌が多い』|一方通行《アクセラレ—タ》は、最も无防备と言える睡眠状态に入る事にこれまで|踌躇《ちゆうちよ》はしなかった、
しかしそれも、彼の能力が。力全だった时の话だ。
|一方通行《アクセラレ—タ》は首筋に手を当てる。
そこにあるのは黑っぽいチョ—カ—……に见えるが、内侧には电极が取り付けられている。世界中に散らばっている一万人弱もの|妹达《シスタ—ズ》の脑とリンクして、|莫大《ばくだい》な并列演算机能を彼に贷し与えるデバイスだ。
|一方通行《アクセラレ—タ》の脑は八月三一日に伤つけられている。
この演算补助デバイスがあって、彼は能力者として初めて人并みに生活できる。通常モ—ド───步行、会话、数を数える事などなら四八时间程度。|保《らり》つ。しかし、能力使用モ—ド───ベクトル制御能力をフルで发动させると、|膨大《ぽうだい》な计算量を|瞬时《しゆんじ》にこなす必要があるため一五分程度でバッテリ—が切れてしまう、かなり制限のきついアイテムだ。
つまり、今の彼の安全时间は、实质的に一五分间しかない。
その一五分间を除くと、四八时间に一度充电しなければまともに步く事もできない弱者なのだ。
そんな状态なので、能力というシェルタ—の中で|惰眠《だみん》を|贫《むさぼ》る|赘泽《ぜいたく》などもうできないのだ。
「……、」
─|一方通行《アクセラレ—タ》は|胡乱《うろん》な|瞳《ひとみ》で、|薄型《うすがた》の巨大テレビに目をやった。
|马鹿《ばか》高い契约料を夸るケ—ブルチャンネルでは、午後一番のト—ク番组が流れていた。テレビの下に置かれたデッキが录画モ—ドになっている所を见ると、家主の|黄泉川《よみかわ》は今回のゲストで出演している芸能人のファンなのかもしれない。
『という译で|一一一《ひとついはじめ》さんはこのたび主演として映画の方にも参加されましたが、いかがですか。
|向《かいが》こうの|作《い》品で口本人が主演という事自体もかなり珍しいと思うのですが、その边りには特别な心境などは?』
小さいテ—ブルを挟んで司会者とゲストが向き合っている。
|一方通行《アクセラレ—タ》は画面を眺めながら、チョ—カ—型电极の横についているスイッチを、
切る[#「切る」に傍点]。
『まぁ[#「まぁ」に傍点]。プロットの横の最も特有の指示が日本人として适切に作用しています[#「プロットの横の最も特有の指示が日本人として适切に作用しています」に傍点]。彼はEVENを持っていませんか[#「彼はEVENを持っていませんか」に傍点]、そして他の人达が今日日本人として非常に适切に理解しましたか[#「そして他の人达が今日日本人として非常に适切に理解しましたか」に傍点]?』
言叶がグチャグチャになった[#「言叶がグチャグチャになった」に傍点]。
实际にはゲストが『そうですね。监督からの一番持徵的な指示は日本人らしく振る舞ってくれというものです。日本人らしくなんて|今日《きよう》び仆|达《たち》だって分からないじゃないですか』と言っているのだが、|一方通行《アクセラレ—タ》の头は耳に入った会话内容を处理できなくなっている。
彼の体のバランスが、ふらりと崩れる。
倒れる、と感じる间もなくソファに体が沈んだ。录画デッキにあるデジタルの数字を见ても何を指しているのか判断できない。头の齿车が拔け落ちていた。まるで一○○时间ぐらい不眠不休を续けさせられた後に国家试验の问题を眺めているような感じだ。
(っつ……)
|一方通行《アクセラレ—タ》は首筋に手をやる。
やたらと全身がふらふら摇れ、小さなスイッチを切り替える事すら何秒もかかってしまう。何度もガチガチと失败し、ようやく亲指の腹がスイッチの突起に触れる。
カチン、という小さな音。
通常モ—ドに切り替わり、|一方通行《アクセラレ—タ》はようやく一般の世界へ戾ってくる。
『言叶自体はネイティブな米国语を使わなくてはならないので、その他の仕草や作法、态度だけで「これが日本人だ」と示せと言われて、今回は改めて考えさせられましたよ』
横倒しになった视界の中、芸能人が白々しい自慢话を续けている。
かつては学园都市最强の能力者と言われても、今となってはこのザマだ。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》を始めとする|妹达《シスタ—ズ》の代理演算を借りなければ能力の使用どころか、普通の会话や步行、数を数える事すらできなくなる。その代理演算には首のチョ—カ—型电极が必须で、バッテリ—は最大で四八峙间ほど使用可能だ。
さらに电力が底を尽きたり、地下深くへ行ったり妨辔电波を撒き散らされたりすると代理演算の利用もできなくなる。
通常モ—ドだけでこれだ。
これが能力使用モ—ドになると|莫大《ばくだい》な情报を处理する必要があるため、制限时间が一气に一五分弱にまで引き下がる。|医疗《いりよう》机器としての使用が大前提のため、超能力战という军事レベルの使用环境に耐えられるように作られていないのだ。バッテリ—もカエル颜の医者が作った特殊なものであり、替えは|利《き》かないし市贩の电池などでも代用できない。大量のバッテリ—を用意して制限时间ごとに交换していく……という方法も取れない。
つまり、|正真正铭《しようしんしようめい》一五分がタイムリミットなのだ。
ただ、このモ—ドになると|杖《つえ》をつく必要もなくなるのだが。
(こんなクソル—ルをいちいち一つずつ觉えていくのも画倒臭せェ。ったくシンデレラじゃあるまいし、时间制限つきの最强なンざ笑い话にもならねェぞ)
「……、」
シャワ—でも浴びるか、と|一方通行《アクセラレ—タ》はソファから立ち上がる。
气分を变えたい。
万年ノ—ガ—ドの|打ち止め《ラストオ—ダ—》は当然として、|黄泉川《よみかわ》や|芳川《よしかわ》も甘すぎだと|一方通行《アクセラレ—タ》は思う。どいつもこいつも学园都市最强の能力者というものを信用しすぎている。そういった|想《おも》いに必ず|应《こた》えられるなど|谁《だれ》が言った。黄泉川や芳川はその恐ろしさの方が理解できていない、|一方通行《アクセラレ—タ》は何かを|破坏《はかい》する事に手惯れていても、何かを守る事には全く惯れていない。、防御のために振るった|一击《いちげき》が、周围の|全《すべ》てを卷き?む大惨事へと发展する危险性だって十分に考えられる。
(そォいや、部屋には谁もいねェが。あの|马鹿《ばか》どもは买い物か?)
|一方通行《アクセラレ—タ》は适当に考えながら脱衣所へ|系《つな》がるドアを开ける。
そこに。
バスタオルで茶色い发をグシャグシャと|拭《ふ》かれている**の|打ち止め《ラストオ—ダ—》と、
左右からグチャグチャに拭いている裸の|黄泉川《よみかわ》と|芳川《よしかわ》がいた。
ビクゥ!!と一番初めに反应したのは|打ち止め《ラストオ—ダ—》だ。
「どっ、どうして前触れもなく突发的に出现してるのあなたは—っ!ってミサカはミサカはバスタオルに手を伸ばすけど届いてくれなかったり!!」
ぎや—ぎゃ—|骚《さわ》ぐ|打ち止め《ラストオ—ダ—》を无视して、|一方通行《アクセラレ—タ》はキョトンとしている黄泉川や芳川へ目を向ける。
「……何でカギかけねンだよオマエら」
「あ—恶い恶い。今まで一人暮らしだったからその机能をすっかり忘れてたじゃんよ。めんごめんご—」
「|爱穗《あいほ》。とりあえずで良いから体に卷いておきなさい」
先にタオルで身体を隐していた芳川がため息混じりでバスタオルを渡して、黄泉川が面倒臭そうにそれを体に卷いていく。隐れるには隐れているが、|太股《ふともも》はミニスカ—トどころの|露出度《ろしゆつど》ではないし、水分を|拭《ぬぐ》っていなかったせいか体のラインもやたらくっきりと浮かび上がっていた。
(……どォなってンだこりゃ)
こんなのは|一方通行《アクセラレ—タ》の生活パタ—ンではない。というか、ドアを开けるたびに女の着替えだの何だのに遭遇するような人间がいたら腹を抱えて笑っているだろう。
と、自分の分のタオルが足りない事に气づいた|打ち止め《ラストオ—ダ—》は慌てて芳川の体の阴に隐れつつ、ちょっと泪日で、
「……二人とも骚ぎもしないで|亿劫《おつくう》そうにバスタオルの受け渡しをしているだけなのはどうして?って、ミサカはミサカは素朴な疑问を投げかけてみる」
あん?と黄泉川は|怪诗《けげん》な目を|打ち止め《ラストオ—ダ—》へ向けて、
「理由とか闻かれてもなあ……あの子は子供で、私|达《たち》は大人だからじゃんよ」
「そこを全く气にしないのはオトナというよりオバハンっぽいかも、ってミサカはミサ痛たたたたたッ!!いきなり二人してミサカの头をグリグリしないで!ってミサカはミサカは|毅然《きぜん》な态度で抗议してみたり!!」
芳川は|打ち止め《ラストオ—ダ—》を头上から|攻击《こうげき》しつつ、
「オバハンじゃなくて、オトナだからよ?」
「そうやって子供相手にすぐムキになる所のどこが大人なんだとミサカは痛ぁぁい—っ!!そこのあなたヘルプそしてバスタオルもちょうだい!ってミサカはミサカは上目遣いで保护欲を|煽《あお》ってみる!!」
小さなクソガキが何か|唤《わめ》いていたが|一方通行《アクセラレ—タ》は无视して脱衣所のドアを闭めた。
ため息を一つ。
「……だからちっとは警戒しろっつってンだろォが」
6
「という事があったの、ってミサカはミサカは事後报告してみたり」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》がいるのは、|黄泉川《よみかわ》のマンションを出たすぐそこの通りだ。彼女は空色のキャミソ—ルの上から男物のワイシャツに腕を通して羽织っている。
そんな小さな少女が话しかけているのは、|打ち止め《ラストオ—ダ—》をそのまま大きくしたような少女、|检体番号《シリアルナンバ—》一○○三二号、|御坂《みさか》妹だ。
御坂妹は|常盘台《ときわだい》中学の冬服である、ベ—ジュ系のブレザ—と绀系チェック柄のプリ—ツスカ—トを|穿《は》いている。彼女|达《たち》のオリジナルである御坂|美琴《みこと》と同じ格好をしているのは『实验』の都合上の问题だったのだが、それが终わった後も风习だけは残っている状态だ。
オリジナルと异なる点は、御坂妹のおでこに引っかかっている大型の电子ゴ—グルだ。暗视装置のようなフォルムだが、こちらは肉眼では见えない磁力线や电子线などの情报を视觉化するためのものである。
御坂妹は、感情の读めない|瞳《ひとみ》で|打ち止め《ラストオ—ダ—》をじ—っと眺める。
「その报告ならばすでにネットワ—クを介して全ミサカへ配信されているためわざわざ口头で言い直す必要もないのでは?とミサカは当然の疑问に对して确认作业を行います」
「たまには通常五感を介したコミュニケ—ションを取って时计の误差みたいなのを补正する必要があるの!ってミサカはミサカはもっともらしい理屈をつけてみたり!」
「|上位个体《あなた》が语るのなら纳得しましょう、とミサカは|呆《あき》れ颜で上司の|愚痴《ぐち》を闻き流します。ミサカのリハビリの役にも立つかもしれませんし、とミサカは无理矢理に自分を纳得させる材料を探してみます」
本人は呆れ颜と言っているが实质的に颜の表情は全く动いていない。|打ち止め《ラストオ—ダ—》はバタバタと手足を振っているが、そのペ—スに吞まれる事もない。
御坂妹は极めてマイペ—スに目の前のマンションを见上げて、
「しかしこの边りをフラフラ步いていたらオ—トロックの|缔《し》め出しを食らって|呆然《ぼうぜん》と立っていたなどとは间拔けな状况ですね、とミサカはこれまでの状况を语ってみます、ミサカが偶然この通りを散步していなかったらあなたはずっと一人ぼっちだったのでしょうか、とミサカは上位个体の个人的スペックに疑问を抱きつつ腹の内でこっそり笑ってみせます」
「恶いのはミサカじゃなくてあの|融通《ゆうずう》の|利《き》かないオ—トロックなんだもん!ってミサカはミサカは|愤慨《ふんがい》してみる!电子|锭《じよう》のくせにミサカの力が效かなくてピ—ピ—|音《おと》が鸣るから|辔陶《うつとう》しい!ってミサカはミサカは两手をバタバタ振ってストレスを发散してみたり!!」
「|发电系能力者《エレクトロマスタ—》の力を受けてもびくともしないというのは|褒《ほ》めるべき事柄ではないでしようか、とミサカは客观的评价を下してみます」
うう—、と|打ち止め《ラストオ—ダ—》は食い下がる犬っぽい|叫《うめ》き声を出す。
しかしこの小さな上位个体は、世の中に对する经验が浅いからか、割と简单にコロコロ兴味が变わっていくらしく、
「ところで前から气になってたんだけど、ってミサカはミサカはあなたのおでこを指差してみる」
「?ミサカのおでこは一般的なサイズでありミサカはおでこキャラではありませんが、とミサカは自分の额に手を当てて确かめてみます」
「そうじゃなくてね、そのゴ—グル、ってミサカはミサカは再指摘してみたり」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》が注目しているのは、|御坂《みさか》妹が装备している电子ゴ—グルだった。
小さな少女は|怪诽《けげん》な颜で、
「あのね、|他《ほか》のミサカはみんなそれを持ってるのに、ミサカだけはそのゴ—グルを持ってないの、ってミサカはミサカは|羡望《せんぼう》の|眼差《まなざ》しを送ってみたり」
おや、と御坂妹は改めて自分のおでこに引っかかったゴ—グルを指先で触り、それから自分を见上げてくる|打ち止め《ラストオ—ダ—》の颜を见て、彼女のおでこにはゴ—グルが存在しない事を确认すると、「あのミサカはあのミサカ、このミサカはこのミサカです、とミサカは暗に|谛《あきら》めうと告げてみます」
「そんな『他の家と我が家は胜手が违うのよ』的な|台词《せりふ》では纳得がいかない!ってミサカはミサカは即座に抗议してみる1大体その理论だとミサカだけがよその家の子になってるし、ってミサカはミサカはさらに重大な问题を取り上げてみたり!!」
ミサカだらけの会话の中、ぶ—ぶ—っ!と|唤《わめ》きながら|打ち止め《ラストオ—ダ—》は御坂妹のスカ—トを|掴《つか》むと、それをバッサバッサと激しくめくって|扇《あお》ぎながら、
「欲—し—い—ミサカもそれが欲しいの—っ!ってミサカはミサカは小さな外见を最大限に利用した|驮《だだ》々っ|子《こ》交涉术を行使してみたり!!」
「|可爱《かわい》らしい仕草を|狙《ねら》っているのでしょうが同性がそれを见ても腹が立つだけなので逆效果です、とミサカは|恳切丁宁《こんせつていねい》に解说してみます」
それ以前にさっきから御坂妹のスカ—トが全开となって今日の气分で|穿《は》いてみた两サイドをリボンで|缚《しば》って留める方式の下着が金部见えてしまっているのだが、そちらの方は全く气に留めていないようだった。
变わらぬ表情に|打ち止め《ラストオ—ダ—》はムムッと|捻《うな》ってから、
「ねえ一○○三二号、ちょっとお|辞仪《じぎ》してみて、ってミサカはミサカはお愿いしてみたり」
「?」
御坂妹は怪诽に思いながらも、とりあえず上位个体の指示に从ってみたが、
「ハハハ|隙《すき》あり—っ!ってミサカはミサカは强夺作战に成功してみたり!!」
下げた头から势い良くゴ—グルが夺われた。
|御坂《みさか》妹が何か言う前に、|打ち止め《ラストオ—ダ—》はやたらハイになった笑颜のまま背を向けて、
「こんな初步的な手に引っかかるとは个休全体のル—チンをチェックし直す必要があるかも、ってミサカはミサカは舍て|台词《ぜりふ》を吐いてみたり!や—い、悔しかったら取り返してみろ—、ってミサカはミサカは猛ダッシュしつつ胜利の|余韵《よいん》に浸ってみる!!」
ドダダダダ—ッ!!と。
外见に似合わずパワフルな走りでどこかへ消えてしまった。
「……、」
御坂妹はしばらく|呆然《ぼうぜん》と|打ち止め《ラストオ—ダ—》の消えた方角を眺めていたが、
「上位个体からの|直接《ストレ—ト》オ—ダ—となれば仕方がありません、とミサカは大变不本意ではありますが学生|?《かばん》の中からサブマシンガンとゴム弹を取り出しつつ状况を确认します」
ジャギッ!!と|不稳《ふおん》な金属音が平稳な街中に|响《ひび》き渡り、
「演习[#「演习」に傍点]とはいえ相手は上位个体、下位个体であるミサカが本气で挑んだとしても大人げない行动ではありません、とミサカは当然の见解を述べてみます。これは决してミサカがキレているのではなく、论理に基づく适正な判断を行っているに过ぎないのです、とミサカは实铳片手に全力疾走しながら己の思考能力の冷静沈着ぶりを自画自赞してみます」
<img src="img/禁书目录12_115.jpg">
无表情っぽくはあるが良く见ると目元がピクピクと|震《ふる》えている|御坂《みさか》妹は追迹を开始。
一方、その心の动きも正确に|掴《つか》んでいる|打ち止め《ラストオ—ダ—》は|打ち止め《ラストオ—ダ—》で、|妹达《シスタ—ズ》の脑波と微弱な电磁波が形作るミサカネットワ—ク内で挑发の言叶を吐きながら路地里を走り回っていた。
『ハッハ—ッ!ただのミサカがこのミサカに胜てる译がないだろ—、ってミサカはミサカは平民どもに胜利の高笑いをしてみたり!』
『革命の时は来ました、とミサカ一○○三二号はここに宣言します』
[#改ペ—ジ]
行间ニ
ロンドンのランベス区には『|必要恶の教会《ネセサリウス》』の女子|寮《りよう》のようなものがある。
见た目で言うなら通りに面した石造りの良くあるアパ—トメントとそれほど差异はない。木造と违って石造の建筑物は见た目で年代を测るのが难しく、この建物に一世纪单位の历史があると言われても想像はつかないだろう、それほど|绮丽《きれい》に|磨《みが》かれて、|丁宁《ていねい》に使われている施设だ。|最大主教《ア—クビシヨツプ》の邸宅であるランベス宫のような|要塞化《ようさいか》は进んでおらず、逆に『いつ|坏《こわ》されてもスペアの|利《き》く』建物として用意されたものだが、今日まで|全坏《ぜんかい》した记录はない。こちらの|素性《すじよう》を|掴《つか》んだ敌对する|魔术《まじゆつ》结社などから|攻击《こうげき》を受けてもおかしくなさそうなのだが……实はここを|狙《ねら》う危险分子は|全《すぺ》て计画が实行に移される前に|葬《ほうむ》られてきただけだ。それが『|必要恶の教会《ネセサリウス》』の战绩を暗に示していた。つまり分かりやすいエサなのである。
さて。
日本では昼下がりだが、ロンドンは深夜の|帐《とばり》が下りている。
英国の首都とは言ってもメインストリ—トから|离《はな》れたこの区画もまた夜の摇りかごに包まれていたのだが、夜更かしを象徵するように一つの窗に明かりが|点《つ》いていた。
换衣所である。
大型の浴场に面したものであるので结构な广さがある。その片隅に、勉强机が收まるほど巨大な段ボ—ルの空き箱が置いてあった。床には取り?い说明书や保证书などが并べられている。
何の说明书かと言われると、それは|洗濯机《せんたくき》だ。
学园都市制とも书かれている。
古びた寮にはあまりにも不钓り合いな电子机器だ。
「|最大主教《ア—クビシヨツプ》は……何でこんな复杂で面倒臭い物をいただいてくるのでしょうか」
难しい颜でア—ス线を接续しているのは|神裂火织《かんざきかおり》だ。
ポニ—テ—ルにしても腰まで屈くほどの长く黑い发の女性で、|普段《ふだん》は|半袖《はんそで》のTシャツをおへそが见えるようにサイドで绞ったり|太股《ふともも》の所で切ったジ—ンズを|穿《は》いたりとアクティブな格好を好んでいるのだが、今は质素な|浴衣《ゆかた》を身にまとっている。ただ、|马鹿《ばか》长い日本刀だけはすぐ近くの壁に立てかけてあった。
一应これまでは、いつ烟が出るかも分からないほどハ—ドに振动する洗濯机を使っていたのだが、この前それがついに坏れてしまったのだった。|最大主教《ア—クビシヨツプ》はあれでも部下の陈情を受け付けてくれる人物らしい。
後续となる洗濯机が届いたのは夕方ぐらいで、それは最新锐のAI搭载型全自动洗濯机だったのだが、机械にあんまり缘のない|神裂达《かんざきたち》にとっては|谜《なぞ》の超文明との遭遇に近い。首をひねりながら说明书に目を通してあれこれやっている内に、气がつけば夜も更けていた。
ちなみに神裂がこんなにも作业に没头していたのには、今日の昼间に日本の|土御门《つちみかど》から送られてきた段ボ—ル箱の中に入っていたメイド服+α(天使の轮っかとか羽とかの|堕天使《だてんし》セット)を发见してしまい、それを何とか忘れてしまいたかったからだ。
「ロ—ラ样のお话では『このさいしんえいナントカどらむ[#「さいしんえいナントカどらむ」に傍点]があれば|烦《わずら》わしき水仕事などへっちゃらにつきなのよ!』との事でございましたけど」
そう言ってニコニコ|微笑《ほほえ》んでいるのはオルソラ=アクィナス。つい先日までロ—マ正教に所属していたシスタ—で、真っ黑な修道服で发の毛から足の先まで|全《すべ》て|覆《おお》っている女性だ。スタイルは神裂と同等だが、引き|缔《し》まった感のある神裂に对してオルソラはどこか丸みが强调されているようにも见える、
同样の元ロ—マ正教派として、小生意气なアニェ—ゼ=サンクティスや规律に严しいルチア、甘い物と寝起きに弱いアンジエレネらもいる。
彼女达は单纯にイギリス清教に改宗するつもりはないらしく、『どうせ二五○人もいるならロンドンにロ—マ正教の新しい分派を作っちまいましょう』とか言っている。これを|处刑《ロンドン》塔に|幽闭《ゆうへい》中のリドヴィア=ロレンツェッティなどが闻きつけたら大变な事になりそうだが、ロ—ラ=スチュア—トが割とのんびりしている所を见ると、どうも|天草式《あまくさしき》と同じく小宗派ごと|伞下《さんか》に收める方向で话はまとまりそうだ。
そんな彼女达五人の|他《ほか》には、|生粹《きつすい》のイギリス清教徒としてシェリ—=クロムウェルが换衣所にいた。|伤《いた》みに伤んだ金发に小麦色の肌を持つ彼女は|日顷《ひごろ》からゴスロリを|嗜《たしな》んでいるのだが、今は|薄手《うすで》の、ネグリジェをまとっていた。ただ二重に|寝间着《ねまき》を着?んでいるため、体のラインは透けているのに详细は见えないというちょっと|卑怯《ひきよう》な状况になっていた。レベルで言うと汤气で隐れている级である。
王立芸术院の管理者でもあるシェリ—はそんなやり取りをよそに、雕刻刀を使って手の中の小さな大理石をゴリゴリ削ってチェスの|驹《こま》の轮郭を整えている。细かい|粉尘《ふんじん》は彼女の肩の边りへと集中し、小さなボ—ルを作っていた。彼女の使うゴ—レム=エリスの应用らしい。
シェリ—は作りかけのチェスの驹に视线を落としたまま言う。
「|洗濯《せんたく》なん溶、川でやりゃ良いじゃねえかよ」
「私も洗濯板があれば问题ないと思いますが、|流石《さすが》に川では环境に问题が生じるでしょう」
ア—スの接续を终えた神裂は、ゴソゴソと洗濯机を|壁际《かべぎわ》に押し付けつつ答える。
シェリ—はゴ—レムのエリス任せ、神裂は世界で二○人といない圣人という豪腕の持ち主なので气にしないのだが、他の|面子《メンツ》はみんな颜がちょっと引きつっていた。
「この……|耐震《たいしん》补强具や落雷对策装置などの设定に手间取りましたが、ひとまずこれで电源を入れても|大丈夫《だいじようぶ》そうです」ピッ、と|神裂《かんざき》は大きなボタンを押したが、次に待っていたのは防水加工を|施《ほどこ》した小さな液晶画面に映る无数の数字や记号である。
神裂はしばし无表情でそれらを眺めた後、
「……素直に手で洗いませんか?」
「いっ、いいえ!もう少しだけ顽张ってみましょうよっ!!」
半分泪目で反论しているのはメンバ—の中でも特に非力なアンジェレネだ。
「あとちょっとなんです!ぜ、全自动|洗濯机《せんたくき》はすぐそこなんですからっ!これが届くまでの间、|暂定的《ざんていてき》に大量の衣类を别栋の洗濯机まで运んでいくだけでも两腕がパンパンになっていたんですよ!!てっ、手で洗おうとか言われても绝对无理ですっ!!」
アンジェレネの小さな手を见る限り、その制度では今度洗濯当番が回ってきた途端に死を迎える羽目になる。
と、オルソラが说明书に目を落として、
「神裂さん神裂さん。でも说明书を见る限り洗濯ボタンを押せば後は机械が胜手にやってくれるそうでございますよ」
「?」
「こちらの小さなボックスに洗剂を入れておくと、机械が成分分析して、洗濯量の重さに应じて自动で水や洗剂の量を调节してくれるとか书かれているのでございます。注水、すすぎ、排水、脱水から乾燥まで全部胜手にやってくれるみたいでございますけど」
「まったく面倒な仕组みです。洗剂などこちらで量るからもっと简单な操作にしてくれればよいものを」
だからボタンを一回押すだけなんだってば、とアニェ—ぜ、ルチア、アンジェレネの三人はほぼ同时に思ったが、一应こちらでは|新参者《しんざんもの》なので|默《だま》っておいた。
オルソラは新品の洗濯机をポンポンと|叩《たた》いて、
「そんなに便利な一品なら、动いている所を见てみたいのでございますよ」
「……オルソラ。もう深夜ですよ。洗濯机を动かすような时间带ですか?」
神裂は|呆《あき》れたように言うが、やはりオルソラは说明书を指差して、
「消音设计だから夜でもオッケ—って书いてあるのでございますよ」
「フォンとかデシベルとか书かれていますが本当に意味は分かっていますか?そもそも、それ以前に今日の洗濯物は|全《すべ》て保管库へ收纳济みでしょう」
ここは『|必要恶の教会《ネセサリウス》』のメンバ—が|集《つど》う女子|寮《りよう》。その服装の模样や|缝《ぬ》い目の一つにも|魔术《まじゆつ》的记号が盛り?まれている事もあり、そういった『武器にも防具にもなる衣服』を脱衣|笼《かご》にポンと置いておくと、衣服の防护机能が胜手にケンカを始めてしまう事もある。その边りについては术式の宗派や学派によって相性もあるのだが、洗濯の时にもそういった相性を|考虑《こうりよ》するのが基本となっていた。
相变わらずゴリゴリとチェスの|驹《こま》を削っているシェリ—が面倒臭そうな声で、
「确か保管库は三重の|魔术锭《まじゆつじよう》で守られてんだよな。今から解くのもかったるいし锭を挂け直すのはもっとやってられないわよ」
やった、とばかりに|神裂《かんざき》は颜を|辉《かがや》かせ、それから背筋を伸ばす。
「ほら、|洗濯物《せんたくもの》がないのですから洗濯机は使えません。明日も早いのでもうさっさと消灯して就寝するとしましょう」
「あら、洗濯物ならここにあるのでございますよ」
言うか早いか、オルソラはガバッと自分の着ていた修道服をあっさり脱ぎ始めてしまう。神裂はギョッとした颜で、
「わっ、わざわざ洗濯物を增やす必要はないでしょう!そういった行动は新入りの方々にも恶い|影响《えいきよう》を及ぼします。アニェ—ゼ|达《たち》も『そんな风习なのかな』的な颜でオルソラの言动に从わないでください!!」
「まぁまぁ、日本のユカタとはとても脱がしやすい构造をしているのでございますね。带の染め方もとても|绮丽《きれい》でございますし」
「人の话を闻いていない举げ句、胜手に带を|掴《つか》まないでください!!」
神裂が止めに入ろうとした时にはすでに腰に卷かれた|蓝染《あいぞめ》の带は解け、ストンと床に落ちていた。コ—トのボタンが全部外れるように浴衣の前が开放される。
<img src="img/禁书目录12_125.jpg">
おや、とオルソラは目を丸くして、
「|神裂《かんざき》さんは下着を|穿《は》かない派でございますか?」
「|浴衣《ゆかた》とはそういうものなのですっ!!」
圣人的爆发筋力の|笼《こも》った两手で体を隐したため、|流石《さすが》のオルソラでも浴衣本体を强夺する事はできなかった。
仕方がないので、オルソラは自分の衣类や『そういや|寝间着《ねまき》はどうすんですか……』『シスタ—·アニェ—ゼ。どうせあなたは眠たくなったら胜手に下着姿になってしまうでしょう』などと言い合っているアニェ—ゼやルチア|达《たち》の修道服、神裂の浴衣の带などを|洗濯机《せんたくき》の中ヘポイポイと投げ?み、透明なフタを闭めて大きな『洗濯ボタン』を押す。
宣传通り音もなく洗濯|槽《そう》の中に水が|溜《た》まっていくと、振动も感じさせない动きで中の洗濯物がクルクル回り始めた。どうも洗濯槽は从来のドラム式ではなく球状になっているらしく、三六○度全方向に回转している。何だか见ているだけですごそうな洗濯机だ。
「おおっ、本当に静かなのでございますよ!」
オルソラがジェットコ—スタ—を前にした子供のような声を上げた。アニェ—ゼやアンジェレネなども彼女の肩越しに洗濯机の|稼动《かどう》状况を观察している。大昔のカラ—テレビみたいな?いだ。みんな下着姿なのが极めて不气味だが。
「……これを见たいがためだけに私は带を夺われたのですか……」
神裂は一人でげっそりと|术《うつむ》いていたが、その时、ふとシェリ—が彼女に话しかけた。
「おい极东宗派」
「今は拔け|忍《にん》状态ですが、何でしよう?」
「说明书。お前ちゃんと读んだのか」
『?』と神裂は改めてシェリ—の颜を见る。二重ネグリジェを着た小麦色の女は|呆《あき》れたような颜で雕刻刀を动かし、その刃先で床に置かれた说明书を指し示して、
「色落ちするモノは个别设定して、普通の洗濯物とは分けてくださいって书いてあんだけどよ。アンタの染物のオビは|大丈夫《だいじようぶ》なのかしら?」
ぎゃああっ!!と神裂は绝叫して洗濯机に飞び挂かった。
ともすれば洗濯机に|正拳突《せいけんづ》きでも打ち?みかねない形相の圣人に、下着だらけの元ロ—マ正教シスタ—四人组が全力で取り押さえようとしたが、神裂|火织《かおり》は绝大な运动能力を行使し、彼女达の间をすり拔けて洗濯机の操作パネルにしがみつく。
「ちゅっ、中止!洗濯中止のボタンは!?」
慌ててあれこれ探す神裂だったが、元々それほど机械に强くない举げ句に混乱している事も手传って、すぐ近くにあるはずのボタンが一向に见つからない。
その间にも洗濯物はグルグル回る。
透明なフタの向こうに广がる洗濯槽を眺めたオルソラは、『まぁ!』と感叹の声を放ち、
「|神裂《かんざき》さんの带の污れがみるみる取れていくのでございますよ!!」
「それは单に脱色しているだけです!おのれ科学文明の|尖兵《せんぺい》め!!」
ついに耐えられなくなった神裂は、|洗濯机《せんたくき》が动いているにも|拘《かか》わらず半ば强制的に透明なブタをこじ凋けた。
しかしそこは最新锐の球状三六○度の大回转洗濯|槽《そう》。
|瞬《まばた》きする间もなく、神裂|火织《かおり》は远心力で速度を得た大量の水を浴びてびしょ|濡《ぬ》れの透け透けと化した。
「わ、わぁ。本当に|穿《は》いていないんですね……」
アンジェレネが不用意な一言を放った直後、|元女教皇《プリエステス》が珍しく|骂声《ばせい》と共に泣き崩れた。
[#改ペ—ジ]
<a name="chap4">第三章ミサカとミサカの妹とSister_and_Sisters.
1
|上条当麻《かみじようとうま》は地下街の待ち合わせ用小广场(禁烟)のベンチに腰挂け、卖店で买った二○○ミリリットルの小さなペットボトルの|鸟龙茶《ウ—ロンちや》を饮んでいた。
今は一人きりである。
ついさっきまでその边にいた|白井黑子《しらいくろこ》は|御坂美琴《みさかみこと》にどつき倒されると『わたくしはお姊样のためを思って行动したまでですのに、この优しさが|诸刃《もろは》の|剑《つるぎ》となるとは……ッ!!』と叫びながら|空间移动《テレポ—ト》でどこかへ消え去ってしまい、その美琴にしても携带电话の登录完了手续きとかでサ—ビス店に引き返していた。实は最初は上条も|一绪《いつしよ》に付いて行ったのだが、手续きの途中で外に出たのだ。ちなみに现在そちらのお店では『ゲコ太と一绪にピョン子までもらえるなんて—っ!!』と|瞳《ひとみ》をキラキラさせている奇态な|常盘台《ときわだい》中学のエ—スがいる译だが、面倒臭いのでああいう状态の人间は相手にしないのが吉だ。
「……早く冷静になって欲しい」
上条はため息をつきつつ、携带电话の画面に目をやった。ここは地下街なので分かりにくいが、今はもう午後四时过ぎ。书类だの申请だのと色々あった译だが、やっぱり时间がかかったな—、というのが素直な感想である。
と、のんびりしている上条の元へ御坂美琴が归ってきた。
「ありゃ、もう终わったのか?」
上条は话しかけたが、それに反して美琴は何やら无言で小さく颜を|逸《そ》らすだけだ。わずかに|逡巡《しゆんじゆん》しているようにも受け取れるが、そもそも返事の一つで恼まれるような事をした觉えはない。
『?』と上条は首をひねって、
「何だよ、何かあったのか。そういや新しい携带电话の纸袋とか持ってないけど、トラブルでもあったのか」
「い、いえ、ミサカは……」
美琴は何やら音の出ない|滑《なめ》らかな动きで两手をわたわた振ると、やがて自分のおでこに片手を当てて、
「……このミサカはいつもゴ—グルをつけている方のミサカです、とミサカは一○○三二号と|检体番号《シリアルナンバ—》を告げつつ认识を改めさせてみます」
「もしかして、|御坂《みさか》妹の方か?」
言うと、御坂妹。はコクンと小さく|颔《うなず》いた。
御坂|美琴《みこと》と发の毛一本レベルで同じ体格を持つ少女なので、见间违えるのも仕方がないのかもしれない。いつもは暗视ゴ—グルのようなゴツイ装备をおでこにつけているのだが、|何故《なぜ》か今日は何にもなかった。
御坂妹の方でも、何やら特殊な事情があるらしく、
「……これぐらいのサイズのミサカを转、」览にならなかったでしょうか、とミサカは自分の胸のちょっと下边りに|掌《てのひら》を水平に差し出します」
御坂妹が示しているのは、|小萌《こもえ》先生と同じかちょっと低いぐらいの高さだ。|上条《かみじよう》は彼女の仕草を见ながら、やや|怪诽《けげん》とした表情で、
「お前ら、サイズ变更とかできたのか?」
「その反应からして知らないようですね、とミサカは役立たずっぷりに幻灭しながらあのクソ野郎の逃走ル—トの割り出しを续けます」
御坂妹はわずかに息を|吐《は》いた。学生|?《かばん》を持ち直すと、中から何やらガチャっと重々しい金属音が闻こえてくる。
また不机嫌だなあコイツ、と上条が思っていると、彼女は续けてこう言った。
「平たく言えばゴ—グルを|盗《と》られてしまったのです、とミサカは险しい颜つきで现状の报告をします。あのゴ—グルがないとミサカはお|姊样《オリジナル》との区别がつきにくいので早急に回收しなくてはならないのですが、状况はこちらがとても不利と言えます、とミサカは暗に手传えと上目遣いで诉えてみます」
「……、」
この强引さは姊も妹も似たようなものなのかもしれない、と上条は思う。
彼は|呆《あき》れながら、
「确かに、その格好だと美琴と间违われるかもしれないな」
「はい、とミサカは肯定の返事をします。先ほどもサブマシンガン片手に路地を走っていたらツインテ—ルの女学生に突然绝叫されて|难仪《なんぎ》しました、とミサカは苦劳话をしみじみと语ってみます」
「いや……そのツインテ—ルは……」
心当たりがあるのだが、美琴の日常生活に支障をきたさない事を祈るばかりだ。それ以前にサブマシンガンという不稳な单语が混じっていた气がしないでもないが、もう闻き间违えであって欲しいの一手に尽きる。
「ともあれ、ゴ—グルを取り返す前に|暂定《ざんてい》で良いから美琴と区别するためのワンポイントが欲しいトコだな」
「それはミサカにおでこキャラになれと言っているのでしょうか、とミサカは首を|倾《かし》げます」
「その单语は今すぐ削除しろ」|谁《だれ》だろう教えたのは、と|上条《かみじよう》は真剑に疑问に思う。「おでこじゃなくても、そうだな。格好までおんなじ冬服だし……お前はブレザ—を脱げば良いんじゃねえの?」
「あなたには公众の面前で脱げと强要する|趣味《しゆみ》があるのですか、とミサカはいまいち良さを理解しないままとりあえず从ってみます」
「ぶっ!?何でいきなりスカ—トに手をかけてんだ!分かったよ分かった脱ぐのはなしなしそうだ逆にアクセサリ—とかつけてりゃ见分けはつくだろ!!」
「そういった装饰品は今手元にありませんし、购入となると值が张りそうです、とミサカは现实的な受け答えによって家庭的な|氛围气《ふんいき》をアピ—ルしてみます」
あのカエル颜の医者には一度|御坂《みさか》妹の生活环境を问い|质《ただ》した方が良いな、と上条は心の中で誓いつつも、
「いや、アクセサリ—っつってもピンキリだからな。区别がつけば良いんだし、そこらの|露店《ろてん》で卖ってるようなモンなら一○○○圆ぐらいでどうにかなるよ。その程度なら|俺《おれ》が买っても良いし」
「买って……?」
「何だろな。女の子でアクセサリ—って言ったら指轮とかが良いか」
「───、ゆびわ」
御坂妹は|何故《なぜ》だか|默《だま》ってしまう。
上条はそんな样子に一切气づかずに、
「いや指轮じゃ|驮目《だめ》だな目立たないし。もっとパッと见で分かるようなモンだと、|浊腰《どくろ》のマスクとかの方が良いかって痛ァ!?」
思い直した|瞬间《しゆんかん》に无表情の御坂妹からグ—をもらった。
2
「クソガキが消えただァ?」
|一方通行《アクセラレ—タ》の声が广いリビングに|响《ひび》く。
てっきり|打ち止め《ラストオ—ダ—》は自分用に割り当てられた部屋で昼寝でもしていると思っていたのだが、|黄泉川《よみかわ》の话によるとどうもマンションの中にはいないらしい。
ジャ—ジ姿の黄泉川は轻く首を振って、
「ウチはホテルと同じくオ—トロックだから、外へ出るだけなら|键《かぎ》はいらないじゃんよ。だからもしかすると胜手に游びに行っちゃったのかもしれないじゃん」
「マンションは广いから、もしかすると外ではなくエレベ—タ—や阶段、通路などで游んでいる可能性もあるわね」
|芳川《よしかわ》も续けて言ったが、|一方通行《アクセラレ—タ》にはどうしても恶い予想ばかりが头に浮かぶ。
乐观的に世界の性善说を信じられない。彼はその程度には恶意に触れすぎていた。
(……最後にあのガキを见たのはいつだっけか?)
|一方通行《アクセラレ—タ》は壁に挂かった时计を见る。
今の时间は午後四时三○分。昼食を食べて]眠りしてシャワ—を浴びようとしたのは午後一时だったか二时だったか。
(少なく见积もっても二峙间以上。それだけの时间がありゃあ、プロなら杀して死体を埋めて立ち去る事もできンだろオな)
|一方通行《アクセラレ—タ》や|打ち止め《ラストオ—ダ—》には、|莫大《ばくだい》な利益を生む研究材料という共通点がある。今でこそ彼らを卷き?んだ『实验』は中止されているが、别の研究に利用して富を得ようとする人间が现れても何の不思议もない。
いや、そういった损益や计算など必要ないのだ。『あの|一方通行《アクセラレ—タ》の颜见知りである』というだけで、すでに何らかの|攻击《こうげき》对象に指定されてもおかしくはない。学园都市最强の名を失った今の彼は、タ—ゲットの一つに过ぎないのだから。
|一方通行《アクセラレ—タ》は吐き舍てるように舌打ちすると、自分の体を支える现代的な|杖《つえ》に力を入れ直して、
「出かけてくる」
「いや、别にその边に游びに行ってるだけだと思うじゃんよ」
やけにのんびりした口调の|黄泉川《よみかわ》に、|一方通行《アクセラレ—タ》はイライラした目を向けたが、
「だって、留守电入ってるじゃんか」
「……、」
|一方通行《アクセラレ—タ》はわずかに|默《だま》ると、电话とファックスとコピ—机が|一绪《いつしよ》になった、かなり大型の家电制品の留守电再生ボタンを押す。
ピ—ッ、という甲高い电子音の後に、
『あのね—、今ミサカはミサカの下位个体と追いかけっこしているの、ってミサカはミサカは现状报告してみたり。今すぐは归れないけど晚ご饭は作っておいて欲しいかも、ってミサカはミサカは注文も出してみる』
杖で电话を|殴《なぐ》ろうとした所で|一方通行《アクセラレ—タ》は黄泉川と芳川に取り押さえられた。能力がなければ今の彼はバタバタ暴れる程度の力しかないのである。
发も服もグチャグチャにされた|一方通行《アクセラレ—タ》は、ぜ—ぜ—は—は—と荒い息を吐きながら、
「……心の底から|郁陶《うつとう》しいガキだ」
「あはは。人间关系なんてそんなものじゃんよ」
黄泉川は笑いながらも、电话を|坏《こわ》されるのが怖いのか|一方通行《アクセラレ—タ》の胴にガッチリ两手を回したままだ。その体势だと大きな胸が押し当たる译だが、そちらは全く气にしていないらしい。
「自分にとって都合が良い事ばっかしてくれる人间关系なんてのは存在しないんじゃん。本当の意味で自由で|谁《だれ》にも|邪魔《じやま》されないってのは、言い换えれば何をやっても谁にも气づいてもらえないって事を意味してるからな—」
|黄泉川《よみかわ》は|一方通行《アクセラレ—タ》の腰から手を|离《はな》し、
「根を张るってのはそういう事じゃんよ。互いが互いを|络《から》め合うほど动きづらくなる。けど、その分だけ雨风には强くなってくれるもんだ」
「───、」
大人の意见は闻くだけで面倒臭い。
图星を突いていようがいまいがどうとでも受け取れる教训だけはどうにかして欲しい。
ともあれ、|打ち止め《ラストオ—ダ—》を搜して目の届く场所にでも置いておいた方が良さそうだ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は思った。彼の行动の自由は首の电极が送受信する微弱な电磁波によって成り立っているが、それら|妹达《シスタ—ズ》の活动の中心となっているのがあの|打ち止め《ラストオ—ダ—》だ。|一方通行《アクセラレ—タ》は|未《いま》だにミサカ、不ットワ—クというものが『理屈ではなく感觉的に』どういうものかを理解していないが、あの个体の活动に支障が出れば自分の方にも|影响《えいきよう》が出てくるかもしれない、などと考えていた。そう、これはあくまで自分のためなのだ。
一方、黄泉川は黄泉川で自分は良い事を言ったと思っているのか、ちょっと得意げな颜で、「そんじゃ、私と|桔梗《ききよう》も手传ってやりますか」
「わたしも?」
「嫌なら桔梗って名前を今日から舍てなさいじゃんよ—」
见るからに运动が苦手そうな|芳川《よしかわ》は窗の外を眺めながら『一日に一时间以上外を步いたら倒れる……』とぼやいていた。
|一方通行《アクセラレ—タ》は|眉《まゆ》をひそめて、
「何のマネだオマエら?」
「だって、搜すんでしょあの子」
黄泉川が当たり前のように言ったので、|一方通行《アクセラレ—タ》は少し|默《だま》る。
その间に、ジャ—ジの女は留守录のUSBメモリを引き拔きつつ、
「どうも屋外みたいだったし、あの子の後ろから闻こえてる物音を解析できりゃ场所を探る事もできるじゃんよ。ま、この边は|警备员《アンチスキル》の黄泉川お姊さんに任せて熔きなさいじゃ—ん」
「|爱穗《あいほ》、职权乱用じゃないかしら」
「迷子の搜索と发见も治安维持のお仕事の一つ。问题なしじゃんよ」
何でコイッら乐しそうな颜してンだ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は思う。
そんな彼に、黄泉川はUSBメモリ片手にニヤニヤと笑って、
「こういう相互关系をなんて言うか知ってるじゃんよ?」
「アシの引っ张り合いか」
「持ちつ持たれつよ」
|芳川《よしかわ》の|呆《あき》れた声と共に、|打ち止め《ラストオ—ダ—》搜索|网《もう》が展开された。
3
|御坂《みきか》妹が怒りんぼうになっている。
|上条当麻《かみじようとうま》は地下街の端っこで战々恐々としている。
结局买ってあげたのは消费税?み一○○○圆ジャストの安いネックレスだったのだが、どうもそれ以降御坂妹がずっとずっとムスッとしているような气がする。时々唇がモゴモゴ动いて『指轮……』『ミサカは左手の药指の……』などとブツブツ言っている。一体どんなお恼みを抱えているのだろうか?
「あの—、御坂妹?」
「……、」
「ネックレスがそんなに气に入らないんだったら返してこようか—?」
「───これ以上ミサカから何も夺わないでください、とミサカは小さな声で切に语ってみます」
……ネックレス自体は气に入ってるんだよな?と上条は首を|倾《かし》げる。御坂妹は何に苦恼しているのか本当に想像がつかない。まだお店の方から戾ってこない|美琴《みこと》も少し气になるし、御坂妹までこんな感じだし、何だかとても踏んだり蹴ったりなのだった。
とにかく机嫌を取ろう、と上条はオタオタと周围を见回し、
「ん?お果子卖ってる。あれ食べよう御坂妹」
とっさに食べ物の方向に话を振ってしまったのはおそらく纯白シスタ—インデックスの|影响《えいきよう》が|染《し》み付いているからだろう。我ながら嫌な反射だ、と上条は白己|嫌恶《けんお》する。
一方、御坂妹は上条の颜を无表情に眺めて、
「もので钓ろうとしてますか、とミサカは单刀直入に告げてみます」
「ううっ!?」
「しかしミサカのためを思っての言动を实行したその意思は尊重しましょう、とミサカは好意に甘えてみる事にします」
とりあえず肯定のサインが出たので上条はお店に向かう。
アイスクリ—ムショップのように、地下街の通路に直接レジカウンタ—が|邻接《りんせつ》した小さなお店だ。卖っているのは、ヒョコや子犬などの动物を模した小さなお果子である。见た目はたこ烧きっぽいが、おそらくホットケ—キ系の生地でカスタ—ドクリ—ムなどを包んでいるのだうう。洋果子风にチ—ズやカスタ—ドを入れた|鲷烧《たいや》きみたいなものだ。
黑い铁板には直接动物の型が作られている。
カウンタ—の向こうにいる大学生ぐらいのお姊さんはニコニコ|微笑《ほほえ》んで、
「ご注文の品はお决まりですか—?」
「これ、动物によって味が变わってたりすんですか。中身が违うとか」
「いえいえ。同じにしないとデ—タが取れないんで—」
「……?」
「えっと、人间って理屈じゃなくて感觉で无条件に好きになっちゃうデザインってあるじゃないですか。それを突き诘めると洋服とかお化妆とかの分野に应用できるんですよ。これはアンケ—トみたいなもので—、どの动物を选ぶかの统计を取ってるんです」
|上条《かみじよう》は一步|退《ひ》いて、改めてお店の看板を眺めてみる。
明らかに贷し店铺っぽい看板には大学の名前もしっかり记されている。
「まあ害がないなら良いけど……どれにすっかな。やっぱりヒヨコが良い气がする」
「は—い。ヒヨコは五四票目です。まいど—」
一品だけで五四っていうのは卖れてるのか卖れてないのか、と上条は最後まで首をひねりながら商品をもらった。
透明なパックにはヒヨコが纵二列、横五っの合计一○个が收まっている。ホットケ—キっぽい黄色い生地の上には溶けたカラメルがかけてあった。|爪杨枝《つまようじ》の代わりに、プラスチックの小さなフォ—クが二本添えてある。
「ほい|御坂《みさか》妹、お食べ—」
「……、」
上条はパックとずずいと劝めてみたが、御坂妹はヒヨコをじ—っと眺めたままピタリと动きを止めていた。
というより、何やらヒヨコと目を合わせているようにも见える。
「あの、御坂妹……?」
「……、」
上条が言っても御坂妹は无反应だ。
彼女は颜色を变えずに、『ちちちちち……』と小さく舌を鸣らし始めている。
(そういや御坂妹は|记忆丧失《きおくそうしつ》の|俺《おれ》よりも世の中の经验が浅いんだよな。もしかすると食べ方が分からないのかも)
御坂妹は何やらヒョコのくちばしを细い指先でチョンチョンとつついては『む、|啮《か》みつかないとは利口なヒヨコ|达《たち》です、とミサカは感叹のため息をつきます』とか何とか言っている。
上条はおもむろに、プラスチックのフォ—クを取る。
それから、御坂妹にレクチャ—するために、试しにヒョコの背中にフォ—クの先端を突き刺した。
御坂妹はビクゥ!!と肩を大きく|震《ふる》わせて、
「ひっ、ヒヨコの丸っこいボディが!?とミサカは战々恐々としてみます……。この子は|何故《なぜ》そこまで从顺なのですか、とミサカは疑问を抱きますがヒヨコはピ—とも鸣きません」
「ん?さっきからどうしたんだ|御坂《みさか》妹。お前が食べないなら|俺《おれ》が食っちまうそ」
「た、食べ……ッ!?」
御坂妹が何やら。ソワソワとしている中、|上条《かみじよう》は|怪诽《けげん》な颜でヒヨコを口に入れる。もにゅもにゆと|啮《か》んでみると、やっぱり洋果子っぽい甘みが广がっていく。
「お、实验品のくせに结构|美味《うま》いなこれ」
一方その|顷《ころ》、国の前の少年の口に放り?まれたヒヨコのつぶらな|瞳《ひとみ》(チョコレ—ト制)が御坂妹の目を|真《ま》っ|直《す》ぐと见つめている事に彼女は大变ショックを受けていた。
「………………………………………………………………………………、た」
もぐもぐという音と共に、その何か言いたそうな|可爱《かわい》らしい颜が啮み|溃《つぶ》されていく。
御坂妹は、ぶるぶると体を|震《ふる》わせると、
「たとえ实验品であってもォ!ミサカはこのヒヨコの命をおォォおおおおおォォおおおおおおおおおおおおおおおおおォォおおッ!!」
「もごオっ!?な、何で突然暴走气味にバチバチいってんだお前───ッ!?」
上条が叫び终わる前に御坂妹の全身から青白い火花が飞び散った。
彼女は|欠陷电气《レデイオノイズ》。
二万人集まっても|超电磁炮《レ—ルガン》に|敌《かな》わない程度の实力しかない。
しかし|马鹿《ばか》にしてはならない。
一○亿ボルトの二万分の一でも五万ボルトである。
「ぶわ—っ!?」
不幸にもその时、上条の左手にはフォ—クが、右手にはヒヨコの入ったパックが握られていた。つまり两手が|完壁《かんぺき》に|塞《ふさ》がれていて───そこへ五万ボルトが|直击《ちよくげき》した。
いかに|幻想杀し《イマジンブレイカ—》があってもこれは|驮日《だめ》だ。
不意の一击に上条はゴロゴロと地下街の床を转がっていく。
通路を行き来していた学生|达《たち》が『おわっ』『バチッつったぞ今!?』とか恐々とささやき合っている、
「ハッ!?とミサカは散らばっていくヒョコを见て我に返ります!!」
上条ではなくヒョコで正气に戾った边り、よほどそちらに钉付けのようだ。
御坂妹は里返しになった透明のパックを拾い上げ、せっせとヒョコを元に戾していく。
颜つきは真剑そのものだった。
一方、そこら边に转がされたままの上条はふらふらと起き上がると、
「う、うう。ごめん御坂妹……」
谢ってきたので御坂妹は两手でヒヨコのパックを抱えつつも耳を倾ける。
上条|当麻《とうま》は言う。
「……食べ物を粗末にしちまった。でも三秒ル—ルがあるので地面に落ちても食べます|俺《おれ》」
言い终わると同时に|御坂《みさか》妹の|蹴《け》りが放たれ|上条《かみじよう》が吹っ飞ばされた。
ふ—ふ—と珍しく荒い息を|吐《は》いている御坂妹の心境を上条はいまいち|掴《つか》みきれない。よほどお|腹《なか》が减っているんだろうか、と推测してみる。
と、
そんな『?』がいっぱいな上条の元に、さらに见知った颜が近づいてきた。
「ちょ……アンタ|达《たち》何やってんのよ!?」
上条というより、御坂妹の颜を见て慌てて小走りになったのは、御坂|美琴《みこと》だ。学生|?《かばん》の|他《ほか》に、电话会社のロゴが入った小さな纸袋を|提《さ》げていた。携带电话そのものは换えていないはずだが、书类とか追加扩张チップのケ—スとかマスコットのストラップとかが入っているのだろう。コンビニやス—パ—等では、ちょっとした荷物のためにいちいち袋を消费するのは白肃しようという动きもあるのだが、あのサ—ビス店ではそういった运动はまだ行われていないらしい。
「しっかし……」
御坂美琴と御坂妹。
この二人が并ぶと本当に见分けがつかなくなる。と言っても、别に双子なんてそれほど珍しくもないので、地下街を行き交う人々に注目されているのは|常盘台《ときわだい》中学というブランドの方にあるかもしれない。美琴と御坂妹はそっくりなのだが、御坂妹の首にネックレスがあるのでもう迷わない。良かった良かった。
御坂妹は美琴の质问に、
「ミサカは夺われてしまった。ゴ—グルを取り戾すために远路はるばる地下街までやってきたのです、とミサカはお|姊样《オリジナル》のカエルのマスコットに视线を夺われつつ答えます。|检体番号《シリアルナンパ》二○○○一号の予想逃走ル—トや|迎击《げいげき》用火器リストなどもありますがもうカエルに梦中なのでどうでもいいや、とミサカは适当に投げときます」
「コラちゃんと说明しなさいよアンタ!!」
ムッとした美琴がゲコ太とピョン子を学生?の中に仕舞ってしまうと、御坂妹は表情を动かさず、しかし|瞳《ひとみ》の中に|哀《かな》しそうな色を浮かべた。それから两手の中のヒヨコパックに视线を落とすと、
「……ミサカは浮气はしません、とミサカは手の中のヒヨコを再确认します」
「ミサカ『は』ってどういう意味よ……」
|呆《あき》れたように言ったが、美琴も美琴で御坂妹の持っているヒヨコのデザインにやや兴味があるようだ。だが御坂妹は两手を使って胸の位置でヒヨコ达をがっちりと抱き、
「|お姊样《オリジナル》はそっちのカエルにでもうつつを拔かしていれば良いのです、とミサカは墓まで持っていくつもりの铁壁ガ—ドを|敷《し》きます」
「む。良いじゃないそのヒヨコ达をちょっとぐらい见せてくれても」
「|驮目《だめ》なものは驮目です、とミサカは自己の意思を贯きます。そんなに欲しければミサカと同じくそっちの人に买ってもらえば良いでしょう、とミサカは|颚《あご》を使って指名します」
|美琴《みこと》がくるりと|上条《かみじよう》の方を振り返る。
「───、」
しばし无言だった彼女は、やがてゆっくりと深呼吸すると、
「……确か、アンタは胜负に负けて|罚《ばつ》ゲ—ムで何でも言う事を闻くって话になってたわよね?」
「は?なに?」
「……アンタはそのために今日一日私に付き合ってる美琴さん专用机状态なのよね。私のためだけに|一生悬命《いつしようけんめい》汗水垂らして顽张ってくれるのよね?」
「何で!?何で|御坂《みさか》の周边の空气が|不稳《ふおん》な感じに带电してんの!?」
「それはアンタがこんな时までいつも通りだからよッ!!人样の罚ゲ—ムの最中だってのにあっちこっちで声かけやがって。そんなに妹って|响《ひび》きが大好きな人だったのかこのボンクラがァァあああああああああ!!」
彼女の前发から一○亿ボルトが|炸裂《さくれつ》したが、上条は|右拳《みぎこぶし》を振り回してこれを|弹《はじ》き飞ばす。そんな事を二回、三回と|缲《く》り返すにつれて、
「だぁ—ムカつく!!何なのその耐久性!?こういう时は适当にぶっ飞ばされてそっちの方にでも转がってりゃ良いのよ!!」
「だから何でキレてんだよテメェ!あとそのリクエスト受けたら死にますけどね|俺《おれ》!!」
さらに一○回、二○回と重ねていくと、ようやく不毛だと思い知らされたのか、美琴はぜ—ぜ—は—は—と肩で息をしながら|雷击《らいげき》を|止《や》める。ちなみに上条は腰が拔ける寸前であり、地下街は『|警备员《アンチスキル》呼ぶ?』『いや卷き?まれたくね—な—』という空气に满ちており、御坂妹はお果子のヒヨコのくちばしを人差し指でチョンチョンとつついている。
ふと御坂妹はヒョコから颜を上げて、
「ところで|お姊样《オリジナル》はここで何をしているのですか、とミサカは情报收集を开始します」
「ううっ!?」
ビクッ!と美琴の肩が大きく震えた。
别に特别な事をしている译でもないのに、美琴は何やら御坂妹から目を|逸《そ》らすと、
「い、いや、|大霸星祭《だいはせいさい》で罚ゲ—ムを巡ってちょっとした胜负をして、そんで私が胜ったから胜者としてこの|马鹿《ばか》を引きずり回しているだけよそれだけよ。え—とそのそもそも大霸星祭の事から说明した方が良いのかしらつまりね」
「つまり|お姊样《オリジナル》は素直になれないのですか、とミサカは情报分析を开始します」
「ぶっ!?どこで集めた情报をどう分析したらそんな结论に达するのよ!!わっ、私は别に里表なんてないわ。素直になれないだなんて言叶には全く缘はないわね!大体こんなの相手に索直になった所で何をしろってのよ?こんなボンクラにッ!」
ビッ!と|上条《かみじよう》の颜を指差す|美琴《みこと》に、|御坂《みさか》妹は颜色を变えずに、
「む、こんなのというぞんざいな?いは理解できません、とミサカは反论してみます。この人はミサカの命の恩人でありこんなの程度ではないのです、とミサカはスラスラと订正を求めます」
「うっ……。で、でもそれは今のこの状况とは何の关系もないじゃない。このボンクラをボンクラと呼ぶ事の何が恶いってのよ」
「そうですか、どこまでも素查にならないのですね、とミサカは最终确认を取ります」
御坂妹は、スッ……と一度だけ美琴の|瞳《ひとみ》を|?《のぞ》き?むと、
「ではミサカは素直になってみます、とミサカは|お姊样《オリジナル》とは违う道を步んでみます」
言った途端に。
御坂妹は上条の|邻《となり》に立つと、いきなり彼の右腕にギュッと抱きついた。
彼女の|薄《うす》い胸が|肘《ひじ》の边りにぶつかり、
「どァあっ!?」
上条の心脏がバコ—ン!!と跳ねる。
|一瞬《いつしゆん》ショックで呼吸困难に|陷《おちい》りかける纯情少年だったが、パニック|故《ゆえ》に目の前で美琴がパク
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パクと口を开闭させている事にまで目がいっていない。边りの男子学生|达《たち》が时折チラチラとこちらを见ているのだが、そんな事にも全く气がついていない。
「な、な、なぁ……」
|愕然《がくぜん》とする|美琴《みこと》の目の前で、|上条《かみじよう》の右腕にしがみついたままの|御坂《みさか》妹は体をすり寄せるように身をよじると、
「チラリ、とミサカはさりげなく买っていただいたアクセサリ—を|お姊样《オリジナル》に见せつけてみます」
「!?」
ビキリ、と美琴の头から变な音が闻こえる。
御坂妹はさらに叠み挂けようとしたが、
トテトテ、ガシイ!!と。
「ミサカも反对侧から抱きついてみる、ってミサカはミサカは面自そうな事に混ぜてもらってみたり!!わ—い!!」
今度は上条の左腕に一○岁ぐらいの少女がぶら下がってきた。
ギョッとした上条がそちらを见ると、体は幼いのに颜つきは美琴そっくりだった。御坂妹と同じゴ—グルを身につけているのだが、ゴムバンドがゆるゆるなのでおでこを通り越して首に引っかかってしまっている。
「|谁《だれ》だコイツ!?妹の妹!?」
もう|薄《うす》いのを通り越してなんかコツコツした硬さが传わるだけの感触に上条は困惑しつつも|素性《すじよう》を寻ねる。
しかし答えが返ってくる前に、
「|检体番号《シリアルナンバ—》二○○○一号、ミサカの前にノコノコと颜を出すとは良い度胸ですね、とミサカは本气モ—ドに移行します」
「ふふふミサカはもうそのゲ—ムには饱きてしまったのだ、ってミサカはミサカは次なるエンタ—テイメントの发掘に出かけてみたり」
「|逃《のが》すとお思いですか!とミサカは|?《かばん》の中からサブマシンガンを取り出します!」
ジャゴッ!!という钝い金属音に美琴が『ぶっ!?』と吹き出し、やたら小さい女の子はその间に高速で人混みの中へと消えてしまった。
御坂妹は『ぞんざいに?ったら|叩《たた》き杀します、とミサカは忠告しておきます』とこっそり上条に耳打ちしつつヒヨコをそっと押し付けると、どう考えてもオモチャに见えない铳器类を片手に人の山へと|突击《とつげき》していく。
壁の向こうから声が闻こえる。
「その租度で本气とは片腹痛いな—っ!ってミサカはミサカは|小马鹿《こばか》にしてみたり」
「まだまだ本番はこれからです、とミサカはミサカ|完全武装《フルブ—スト》へと最终展开しますッ!!」
ガシャガシャガチャチャ!!と人混みの先から何かを组み立てるような异样な金属音が连续する。ちょっと|?《のぞ》いてみたいがやっぱり怖いので近づかないでおこう、と|上条《かみじよう》は心に誓ってみた。
4
午後五时。
|一方通行《アクセラレ—タ》は冷房の效いたマンションから外へ出ると、アスファルトの上に|杖《つえ》をつく。もう片方の手には连络用の携带电话が握られていた。
结局、いつまで|经《た》っても归って来ない|打ち止め《ラストオ—ダ—》を搜す事になった。
今日は学园都市全体が半日授业だったらしいが、この时间带になると平日とも区别はない。新调した冬服を|驯染《なじ》ませるためなのか、そこらを步いている连中の身なりは大抵がセ—ラ—服だったり|诘襟《つめえり》だったりする。|敢《あ》えて违いを语るとすれば、新品特有の|?《にお》いのようなものがそこらじゅうでうっすら漂っているぐらいか。
「ウザってェ天气だ……」
|一方通行《アクセラレ—タ》は适当に空を见上げて|?《つぶや》いた。今まで建物の中にいたから气づかなかったが、青かった空がいつの间にか灰色……というより、ほとんど黑に近い云に|覆《おお》われていた。もういつ降り始めてもおかしくない感じだ。气象情报の整理にも使われていた学园都市のス—パ—コンピュ—タ『|树形图の设计者《ツリ—ダイアグラム》』はすでに|破坏《はかい》されているため、最近は夕立など突发的な天气の移り变わりを予测できなくなっている。
『あちゃ—。こりゃ降り出す前に见つけて归りたいじゃんか』
同じく头上を见上げているのか、电话の向こうから|黄泉川《よみかわ》の声が闻こえる。ちなみに|芳川《よしかわ》は留守番だ。搜索中に|打ち止め《ラストオ—ダ—》がマンションに归ってくる可能性があり、その场合、|键《かぎ》も暗证番号もない|打ち止め《ラストオ—ダ—》は正面玄关前でポツンと立ち尽くす羽目になるからだ。
彼は舌打ちする。
立ち尽くすだけなら良いが、暇さえあればどこまでも突っ走っていくあの子供がその场に|留《とど》まる可能性は极めて低い。饱きたらどこかに行ってしまい、それが余计に搜索を困难にする恐れもある。
|一方通行《アクセラレ—タ》は携带电话を|掴《つか》み直し、
「オマエは车だろオがよ」
『ドア开けて伞を差すまででも|濡《ぬ》れるのは嫌じゃんか』
このモヤシ人间が、と|一方通行《アクセラレ—タ》は毒づこうとしたがやめておいた。太阳光の紫外线を|避《さ》けて休の色が白くなっているのは彼の方だからだ。
「で、あのガキがどの边にいるのかは|大杂把《おおざつぱ》に掴めたンかよ」
『あの子の後ろで流れてたのは近くの地下街で使われている室内音乐っぽいじゃんか』
「あァ?事件でもねエ迷子搜しに解析机材でも使ったのか」
『だから迷子搜索もウチらのお仕事じゃんか。え—っとね。あの子がかけてきた电话の、音声の後ろで流れている音乐を解析して场所を确认してるじゃんよ』
「はン。そりゃ街中に流れてる『耳に入らない音』の事か」
『へ—。气づいてる人がいるなんて。严密には|可听域《かちよういき》外の低周波だけどね』
|马鹿《ばか》が、と|一方通行《アクセラレ—タ》は吐き舍てた。彼は世界のあらゆるベクトルを观测、计算、制御する能力者だ。口に见えない、耳に闻こえない程度で见逃していたら、放射线などを防ぐ事はできない。
「ありゃ店内BGMとかのスピ—カ—から、音乐に混ぜてこっそり流してるモンだよな「
『そ、あの低周波だけじゃ意味がないんだけど、私|达警备员《たちのノンチスかガル》が持ってる特别な周波数をぶつけると、きちんとした音になるって译じゃん。スピ—カ—一つ一つが违う音を检出するようにできててね、その音を调べると「どこから电话を使っているか」が大休分かる。ま、今じゃ逆探知を|欺《あざむ》く机械なんて简单に手に入るから、こういった努力が必要じゃんよ』
つってもこれも探索法の一つで、普通は何种类かの方法を使って多角的に情报を整理するんだけどね、とか何とか|黄泉川《よみかわ》は言っている。
面倒な仕组みだ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は息を吐いた。
この手の|大杂把《おおざつぱ》な仕挂けを难なく实行していくのが学园都市の特徵だろう。实际には制度の改定や装置の配备など样々な问题があっただろうが、それらを|全《すべ》て『实验だから』の一言で押し通せるのである。
「で、|俺《おれ》はこっから地下街に向かやァ良いのか」
『ひとまずは、ね。あのすばしっこいのが一ヶ所に|留《とど》まってるとは思えないから、そこから闻き?み开始じゃんよ』
「……、この|一方通行《おれ》が?この|格好《シロづくめ》でか?」
『は—いスマイルスマイル笑颜の练习—』
アホか、と|一方通行《アクセラレ—タ》は舌打ちする。
とにかく彼は恶い意味であまりにも有名すぎる。この|超能力者《レベル5》が笑颜なんぞ作って接近したら、相手はショックで死ぬかもしれない。『杀人犯に狙われてるかと思ってとっさに击っちゃいました』という事态になっても彼は纳得する。はっきり言えば、それは仕方がないだろう。仕方がないから返り讨ちにするしかない。
だが、何にしても|打ち止め《ラストオ—ダ—》を搜すには情报を集める必要がある。
ウザったい事になりそォだ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は思わず|?《つぶや》いた。
と、黄泉川は不意に言った。
『ねぇ|一方通行《アクセラレ—タ》』
「何だ」
『そんなに他人に好意を向ける事が怖いの?』
「……また随分と乐しげな话题だなァオイ。放课後の散步にはピッタリだ」
『暴君ってのは乐じゃんか』
|黄泉川《よみかわ》は话を闻いていない。
というよりも、闻いた上で受け流している。
『そりゃ人それぞれで苦恼もあんでしょうけど、でもやっぱり气乐な部分もあるはずじゃん。
だって、暴君は里切られない。仲が冷める心配もない。自分の见せた好意を跳ね|除《の》けられる恐れもない。|何故《なぜ》なら恐怖と|憎恶《ぞうお》の对象でしかないから』
すらすらと言叶は出た。
|一方通行《アクセラレ—タ》はそれを闻く。
『人间关系ってのが好意と恶意のみで成立している、なんて单纯な事は言わないじゃん。でも、今までの君は目の前の|全《すべ》てを拒绝と恶意で跳ね返せば良かったのは事实じゃん。乐だよね。これからは违うけど。だから寻ねてるんじゃんか。好意と恶意、どちらを见せるか选ぶのはそんなに怖いのかって』
「くっだらねェな。|俺《おれ》が───」
『事实』
黄泉川は|一方通行《アクセラレ—タ》の言叶を封じる。
『君は|打ち止め《ラストオ—ダ—》からの好意は受け入れているものの、自分から|打ち止め《ラストオ—ダ—》へ好意を向ける事を恐れている。君|达《たち》の关系一见良好に见えるけど、实际には|打ち止め《ラストオ—ダ—》から好意の供给が绝たれれば|系《つな》ぎ止める事のできない、とっても危ういモノじゃんか』
その声は平たく。
无理に力说しないが|故《ゆえ》に、余裕という名の真实味がある。
『怖いのかな、|一方通行《アクセラレ—タ》。|距离《きより》を缩める方法が分からないから、これ以上それを|离《はな》されるかもしれない行为に出るのは。自分の行いが里目に出てさらに距离が远ざかれば、もう自分から元に戾す事ができなくなるのが。でもね、それをしない事には始まらないじゃんよ』
「说教か」
『柄じゃないのは理解してるけど、私も一应は教师だからじゃん。ま、私ごとき|下《した》っ|端《ぱ》|警备员《アンチスキル》に、君の暗を知る机会なんてないとは思ってるけど[#「君の暗を知る机会なんてないとは思ってるけど」に傍点]』
ああ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は理解する。
コイツはすでに彼の|素性《すじよう》について、|书库《パンク》へ探りを入れてみたのだろう。
そこで行き诘まったから、こうして本人に寻ねているのだ。
「回りくどい野郎だ」
『君が昔いた所なんだけど……。出てきた名前が名前だけに、ね』
「特力研だろ」
|黄泉川《よみかわ》が口に出すのをためらった名前を、|一方通行《アクセラレ—タ》はあっさりと出した。
それは|书库《バンク》の中でも特に严重な领域に记录……というより封印された施设の名だ。、
「正式名称は特例能力者多重调整技术研究所。|俺《おれ》が九岁まで放り?まれてた『|学校《ホ—ム》』で、|敷地《しきち》内に死体处分场があるってウワサされてた地狱だな」
学校と死体处分场という、あまりにも|啮《か》み合わないワ—ドが并んでいるのは、学园都市特有のものだ。この街では学校とは同时に能力开发の研究所や试验场も兼ねている。そこからウワサが派生していくと『非入道的な研究を行う杀人施设』という话が构筑される。
「实际にゃあウワサ以上の施设だった。死体处分场なンてモンじゃねェよ。逆だ、生きた人间を处分するための扫き溜めさ。オマエも话ぐれエは闻いた事があンじゃねエのか」
『……、そりゃあね』
特力研は|多重能力者《デユアルスキル》の研究·实验を主体とした施设だ。今でこそ学生は一つの能力しか使えない、二つ以上の力を同时に发现させるのは不可能だという结论が出ているが、そのデ—タは主にここで采取された。
つまり、法则を发见するまで延々と『失败』を|缲《く》り返していたのだ。
能力开发は暗示や药物すら用い、脑の构造に直接|影响《えいきよう》を及ぼす、その『失败』という二文字がどれほどの惨事を生んだかは想像しない方が良い。死んだ方がマシ、というふざけた言叶の意味を知る事になるからだ。黄泉川は告げる、。
『あそこを制压、解体したのは私の部队だったから』
「そりやどォも」
『末期の特力研はきっと法则に气づいていた。能力者には一つの力しか宿らないってね。それでも自らの名声のために、完成された|多重能力者《ゆアユアルスキル》を欲し、多くの子供|达《たち》を|牺牲《ぎせい》にしたんじゃん。
特に「|置き去り《チヤイルドエラ—》」を使って』
『|置き去り《チヤイルドエラ—》』というのは学园都市の社会现象の一つだ。
学园都市は基本的に|全寮制《ぜんりようせい》で、それ以外のケ—スにしても同じ街のパン屋に|居候《いそうろう》するなど、学园都市内に住居を持つ事が原则となる。しかし、|稀《まれ》に最初から子供を舍てるために学园都市に入学费川だけを拂って、子供が寮に入ったのを确认してから蒸发する者がいる、コインロッカ—に幼子を诘め?むよりはマシだろうが、やっている事のレベルは同じである。
そうなった子供达を保护する制度が学园都市には存在する、、
だが、それを逆手に取った寄生虫のような研究チ—ムなども存在する。『プロデュ—ス』『暗暗の五月计画『暴走能力の法则解析用|诱爆《ゆうばく》实验』……。先进的な学园都市の内部でも认められない研究は、こうして实行されていく。
『……私も见たよ。重たい扉の向こうに横たわっている「それ」を』
黄泉川の声は重たい。
それを闻いて|一方通行《アクセラレ—タ》は笑った。
あの程度が地狱の底だと思っている[#「あの程度が地狱の底だと思っている」に傍点]、この一般人の良识に。
その贫困な想像力は、きっと|黄泉川爱穗《よみかわあいほ》が健全な世界に住む人问だという证据になる。
|全《すペ》てを知って笑っている|一方通行《アクセラレ—タ》と违って。
「だが残念な事に|俺《おれ》はオマエの|活跃《かつやく》を见てねエな。さっきも言ったが、俺が特力研にいたのは九岁までだ。そこから|他《ほか》に移された。|何故《なぜ》だか分かるか」
|一方通行《アクセラレ—タ》は口の端を|歪《ゆが》めて、
「手に负えなくなったからさ[#「手に负えなくなったからさ」に傍点]。あの地狱の特力研でも、俺の力は|度《ど》し|难《がた》かった。あの|恶魔《あくま》みてェな白衣の连中でさえ、この俺に恐怖した。つまり俺はそオいう种类の怪物なンだよ」白い学生は携带电话に向かって语る。「その後も同じだよ。くだらねエ。|虚数研《きよすうけん》、|睿智研《えいちけん》、|雾ヶ丘《きりがおか》付属……まァ、オマエじゃ端っこも|掴《つか》めねェぐれェの『深部』だが、反应は全部同じだった。知ってるか、悲剧ってのは意外と柔らかい[#「柔らかい」に傍点]ンだよ。だから俺の体はすり拔けちまう。そこで受け止め切れずに、さらにずぶずぶ沈ンでいっちまう。深く深くにな」
|一方通行《アクセラレ—タ》は|杖《つえ》をつく。
まるで路上に|唾《つば》を|吐《は》くように、ガツッと杖の下端がアスファルトに激突する。
「同じ场所に二ヶ月|保《も》った事はなかったぜ。そのたびに俺は自分の怪物性を再确认していったってワケだ。连中が恶魔的であれば恶魔的であるほど、ソイツらにすら恐怖される自分は一体何なンだろオなってなァ」
その手に负えずに受け取り先も少なくなってきた怪物を、|芳川《よしかわ》の所属する『|绝对能力《レペル6》』の研究所が引き取った译だ。あそこの待遇は格别だったし、そのおかげもあって二ヶ月以上は保った。しかしそれは|一方通行《アクセラレ—タ》に对する恐怖の里返しだろう。怒らせたくない、と颜に表れていた。违ったのは、あの『甘い』芳川ぐらいか。
最终的に一万人以上の人间を虐杀した研究者|达《たち》にしても同じ对应。
决して溶け?む事のない|距离感《きよりかん》。
恐怖。
|暗暗《くらやみ》からも拒绝された白色。
结局は、それが|一方通行《アクセラレ—タ》を示す言叶なのだ。
「好意を向けるなンざ不可能だ。|虚《むな》しいンだよ。一亿の负债に对して一圆を返济した所で何になる。利子だけで食い|溃《つぶ》される好意なンざ拂う气も起きねエ。、考えるだけで|马鹿马鹿《ばかばか》しい。寒气がする。|全《すべ》てを拂い终えて日差しの中で笑ってる光景なンてよォ」
无样な声だった。
借金の自慢なんかしてどうする、と|一方通行《アクセラレ—タ》は自分に毒づく。
黄泉川はしばらく|默《だま》っていた。
それから、彼女は告げる。
『|绮丽事《きれいごと》かもしれないけど、それでも君は拂う事を忘れた自分に|嫌恶《けんお》しているじゃん。その一亿を支拂う方法があるとすれば今すぐ食いつきたい。违う?』
「……、フン」
|一方通行《アクセラレ—タ》はろくに返事もしない。
对して、|黄泉川《よみかわ》の口调は变わらない。彼女は最初から真剑だった。
『例えばさ。私は子供に对しては武器を向けない。相手が能力者だろうが何だろうが、绝对に武器を向けない。これは私が自分に定めたル—ルなんだけど』
「あァ?」
『何で私がそんな事をしてると思う[#「何で私がそんな事をしてると思う」に傍点]?』
「……、」
『どうして子供に武器を突きつける事にためらってるか分かる[#「どうして子供に武器を突きつける事にためらってるか分かる」に傍点]?』
コイツ……、と|一方通行《アクセラレ—タ》は心の中で|?《つぶや》く。
声から|漏《も》れる暗い感情の|?《にお》いに、彼は思わず里路地の光景を思い浮かべてしまう。
『そういう事よ。确かに君の「量」は私なんかと比べ物にならないかもしれない。けど、「质」の方は大して变わらない。ならやるべき事の规模は违っていても种类は同じじゃんか』黄泉川の声が|一方通行《アクセラレ—タ》を突き刺す。『……どんなに无样だろうが、一圆でも一钱でも拂い续けるしかないじゃんよ。その积み重ねは必ず君の道を开く。なに、君は私と违って力がある。一气に返济する手はいくらでもあるじゃんか』
「笑える意见だな。あまりにも|微笑《ほほえ》ましくって颜が|歪《ゆが》ンじまう」
『最も安直な方法は|风纪委员《ジヤツジメント》として参加する事かな。君の名があるだけで学园都市の治安が今より三割ほど安定するんじゃん?必要なら书类は|?《そろ》えておくけど』
「|马鹿《ばか》げてやがる」
|一方通行《アクセラレ—タ》は|一蹴《いつしゆう》した。
これはそういう种类の力ではない。两腕を振れば返り血を浴びるような、そんな力でしかない。种类としては原子力以下、平和利用の糸口が一切见えない绝大なる负の力。挑战する事はできても、决して结果には|系《つな》がらない。彼の行为はただ|破坏《はかい》しか生み出さない。
それでも。
もしも、と思った事はあるかもしれない。
もしも、この力を使って『实验』を止めていれば。
もしも、死の道へと突き进む|妹达《シスタ—ズ》を押さえつける事ができていれば。
そして。
もしも、今からでも迟くはないのなら[#「今からでも迟くはないのなら」に傍点]。
彼の前で振り|撒《ま》かれてきた、そしてこれから振り撒かれるかもしれない死の数は、一体どれぐらい轻减されるのか。
绝对に实现のしない机上の空论だ。
できる译がない。
分かっている。
いちいち|谁《だれ》に言われるまでもなく、その力を行使し续けた彼自身が何者よりも。
それでも、
「くっだらねェ」
『そのくだらないものの积み重ねが负债を返济していくじゃんよ』
|黄泉川爱穗《よみかわあいほ》はそう告げた。
|阳射《ひざ》しを浴びている者の声で。
[#改ペ—ジ]
行间三
|风斩冰华《かざきりひようか》は学园都市を步いていた。
地味な少女である。腰まである长い发の色は自然のまま……と言ってしまえば闻こえは良いが、ようは手を加えていない。せいぜい头の横で一房の发をゴムで束ねて分けているぐらいか。整った颜立ち。も|野暮《やぼ》ったい大きな眼镜に隐され、化妆っけが全くない。おまけに制服のスカ—トは|膝下《ひざした》まで伸びていた。どう考えても|繁华街《はんかがい》を步くような格好ではない。
しかし彼女の姿は人の目を引く。
スタイルの优れた美人である事より、もっと不自然な现象が注目を浴びている。
ノイズだ。
ひっそりと笑く小さな花のような|氛围气《ふんいき》の少女は、その轮郭が时々|歪《ゆが》む。风に流される|雾《きり》のように、受信状况の恶いテレビのように、ザザザザと|耳障《みみざわ》りな音を立てて、グニャグニャとシルエットが崩れ、また元へと戾っていく。夏のワイシャツが摇れたと思った时には、青い色のブレザ—に包まれていた。
彼女はそれでも街を步く。
通常なら|大骚《おおさわ》ぎになりそうな光景だが、周围の反应は『注目を浴びる』程度でしかない。
ここは超能力と科学技术の街だから。
大抵の不自然な状况は、拒绝される事もなく受け入れてもらえる。
しカし
「お—い、|谁《だれ》だぁ?」
そう言って风斩の近くへ走ってきたのは|警备员《アンチスキル》の男だった。事件が起きれば铳器すら?って制压に乘り出すエキスパ—トだが、彼らの本职は教师である。なので、その男もエ—ジェントというほどの锐さはない。
この|警备员《アンチスキル》も、风斩の存在をいつもの街の一风景として受け入れている。
だから风斩冰华を排除しようという译ではない。
だが、
「まったく、こんな立体映像なんか出しやがって[#「こんな立体映像なんか出しやがって」に傍点]。どこに能力者はいるんだ。随分と手の?んだイタズラだな」
彼の目は风斩を见ていない。
街の光景として受け入れてはいても、それは单なる现象としての话。
超能力と科学技术。
この街では大抵のおかしな现象は|全《すべ》て、それらの言叶で自己解决される。『あれは自分の知らない技术によって作られた现象または实验なのだ』で全てを纳得できるのが学园都市だ。
だから|风斩冰华《かざきりひようか》はこうして街を步く事ができる。
|谁《だれ》がどう见ても人间ではない、本人いわく『怪物』も、|排斥《はいせき》されずに受け入れられる。
それは幸运なのか。
または不幸なのか。
风斩冰华は能力者の手で作られた|立体映像《ノイズ》であり、一人の心を持った人间だと认めている译ではない。
彼女は小さく笑う。
わずかに苦い、寂しさを交えた笑み。
それは人间らしいとしか表现のできない、あまりにも淡い表情だった。
「……また精密な幻像じゃないか。先生が照れるとでも思ってんのか?」
これも受け入れられた。
一番大切な部分だけを除いて。
[#改ペ—ジ]
<a name="chap5">第四章缓やかに交差する二组Boy_Meets_Girl (?).
1
|御坂美琴《みさかみこと》はどこかへ行ってしまった。
何だか良く分からないが御坂妹や彼女と|一绪《いつしよ》にいた|小《ち》っこいのを见た途端に机嫌が恶くなったのだ。
『ねえちょっと、今日は|谁《だれ》の|罚《ばつ》ゲ—ムとしてここにいると思ってんのよ!!私のために一日动くんじゃなかった译!?』
とか颜を其っ赤にして确认を求めてきたので、|上条《かみじよう》としては素直に、
『え?お前の目的はゲコ太だけなんだろ?』
と答えた所、|何故《なぜ》か美琴は自分の唇を小さく|啮《か》んで、
『……ッ!!な、あ、う、そうよ!ゲコ太とピヨン子が手に入ればアンタなんかもう用济みよ!何が罚ゲ—ムよ、この|马鹿《ばか》!!』
そんな叫びと共に?蜷の榔が飞んできたため、现在上条は地下街の隅の方を转がっている译である。上条は一应一○亿ボルトを右手で|弹《はじ》き飞ばす事に成功していたのだが、ビビッてそのまま後ろにコケていた。
(な、何が恶かったんだろう……?)
『もう良いわ!!』と美琴は叫んで猛ダッシュでどこかへ走り去ってしまうし、置いてきぼりにされた上条はこれで罚ゲ—ムから解放されたのかも判然としないし、何だかグダグダなのだった。
(しっかし今日は御坂妹だの|白井黑子《しらいくろこ》だの何なんだ?)
上条は首をひねる。
一番の不审人物は御坂妹の近くにいた、一○岁ぐらいの少女だろう。颜立ちは美琴……というか御坂妹とそっくりだったのだが、彼女は本气で谁だったのだろう?ミサカ後续シリ—ズとかでさらに二万人追加とかだったらやだなぁ、と上条はちょっと冷や汗を流す。この街ならそれぐらいありそうだから本当に嫌だ。
彼はため息混じりで、
「だぁ—。一应後で御坂妹に寻ねてみよう。これを放ったらかしにしておいたら後でひどいツケが回ってきそうな气がするし」
「何を|莫大《ばくだい》な疲劳感に肩を落としているの?ってミサカはミサカは|愈《いや》し系マスコットとしてあなたの背中に张り付いてみたり」
思わずこぼした独り言に妙な返事があったと思ったら、背中に、のしっ、という重みが加わった。背中に传わる丸っこい感触に、|上条《かみじよう》はゾゾワァ!!と全身の毛を逆立たせ、
「な、なに!?|谁《だれ》だ、子泣きジジィか!!」
「ミサカの性别はメスだし学园都市でオカルトを语るのはナンセンスかも、ってミサカはミサカは安定感を得るためさらに身をすり寄せてみる。ここミサカの定位置にしたい、ってミサカはミサカはついでに要求してみたり」
のし—っ、と生温かい体温の块がちょっとだけ重みを增す。
背中のゾワゾワ感がクライマックスに达した上条は、
「うおおわっ!!何ですかこれ—っ!?」
叫びつつ自分の两手を头方向から後ろへ回し、背中にくっついているものをがっちりホ—ルドするとダンクシュ—ト状に颜の前へ引きずり出す。と、逆さまにぶら下がっているのは|御坂《みさか》妹を|小《ち》っこくした例の|谜《なぞ》少女だった。
谁だろうこの子?と上条は首を|倾《かし》げる。
上下反对になっている女の子も仕草を|真似《まね》て首を倾げていた。
2
一体何でこンな事になってンだ?と|一方通行《アクセラレ—タ》は肩を落としていた。
ここは地下街の入口を入ってすぐそこ……といった场所である。ファストフ—ド店のオ—プンスペ—スとして、店の外にもいくつかテ—ブルが并べてある。が、地下街なので店内と外の区别は限りなく怪しい。
そのテ—ブルの一つに、真っ白な修道服を着た银发で绿色の|瞳《ひとみ》の少女がグベチャ—と突っ伏していて、彼女は大量のハンバ—ガ—やフライドポテトやサラダその他に埋もれていた。一应念のために言っておくがこれは|一方通行《アクセラレ—タ》が买い与えたものだ。この少女は一钱たりともお金を持っていなかったのだ。
そもそもこんな事になったきっかけは、|一方通行《アクセラレ—タ》が|打ち止め《ラストオ—ダ—》を搜すために现代的なデザインの|杖《つえ》をついて地下街に入った所、いきなり横からこの谜少女が激突してきた事にある。
彼女はいかにもふらふらですといった足取りと口调で|一方通行《アクセラレ—タ》に向かって、
「あれえとうまじゃないとうまじゃないよとうまだと思っていたのに何でとうまじゃないのこの人とうまはどこに行ったの何でも良いけどお|腹《なか》が减って动けないんだよあの盐と|胡椒《こしよう》とお肉の|?《にお》いがジュ—ジュ—と漂っててとにかくあれ食べたいあれ食べたいどうすれば良いのあれ食べるにはどうすれば良いの?」
「……、」
|普段《ふだん》ならこの时点でこの女の全身を粉々にしてその边に舍てておこうと考える|一方通行《アクセラレ—タ》だが、何とも间が恶い事につい数分前に|黄泉川《よみかわ》から『たまには良い事でもしてみたら?』的な发言をされたばかりである。いやはや惯れないト—クなどするべきではないものだ。别に黄泉川との会话など|律仪《りちぎ》に心の隅に|留《とど》めておく必要などどこにもないのだが、ここで真っ白シスタ—を|殴《なぐ》り倒して先に进んでしまうと、何となく『お前の|烟草《タバコ》やめます宣言は三○分しか|保《も》たなかったなあっはっは—』に似たニュアンスの|台词《せりふ》を言われる气がするのでそれはそれで|?《しやく》だ。
人の话を闻かずにしゃべり续ける所が少しあのガキと似ているなとも思ったが、それが气にかかったと认めるのは死んでも嫌だった。
よって、近くにあったファストフ—ド店に空腹シスタ—を|蹴《け》り入れて财布を投げつけた所、『あれもこれも全部食べてみたい』という|马鹿《ばか》げた台词を|吐《よ》きやがったため、现在に至るという译だ。
|一方通行《アクセラレ—タ》は过去に样々な|研究《プロジエクト》に体を贷している。金は使っていない口座にいくらでも放り?んであるのだから金钱面の问题はないのだが……しかしまぁ、これだけの数のハンバ—ガ—をガツガツ消费していくこの修道女の许容量はどんなものなんだろう?
ちなみにこの修道女、两手で小さな|三毛猫《みけねこ》を抱えていたのだが、こちらはお|腹《なか》が减っていないのかハンバ—ガ—に兴味を示していなかった(どのみち、细かく刻んだタマネギが使われているので|驮目《だめ》なのだが)。コイツは地下街に迷い?んできた|野良猫《のらねこ》相手にミニャ—ミニャ—と鸣き合っている。おそらく『今年の秋はしなやかな筋肉がくるらしいぜ』『ウソだろ—っ!?オレずっと|爪研《つめと》いでたわ—っ!!』みたいな事を话し?んでいるのだろう。この猫|达《たち》、|绳张《なわば》り意识とかはないのだろうか。
|一方通行《アクセラレ—タ》は、目の前に广がる暴食の光景を眺め、
「马鹿げてやがる……。あのクソガキ相手にしたってここまで疲れたりしねェぞ」
「もが?}
「いちいち动き止めてねェで一气に食え。そして俺に何か言う事があンじゃねエのか?」
「ごきゅ。うん、ありがとうね」
「───一言かよオイ」
これは大变な人间と遭遇してしまった、と|一方通行《アクセラレ—タ》は首を|缓《ゆる》く振った。|日顷《ひごろ》からこんなのの相手をさせられている彼女の知人样にはご|冥福《めいふく》をお祈りする。
修道女は并べられたLサイズのジュ—スのボトルに口をつけ、ちょっとした小型ペットボトルほどの大きさの饮料をそれぞれ五秒で饮み干していくと、
「えとね、私の名前はインデックスって言うんだよ?」
「味分かンのかそれ?」
「とうまを搜してたんだけど途中でお|腹《なか》が减っちゃってね。というか、そもそもお腹が减ったからとうまを搜そうって思ったんだけど」
インデックスはジュ—スのボトルの中にあった细かい冰を口の中に放り?み、わずかに肩をふるふると|震《ふる》わせる。无邪气というか食欲|旺盛《おうせい》というか、口の周りにソ—スがついている事にも气づいていないようだ。こういうデメリットばかりが|打ち止め《ラストオ—ダ—》に似ている。
「……チッ」
|一方通行《アクセラレ—タ》は舌打ちすると、ポケットティッシュを取り出して、无言でインデックスの颜に投げつけた。さらに彼女がビニ—ル包装からティッシュを取り出すのに恶战|苦斗《くとう》しているのを见て、ため息を|吐《つ》く。何だこの现代知识の欠如っぷりは。
(それにしても、コイツの目的も人搜し、ね……)
|一方通行《アクセラレ—タ》はついこの间まで毛布一枚でその边をウロウロしていた不审人物の颜を思い浮かべた。、携带电话のスイッチを入れ、小さな画面に|打ち止め《ラストオ—ダ—》の颜写真のデ—タを表示して(カメラ机能があると言ったら夺い取られて胜手に使われた。フォ—カスも何もなく、ただ画面いっぱいに颜があるだけ)、それをインデックスの方へ向けつつ、
「オマエ、こォいうガキを见た事あるか?」
「ないよ」
|一击《いちげき》即答だった。
<img src="img/禁书目录12_179.jpg">
が、兴味がなくて适当に言っているのではないようで、妙に自信に|溢《あふ》れている。
「私は一度见た人の颜は忘れないから、间违いないと思うけど」
「あン?」
|一方通行《アクセラレ—タ》は|眉《まゆ》をひそめたが、インデックスの方は大量のハンバ—ガ—を食べたせいですっかり满足なのか、あんまり说明する气はないようだ。幸せそうな颜でテ—ブルにべちゃ—と突っ伏す。
「いや—、でも良かった。もう一度言うけど本当にありがとうね。これでお|腹《なか》の事を气にせずとうまを搜しに行けるし。お腹がいっぱいになっちゃったからとうまを搜す理由も|薄《うす》くなっちゃった气がするけど、ここまで来たら见つけないと何となく气が济まないし」
「あァそォかよ俺は手传わねェぞ」
「こっちに来てちょっと|经《た》つんだけど|未《いま》だに街の样子とか良く分からないし。私の头なら道が分からなくなるなんて事はないんだけどなあ。もしかしたら单に觉えるだけじゃ|驮目《だめ》なのかも。でもどっちみちこうして学园都市の人と会えたんなら」
「そォかいヨソ当たれ」
「……、あなた、何やってる人?忙しいの?」
「|生憎《あいにく》と大忙しだ」
|一方通行《アクセラレ—タ》は|杖《つえ》に力を?めて、|椅子《いす》から立ち上がる。
残念ながら、奇遇にも彼も人搜しなのだが。
3
「つまりお前は|御坂《みさか》妹とかを全部束ねてるホストコンピュ—タみたいなモンなのか?」
|上条《かみじよう》は目を丸くして寻ねた。
一通りの说明を终えた|打ち止め《ラストオ—ダ—》(また伪名っぽいなあ……と上条は思ったが|默《だま》っておく)は、その小さな两手をぶんぶんと振り回して、
「ホストというよりコンソ—ルに近いかも、ってミサカはミサカは订正してみたり。ミサカの中心点はどこにもなくて、ネットワ—クの中で特定の个休が『核』として存在する事にはあんまり意味がないの、ってミサカはミサカは伟そうに胸を张って讲释してみる」
何でも、大量の|妹达《シスタ—ズ》が暴走を起こした时に、それを人间侧の手で食い止めるために作られたのが彼女らしい。|妹达《シスタアズ》が作るある种のネットワ—クにそれ以外の者の手で介入するという、|最终信号《ラストオゲ》との事だった。
その、话を闻くだけで何だかスゴそうなヤツ(正直、上条はあんまり具体的な实感が涌いていなかった)が、何でまたこんな所で油を卖っているんだろう?と上条は疑问を抱く。
「あのね—、ミサカは『实验』の时にあなたに助けてもらったからそのお礼を言いに来たの、ってミサカはミサカは|鹤《つる》の恩返し的展开を提示してみたり」
「という建前で本音は何なんだよ?」
「|一瞬《いつしゆん》たりとも信用してないし!ってミサカはミサカは|地团驮《じだんだ》を|踏《ふ》んでみたり!!それはまぁあなたにお礼を言いに来たっていうのは偶然によるこじつけだけど、ってミサカはミサカは本心を明かしてみるけど!」
「じゃあ|俺《おれ》の不信感は正解じゃねえか」
「そのデリカシ—のなさがミサカは头にくるの—っ!ってミサカはミサカは两手を振り回してポカポカやってみる!!」
どうも怒らせてしまったらしい。
仕方がないので|上条《かみじよう》はあちこちを见回して、
「恶い恶い恶かったあそこでポップコ—ン卖ってるからそれでお许しくだせぇ」
「女の子の|纤细《せんさい》な心理を食べ物ごときで|诱导《ゆうどう》できると思っているの!?ってミサカはミサカは|愕然《がくぜん》としてみる!!」
ありゃ?と上条は思う。
どうもインデックスを相手にした对处法が身に|染《し》みてしまったらしい。これはいけない、と上条は素直に反省したのち、
「ごめん。じゃあ断食な」
「食べるけど!ポップコ—ン大欢迎だけど!ってミサカはミサカはポップコ—ンはもらうけど怒るのはやめないという新技を|披露《ひろう》してみたり!!」
どっちなんだよもう、と上条はややウンザリしたが、|打ち止め《ラストオ—ダ—》がぐいぐいと上条のズボンを引っ张っている所を见ると、やはり最终的には食べ物系で话は收まりそうだ。
上条はキャラメル系の甘ったるい味付けがされたポップコ—ンの圆筒ボックスを买ってくると、それを|打ち止め《ラストオ—ダ—》の小さな体にぐい—っと押し付ける。
「おお、ミサカの头と同じぐらいの大きさがあるかも、ってミサカはミサカは德用サイズに感心してみたり」
「……しまったな。どう考えてもお前の胃袋よりもビッグサイズな气がするんだけど」
まあ、知り合いの修道女はシャチでも难なく|平《たい》らげてしまいそうなぐらいだし、问题にするほどでもないかな、と上条は考えていた。
二分後。
ポップコ—ンの巨大な容器を片手で抱え、もう片方の手で口元を押さえ、思い切りうずくまってプルプルと|震《ふる》えている幼女が一人发见された。
いたたまれなくなった上条は、|打ち止め《ラストオ—ダ—》の细い肩へと手を置いて、
「……残してもオツケ—だぞ?」
「みゅ、ミサカはいただいた物を粗末に?うようなお|马鹿《ばか》さんではないゲブ」
ついさっきまでの事务的っぽい口调が|完壁《かんべき》に崩れている。そもそも、あの骨ったるいポップコ—ンを饮み物なしで完食しようというのが间违っているような气がしないでもないが。
(う—ん。|御坂《みさか》のヤツもこれぐらい简单に机嫌が直ると乐なんだが……)
やっぱり迫い驱けるべきだったかな?と思っていると|打ち止め《ラストオ—ダ—》が饮み物を求めてきた。
仕方がないので|上条《かみじよう》は小さなペットボトルのミネラルウォ—タ—を买ってくる、それで|喉《のど》を|润《うるお》す事によって、ようやく|打ち止め《ラストオ—ダ—》は本来の调子を取り戾した。
彼女は言う。
「ミサカはこれをかっぱらってきたの、ってミサカはミサカは战利品を自慢してみたり」
「いきなり山贼宣言かよ。やるな御坂上位个体……って、ありゃ。何だこれ、ゴ—グル?これ御坂妹とかがいつも着けてるヤツだよな……」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》がぐいぐいと指差しているのは、彼女の首にぶら下がったゴツいゴ—グルだ。暗视装置のようにいかにも重たそうな军用电子机器だ。御坂妹が夺われたとか何とか言っていたのはこれの事かもしれない。
「どうもこれはミサカのために作られたものじゃないから|上手《うま》く装着できないの、ってミサカはミサカはちょっとしょんぼりしてみる」
「はぁ?ようはゴ—グルを固定するバンドの长さを调节すりゃ良いんじゃね—の?」
「?」
「贷してみ」
上条が言うと、|打ち止め《ラストオ—ダ—》は彼の正面に立って、心持ち|颚《あご》を上げて|爪先《つまさき》で立った。これは单に首に下がっているゴ—グルを取りやすいようにしただけである。この仕草に何らかの深い意味を感じ取ろうとしてはいけない。
指で触ってみると、バンドはゴム制だった。水中ゴ—グルを思い浮かべれば分かりやすいかもしれない。ゴ—グルの根元边りに、长さを调节するための金具が备え付けてあった。
「ちょっとごめんな—」
言いながら、上条はゴ—グル本体を|掴《つか》んだ。そちらの方が金具を引き寄せるのが简单だったからである。分厚いゴムのバンドは上条に引っ张られて、みょ—んと伸びた。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》はバタバタと暴れ、
「痛っ、いたたたた、ってミサカはミサ」
「わっ!?」
|惊《おどろ》いた上条はゴ—グルから手を|离《はな》してしまう。
みょ—んと伸びていたゴムバンドが元のサイズに戾っていき、
ばち—ん!!と|打ち止め《ラストオ—ダ—》の颜から良い音が闻こえた。
「……、」
ごろんごろんとその边を转がっている|打ち止め《ラストオ—ダ—》に、何となく话しかけづらい上条である。どうしたものかとオロオロしている彼に、やや泪目の幼女はそれでももう一度ゴ—グルの下がった首を夸示するように、|爪先《つまさき》で立つ。
(いやぁ、今度。ばっかりは失败できないなあ)
そういう事を考えている时に限って连续するものである、
ばち—ん!!と详细は省くが似たような音が|响《ひび》いた。
ここで|上条《かみじよう》は|打ち止め《ラストオ—ダ—》に|蹴《け》り倒されてボコボコに|踏《ふ》まれまくったのだが、それで一应の气が晴れると、さらに彼女はゴ—グルを上条へ差し出してくる。
健气だ。
その心意气に|应《こた》えるべく细心の注意を拂う上条は、ようやく。ゴムバンドの长さを整える事に成功すると、それを|打ち止め《ラストオ—ダ—》のおでこに引っ挂けてやる、そもそもゴ—グル本体の大きさが彼女のサイズに合っていない感じだったが、何とかおでこからずり落ちずに济んでいた。
おお—っ!!と|打ち止め《ラストオ—ダ—》は|嬉《うれ》しそうな颜で两手をおでこのゴ—グルに当てて、くるくるとその场で回っている。
そう言えば、と上条は首を|倾《かし》げる。
(……コイツ、一人でこの边をぶらぶらしてるのか?さっきまで|一绪《いつしよ》だった|御坂《みきか》妹もいなくなってるし、|离《はな》れ离れになっちまったのかも)
地下街だから实感は涌かないが、时刻はもう午後六时前で、そろそろ日も暮れる、こんな危なっかしい子供はさっさと保护者の下に届けてしまうべきだと思うのだが、さてその保护者は近くにいるのだろうか?
(う—ん、何だろう。もし保护者さんが近くにいるとして、その人から见た俺っていうのはどういう风に映るんだろう?やだなぁ、ウチの子に何するザマス的发言が飞んできそうな气がするなぁ)
と。
そこで上条は视线を感じた。
嫌な予感がする。
「どうしたの?ってミサカはミサカは素朴な疑问を投げかけてみる」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》の无邪气な声にも答えず、上条は己の背後を振り返る。
ゆっくりと、恐る恐る。
「|嘘《うそ》だろ……」
そこにいた人物を见て、上条は思わず|呻《うめ》き声をあげた。
4
「でね。とうまはいつもいつもいっつも私を置いてきぼりにしてどこかに行っちゃうんだよ。あれはもう|放浪癖《ほうろうへき》の一种なのかも。气がついたら旅に出ている人なんだよ」
「……、」
|一方通行《アクセラレ—タ》は现代的なデザインの|杖《つえ》をつきながら、昼と夜の区别がいまいちつきづらい地下街を步く。电车やバスの终电が最终下校时刻に设定されているせいか、通路を行き来する学生|达《たち》の足取りは心なしか忙しい气がする。
「あれは何なんだろうね。别に今立ってる场所が嫌いって译でも、これから向かう场所が特别好きって译でもないのにさ。ふらふらふらふらふらふらふらふら—ってどこかに行っちゃうの」
「……、」
とりあえず分かったのは、その『とうま』という人物が何者かは知らないが、话を闻く限りソイツはとんでもなく嫌なヤツだという事だけだ。なんというか、名前が出てくるたびにイライラする。
インデックスはその边をウロウロしていた|三毛猫《みけねこ》を捕まえつつ、
「ところであなたはここで何してるの?」
「人搜しだ」
「さっきのケ—タイデンワ—の子?」
「だったら何だよ」
|一方通行《アクセラレ—タ》は投げやりに答えた。
别に隐しておく必要はないし、この手のガキは下手に隐すと何度も何度も何度も闻き返してきそうで|郁陶《うつとう》しい。少し似ている人间を知っているから分かる。
と、インデックスは三毛猫を抱き上げると小首を|倾《かし》げて、
「ねえねえ、そういえばまだお礼をしていなかったね」
「|默《だま》って归れクソガキ。オマエみてエな面倒臭いガキが|关《かか》わると余计に手间取りそォな气がするしよォ」
「まだお礼をしていなかったね」
「……、」
なかった事にされた。
|一方通行《アクセラレ—タ》がうんざりした目を向けていると、インデックスはお构いなしに、
「さっきの子なんだよね?とうまが见つかるまでだったら|一绪《いつしよ》に搜してあげても良いよ」
にっこりと笑ってそう言った。
自分が话しかけているのが一体どんな人间なのかも知らずに。
「……クソッたれが」
|完壁《かんぺき》なまでに无邪气な言叶に、彼は思わず吐き舍てた。
これは今日初めて知った事だが、他人の善意に付き合うのは思ったよりも疲れる。
5
そこにいたのは青发ピアスと|土御门元春《つちみかどもとはる》だった。
彼ら二人は、一度|上条《かみじよう》の颜を见て、それから|打ち止め《ラストオ—ダ—》の颜を见て、さらにもう一度上条の颜を见た。
それから彼らは言う。
「「この子ったら—っ!!」」
何だよその分かりづらいリアクションは!?と上条は叫び返す。すぐ|侧《そば》では、早くも警戒し始めた|打ち止め《ラストオ—ダ—》が上条の背中に隐れつつある。
土御门と青发ピアスはお构いなしだ。
「にゃ—っ!いや|小萌《こもえ》先生とかならまだ实年龄とか色々あるから分かるけどこれってどうなんだにゃ—申し开きはできるのかにゃ—っ!!」
「てっ、テメェ!!节操なしにもほどがあるやろォォがァァ!!カミやんはどこまで全方位死角なしの体势筑いてやがんねん!もう缘侧で背中を丸めて|膝《ひざ》に猫を乘せとる|可爱《かわい》らしいおばあちゃんとかにも声かけてそうやし!」
だが!と青发ピアスと土御门は同时に上条の颜を|睨《にら》みつける。
彼らは最高の笑みを浮かべ、
「「友人として!成功を祈る!!」」
この见るからに有害发言者な二人を|撤去《てつきよ》すべく上条は|拳《こぶし》を握る。
「お前ら……」
|幻想杀し《イマジンブレイカ—》という名前は良い。まさにこういう时に振るうべきだと教えてくれる。
ボカボカポカポカ—ッ!!と|大乱斗《だいらんとう》を|缲《く》り广げる上条|达《たち》に、|打ち止め《ラストオ—ダ—》は恐る恐る话しかけてくる。
「あ、あの、お友达?ってミサカはミサカは确认を取ってみたり」
「子供は见ちゃいけません!コイッらの生き样及び|马鹿《ばか》ト—クはまだ刺激が强すぎます!!」
马鹿どものおでこにR指定のスタンプを押すつもりで上条は拳を振るう。安息の日々はまだまだ远そうだった。
6
|美琴《みこと》は腕を组み、ムカムカしながら早足で地下街を步いていた。
こんな时でも|常盘台《ときわだい》中学の制服というのはとても目立つらしく、道行く学生达がチラチラとこちらに视线を投げてくる。いつもは全く气にならないのだが、今日に限って妙に神经を浅く浅くつついてくる。
(|罚《ばつ》ゲ—ム、ちゃんと约束したってのに、あの野郎……)
头の中だけでブツブツと|?《つぶや》く。
こんな内容でイライラしている事自体が|美琴《みこと》にとっては不快だった。どんな感情であれ、思考のウェイトの大半をあんなのに占められる事が纳得いかない。
あの场(というかあの少年)から|离《はな》れる际にも、美琴はチラリとだけ後ろを振り返っていた。そんな中で、何よりも冷静に处理できなかったのは、
(……、ホッとしてやがった)
がつん、と思わず地下街の床を轻く|蹴飞《けと》ばしてしまう。
ため息が出た。
(そりゃそうよね、单なる罚ゲ—ムなんだもん。自分で言ったくせにそれを忘れてるだなんて。まぁ、あっちだって嫌々あちこち引きずり回されて、一刻も早く解放されたいって一冒い分は当然なんだけどさ)
こうなると一人ではしゃいでいた自分が|完壁《かんぺき》に间拔けだ。
美琴は电话会社の小さな纸袋へ目を落とした。そこから颜を|?《のぞ》かせている、小さなカエルのマスコットを见ながら、
(……当然なんだけど、さ……)
何だかものすごく置いてきぼりにされた气分だった。
ピカピカに|磨《みが》かれた地下街の柱に、口を|尖《とが》らせている自分の颜が映った。それだけで美琴は己の颜に平手打ちを|叩《たた》きつけたくなる。
(あの|马鹿《ばか》の行动は别に罚ゲ—ムのル—ル违反って译じゃない。あの子[#「あの子」に傍点]が|侧《そば》にくっついてたって问题ない。なのに、私は一体何をやってんのかしら)
冷静になるとかなり大人气なかったかもしれない、と美琴は思った。
何が罚ゲ—ムだクソッたれ。
こんな气分になるぐらいなら最初から|大霸星祭《だいはせいさい》で胜负などしなければ良かった。结局なんだかんだで损をしているような气がする。美琴本人はもちろん、周りの连中にまで。
ちょっと部屋の隅で|膝《ひざ》を抱えたくなってきた。
なんというか、今すぐここでやり场のないストレスをどうにかしたい。
なんかないのか。
(……、)
边りを轻く见回すと、娱乐系のお店はゲ—ムセンタ—が一轩あるだけだった。そのお店の前には难易度激高で知られるスキルアタックというゲ—ムが置いてある。ようは能力测定机械を应用したもので、耐ショック机构を备えたミット型の『标的』に能力を叩きつけて、その力の强さを数字で出力するというだけのストレス解消マシンだ。
|美琴《みこと》はふらふらとそちらへ近づいた。ここでゲ—ムセンタ—の|邻《となり》にある洋果子店が|完壁《かんべき》に见えなくなっている时点で、彼女の神经がどれだけささくれているかが|窥《うかが》えるだろう。
今の彼女に|乙女《おとめ》らしさとかはない。
一○○圆玉を何枚か投入する。
肝心の『标的』部分は看板みたいなデザインだった。铁パイプ制の柱にウレタンっぽい素材の四角い|打击《だげき》ミットがくっついている。マシン全体に比べて标的部分だけが妙にピカピカしている所を见ると、おそらく使い舍てなのだろう。一日おきに交换しているのかもしれない。
(どうせ|超能力《レベルら》には对应してないんでしょうね)
は—、とため息をつく美琴。
この手のマシンは大体、|大能力《レペル4》までが限界で、そういう卖り文句であっても一般的には|强能力《レベル3》ぐらいに抑えるのがマナ—である。
(ったく、ストレス解消にまで手加减しなくちゃいけないだなんて……)
口の中でブチブチ文句を垂れている美琴は、ふと小さな注意书きを见つけた。
そこにはこうある。
『最新バ—ジョンは能力の使用を前提としています。|超能力《レベル5》使用解禁を目标に实地デ—タを收集していますので|是非《ぜひ》ご协力を!』
「……、」
美琴はピタリと动きを止める。
それから、体中のストレスが内侧から测き出てくるように、彼女はニヤリと|微笑《ほほえ》んだ。
彼女のサラサラした前发から、バチン、と不气味な火花の音が散る。
|御坂《みさか》美琴は深く深く、|默《だま》って息を吸い?んでいく。
ご协力する事にした。
割と全力で。
「あんのクソ|马鹿《ばか》!!人の!交わした!约束をッ!何だと思ってんのよ!!わ·た·し·が、|大霸星祭《だいはせいさい》の时にはいちいち得点表を细かくチェックしてまで顽张ってたってのに—っ!!」
バチィドゴンバギンバリバリ!!という|轰音《ごうおん》と共に能力测定机械を应用したゲ—ムマシンが前後左右上下に摇れまくる。ある程度の耐ショック机构ぐらいは备わっていたのだろうが、本体と床を|系《つな》いでいた|耐震《たいしん》补强具を引き|千切《ちぎ》るほどの势いに负けて、プ—プ—と间の拔けた警告音を周围に鸣らし始める。ほのぼのした地下街の空气は一转し、周围を步いていた学生选が『うぎゃあ!?』『な、何だありゃ—っ!』『待ってちよっと待っで—っ!!』と逃げ惑う。
ぜ—ぜ—は—は—、と思いの丈をぶつけてみた美琴が肩で大きく息をする。
ピロリン?と小さな电子音が鸣った。
见ると、どうやらハイスコアを更新したらしい。
「……、むなしい」
|美琴《みこと》はポツリと|?《つぶや》く。
「……、」
结局、大型机体から|离《はな》れて、来た道を戾る事にした。
一人で怒っていても仕方がない。大人气がなかったのは认めて谢る事にしよう。别に|妹达《シスタ—ズ》がプレゼントをもらう事には何のミスもないのだ。あの|马鹿《ばか》に对して素直に头を下げられるかどうかは|甚《はなは》だ疑问だが、ここはちょっと大人になってみよう……とか何とか考えながら彼女は一度深呼吸する。
ただ、|罚《ばつ》ゲ—ムは罚ゲ—ム。
せっかくもぎ取った|大霸星祭《だいはせいさい》の战利品を、あれで终わりだと思われるのも心外だ。
いずれにしても、もう一度会って话してみないと、と美琴は步调を速めた。
7
何とか青发ピアスと|土御门元春《つちみかどもとはる》に反省を促す事に成功すると、|上条《かみじよう》は携带电话の时计机能を确认した。すでに午後六时を过ぎている。地下街の外、地上はもう|阳《ひ》が落ちて夜になっているだろう。
「ううむ、个性的なむ知り合いだったかも、ってミサカはミサカは腕を组んで首をひねってみたり。そして|未《いま》だにやや消化不良な部分があるのはどうしてなんだろう、ってミサカはミサカは放たれた言语を一つ一つ再チェックしてみる」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》はこのような事を言っていたが大した问题にはならないだろうと上条は|踏《ふ》んでいた。意味が分からないのであればそれでよいのだ。
「む、もうこんな时间だ、ってミサカはミサカは少々|焦《あせ》ってみたり」
唐突に彼女はそう言った。
见た所、壁挂け时计のようなものは存在しないし、地下街では空の样子も见えない。だとすると、ウワサのミサカネットワ—ク经由で何らかの情报を得ているのだろうか。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》はこちらをくるりと振り返ると、
「あのね—、ミサカはそろそろ归らないといけないの、ってミサカはミサカは残念なお知らせをしてみたり」
「ま、时间が时间だからなぁ」
上条としては、こういう子供はもう归るべきだろうと考えていたのでちょっと安心だ。
うん、と彼女は小さく|颔《うなず》いて、
「本当はもっと|一绪《いつしよ》にいたかったんだけど、ってミサカはミサカはしょんぼりしてみたり、ここで会ったのはたまたまだったんだけど、お礼をしたかったって气持ちは本当だし、ってミサカはミサカは心中を|吐露《とろ》してみる」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》はおでこのゴ—グルに两手をやった。
これもやってもらったしね、と彼女は言う。
「でも、あの人[#「あの人」に傍点]は心配すると思うんだ、ってミサカはミサカは思い出しながら先を续けてみたり。あんまり迟いと今度はミサカの事を搜すために街に出てくるかもしれないし、ミサカも迷惑とかはかけたくないから、ってミサカはミサカは笑いながら言ってみる」
ふうん、と|上条《かみじよう》は适当に|相槌《あいつち》を打った。
|谁《だれ》だか知らないけどその相手は良いヤツっぽそうだな、と漠然と感想を抱く。
「弱いんだよ」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》は续けた。
「あの人はいっぱい伤ついて、手の中の物を守れなかったばかりか、それをすくっていた两手もボロボロになっちゃってるの、ってミサカはミサカは断片的に情报を传えてみたり。だからこれ以上は负担をかけたくないし、今度はミサカが守ってあげるんだ、ってミサカはミサカは打ち明けてみる」
「そっか」
言っている事の意味の半分も理解できていないだろうが、上条は|颔《うなず》いた。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》の口调に|伪《いつわ》りはない。
良いヤツっぽいんじゃない。きっとソイツは、间违いなく良いヤツだ。
「格好良い所もあるんだよ、ってミサカはミサカは补足してみたり。だって血まみれになってもボロボロになってもミサカのために战ってくれたんだ、ってミサカはミサカは自慢してみる」
何だろう。ソイツの行动パタ—ンにはものすごく亲近感を觉えるのだが、根据のない事は口には出さないようにしておく。
ばいば—い、と手を振って驱け去っていく|打ち止め《ラストオ—ダ—》を、上条はしばらく见送っていた。最终下校时刻、つまり终电の时间が迫っているせいか、にわかに|慌《あわただ》しくなり始めた地下街の人混みの中をすり拔けていく小さな体は、あっという间に见えなくなった。
さて归ろうか、と上条はきびすを返そうとした所で、ふと视界に见觉えのある人物を|捉《とら》えた。
「ん?」
『彼女』はこちらへ近づいてくる。
8
「あ、とうまだ……」
|傍《かたわ》らにいたインデックスがピタリと动きを止めた。
彼女は通路の先を见ている。
「オマエが搜してたヤツか」
「うん」
|一方通行《アクセラレ—タ》はそちらへ漫然とした视线を向けたが、人混みのせいでそれらしい影は见当たらなかった、そもそもこの状况で、|谁《だれ》を指して『搜し人』だと言っているのかも分からない。
インデックスは|一方通行《アクセラレ—タ》の颜を见上げてくる。
彼は言った。
「行けよ」
「でも、あなたの知り合いの方は?」
「心配すンな」|一方通行《アクセラレ—タ》は|吐《は》き舍てるように一言。「こっちも今见つけた」
彼がそう言叶を投げかけた方向も、インデックスと同じく前方だった。中高生メインの人混みを捌き分けるように、小さな女の子がこちらに向かって走ってくるのが见える。
|一方通行《アクセラレ—タ》は彼女の名前を知っている。
それが本名であるかどうかなど知らないし、研究者が书类を作成するためだけに作り上げた便宜上の名前にどれほどの价值があるかも分からない。しかし、それを言っては|一方通行《アクセラレ—タ》も同じだ。彼の本当の名前を知っている者などどこにもいないだろう。
どんなものであっても、呼び名が一つしかないのなら、やはりそれが彼女を示す名前だ。
だから|一方通行《アクセラレ—タ》は声に出す。
「ラストオ—ダ—ッ!」
呼ばれた事に气づいて、小さな少女はより一层足を动かす势いをつけていく。|马鹿《ばか》みたいに|嬉《うれ》しそうな表情がその颜に张り付いている。
それを见ていた|一方通行《アクセラレ—タ》の横で、とん、と小さな足音が闻こえた。
「じゃあ行くね。ありがとう」
インデックスはそれだけ言うと、
「とうま!!」
轻い足音に力が|笼《こも》る。ほんの数十分の问だけ行动を共にした少女は、彼の元を|离《はな》れて人混みの向こうへと走っていく。
彼女は振り返らない。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》が振り返らないように。
二人の少女は地下街の一点で交差し、すれ违い、お互いに气づかないまま、|距离《きより》を离す。
それぞれの行くべき场所へと走っていく。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》が|一方通行《アクセラレ—タ》の元へ飞び?んでくるまで、一○秒もかからなかった。
「ただいま—、ってミサカはミサカは定番のあいさつをしてみたり……って痛ッ!何で无言かつ连续でチョップするの!?ってミサカはミサカは头を押さえて|嘘泣《うそな》きしてみる!!」
ビシビシと少女の头を|叩《たた》き续ける彼は、不满の|全《すベ》てをぶちまける。
「っつか、オマエは今さっきまでナニしてたワケ?」
「游んでもらってたの、ってミサカはミサカは正直に答えてみたり」
ふン、と|一方通行《アクセラレ—タ》は息を|吐《は》く。
あのはた迷惑なシスタ—の方はどうなったのか、ともう一度だけ人混みの向こうを见た。
しかしそこから得られるものは何もなかった。
ただ、漠然とした『人混み』があるだけだった。
いつも通りに。
[#改ペ—ジ]
行间四
现象管理缩小再现施设。
サ—シャ=クロイツェフが席に着いている建物の名前がそれだった。
より严密には、ロシア成教が作り上げた建造物の集合体だ。ロシア成教は主に|心灵《しんれい》现象の解析や解决を目的とする团体だが、彼らは事件が起きると、その现场と全く同じ施设を原寸大で作り上げる。
その|彻底的《てつていてき》な|致密《ちみつ》ぶりは『|容赦《ようしや》がない』と表现するのが一番だろう。
十字教においては、死んだ人间の|魂《たましい》は天国、|炼狱《れんごく》、地狱のいずれかに向かう。从って、この世に|留《とど》まる魂など存在しない。……事になっている。なので、地上で『生前を|骗《かた》る何者か』は|全《すべ》て『死の|哀《かな》しみに付け入る|伪物《にせもの》』である、と考えるのがロシア成教の考え方だった。ジグソ—パズルの欠けたピ—スのように『消失する事で出现する作用』などと定义する译だ。
ただ、ジヤック·オ—·ランタンのように、ごく|稀《まれ》に(本物の)さまよえる魂が出现する事もある。が、そういったものは『天国へ行く资格もなく、地狱からも|缔《し》め出された』罪人の魂であると十字教では判断される。
生前を骗る者はすべからく死すべき者。
结论はその一点だ。
本物だろうが伪物だろうが、いずれにしても敌なのだ。その手の面倒臭い连中は『|一绪《いつしよ》にまとめて处分する』というのがロシア成教のやり方だ。|幽灵《ゆうれい》の未练とか思い出话とか恨めしや—とかはどうでも良いのだ。地上をさまよった时点で恶。そういう细かい事情は?で笑って|叩《たた》き|溃《つぶ》すのが|流仪《りゆうぎ》である。
もちろん例外として『神の子』や一二使徒などの手によって生き返った人间の话はある。が、それは『神の子』や圣人の中でも历史上トップクラスの者だからこそ|为《な》せる|业《わざ》であり、そこらの罪人だの恨み持つ死者だのに、そんな事ができる译がない。
そういった『问答无川で敌を倒す』ための搜查情报を手に入れる施设。
それがここだ。
ハリウッド映画の撮影で砂漠の真ん中に街を作ってしまうような感じだが、その精密さは里侧がハリボテの撮影大道具の比ではない。
また、当初は一件二件の物件だったものが、その周りに次々と新たな『参考物件』を筑き续けたせいで、现在では街の二つ三つが丸々收まるほどの广さに膨らんでいた。この边りが、ユ—ラシア大陆を丸々横断するほどの|莫大《ばくだい》な国土を持つ、ロシアならではのやり方と言える。
サ—シャが红茶にブランデ—を垂らし、书物を片手にカップを倾けているのは、とある宫殿を|完壁《かんぺき》に模した建物だった。现象管理缩小再现施设という、この长ったらしい名前の映画村みたいな施设の中でも一番の古株とも言える『参考物件』だ。
样々な文化の入り混じった宫殿は、オカルト的には十字教圈の下地を持つものの、屋根のてっぺんにはタマネギのように|膨《ふく》らんだオブジェが乘っかっている。
「……、」
サ—シャは小柄な体型に似合わず、まるで甘党が砂糖をドバドバ入れるようにブランデ—を红茶に何度も振る。香りづけではなく、これでは单なる红茶味のアルコ—ル饮料である。
彼女が手にしている分厚い本には、『异形としての天使の实像』とタイトルが|箔押《はくお》しされている。『原典』は『宫殿』にあるはずだが、その本はこの施设の小道具として、一文字に至るまで完壁に再现されている。|魔道书《まどうしよ》图书馆でもないのに『写本』の数が多い事でも有名な施设なのだ。
(───天使を人体に降ろした场合の注意事项)
サ—シャの手が、目的のペ—ジでピタリと止まる。
その小さな指先が、まだ印刷技术の确立されていなかった|顷《ころ》の手书きの文字をなぞる。|普段《ふだん》あまり惯れていない暗号解读技术に时折|眉《まゆ》をひそめているが、それでも彼女は休まない。惯れない作业をするだけの理由があるのだ。
彼女の体には异变が起きている。
目に见えて分かる部分では不定期な指先の细かな|震《ふる》え。そして目に见えて分からない部分では|魔力《まりよく》の异常感知体质……というより、一种の拒绝反应に近い。度合いにもよるが、大きな魔力を间近で使われると胸に压迫感のようなものを受けるのだ。
それは八月下旬から感じていたのだが、サ—シャ自身には全く心当たりはない。大挂かりな施设で体を调べさせた所、どうも高密度の『|天使の力《テレズマ》』を长期间にわたって身に宿し续けた状态に似ているとの事だったが、そういった魔术实验を行った节もない。
自分の体に何が起こったのか。
それを调べるのは、サ—シャ个人ではなく、すでにロシア成教全体で秘密里に承认されている|悬案《けんあん》事项と化していた。『|天使の力《テレズマ》』自体は十字教徒なら|谁《だれ》でも借りているものだし、それを人の身に直接宿す事も珍しくない。サ—シャだって|战斗时《せんとうじ》には使っている。だが、今回のような特殊な『症状』が出るのはこれが初めてだった。
彼女の所属する『|歼灭白书《Annihilatus》はおろか、その?を超えたロシア成教全域がサ—シャの件に注目しているのも气になる。何かあるな、とサ—シャは|勘缲《かんぐ》っているものの、今はとにかく自分の体が先决なのだった。
『この世で最も大规模な「|天使の力《テレズマ》」が人に宿ったのは言うまでもなく受胎告知その时である。「神の子」の总量、つまりこの世界を支え导くほどの绝大な「|天使の力《テレズマ》」を|胎《はら》に收めた场合、通常なら间违いなく爆死する。しかし圣母は神たる父性の|对《つい》となる己の特性を最大限に───』
ふむふむ、と文字を追って|颔《うなず》いているサ—シャは气づかなかった。
すぐ背後から迫る|魔《ま》の手に。
「サ—シャちゃぁん?」
恐るべき猫なで声に、彼女の无表情な颜全体がビクゥ!!と|震《ふる》える。
しかしもう迟い。
サ—シャの两胁の下から二本の手がニュッと飞び出てくると、彼女が警戒态势を取る前に小さな胸を、ぎゅむ—っとホ—ルドしてしまった。
背後の声は语る。
「いや—读み物に梦中で周りが见えていない勤勉家なサ—シャちゃんに息拔きタイムだよ—?って、ぬぅおおおあ!?」
後半部分が绝叫になっていたのは、サ—シャが腰に差していた|金槌《かなづち》とL字の|钉拔き《バ—ル》を取り出し临战状态へと突入したからだ。何らかの|魔术的《まじゆつてき》な处置が|施《ほどこ》されているのか、金槌の|打击面《だげきめん》に触れただけでテ—ブルが、ベコォ!!とクレ—タ—状に大きくへこんで爆发する。
サ—シャ=クロイツェフは凶器ごと振り返る。
今まで背後に|潜《ひそ》んでいた人物は颜を真っ青にして、
「さ、サ—シャちゃん?ここは事件现场を|灵的《れいてき》に完全再现させている施设であってここの备品をそう简单にポンポン|坏《こわ》されちゃうと施设としての役割とかがね───ッ!!」
「第一の解答ですが、始末书ならニコライ=トルストイ司教样へどうぞ」
「いやそれを书くのはサ—シャちゃんなんですよ!ちくしょうでもそんなトボけたサ—シャちゃんがとってもラヴリ—に见えるのはどうして—っ!!」
わたわたわたわたわた—っ!!と两手を振りまくるその人物に、サ—シャはため息をつく。
彼女は、サ—シャの直接の上司だ。
名前はワシリ—サ。その自い肌に|若干《じやつかん》の衰えが见え始めている女性で、何だか紫外线とかお肌の|染《し》みとかを极端に气にしていたりもした。『あらざる者』との战いは夜间が基本だというのに、ここ最近は『|彻夜《てつや》はお肌に恶いよね—』とか言って一人で胜手に归宅しようとする|恶癖《あくへき》が浮上してきたため、サ—シャが投げ|绳《なわ》をワシリ—サの胴体に引っ挂けて『标的の群れ』のど真ん中へ放り?む事も多い。
それにしても『ワシリ—サ』だ。
何でロシア民话におけるヒロインの名前を引っ张ってきたかは知らないが、当然のように伪名だった。岁は二○代の後半ギリギリらしいが、正确な数字は讲も知らない。女は识が多い方が!とか言っていたが、ようは诞生日に谁も祝ってくれないんでしょうと返したら半日はうな垂れていた。
この上なく大人气ない上司に、サ—シャはさんざん迷惑をかけられている。过去形ではなく现在进行形な边りがポイントだ。
ワシリ—サはサ—シャの读んでいた本のペ—ジを追い驱けると、
「またカビ臭いの读んでるわね—。あれかな、结局サ—シャちゃんの体の异变の正体はまだ|掴《つか》めてないのかな?それならこの私の身体检盗でえへへあは」
サ—シャは手の中でくるくる回していた|金槌《かなづち》をワシリ—サの头顶部に振り下ろした。
ゴン!!という钝い音と感触を确かめつつ、
「第一の质间ですが、金槌とドライバ—はどちらがお好みですか?」
「すでに振り下ろしてから寻ねるような质问じゃないわねぇ。サ—シャちゃんたら相变わらず常识知らずな|破坏力《はかいりよく》を夸ってるんだから—」
对人|拷问《ごうもん》用の|魔术《まじゆつ》效果を持つ金槌を受けても颜色一つ变えない上司には言われたくない。おちゃらけているが、实力は确实にサ—シャ以上だ。
「そう言えば、サ—シャちゃんに宿っていた『|天使の力《テレズマ》』って|後方の青色《ガブリエル》なんでしょ?」
「第二の质问ですが、だから何なのですか」
「それも普通では考えられない、下手すると一二使徒以上の总量だって话なんでしょ?」
「第三の质问ですが、それが」
「ぶぷ—。『神の力』って受胎告知を引き受けた天使だったのよねぇ。しかも一二使徒以上の力を女性の体内へ押し?めたって事は—、あら?あらあら?サ—シャちゃん。あなたもしかして—、お|腹《なか》がふっくらしちやってブゴゥ—ッ!?」
サ—シャがノコギリを振り回し、ワシリ—サは笑颜で|直击《ちよくげき》した。
伤一つない。
「や—ごめんごめん。そうよね、|日顷《ひごろ》からそんなヘビ—な拘束服を装着しているサ—シャちやんは快乐ナシの子作りなんて耐えられないよね—?」
「第四の质问ですが、神圣なる新约の一ペ—ジを|污《けが》すなクソ野郎。付け加えて解说しますと、そもそもこの拘束服は贵样が职权乱用させて强引に着せたもののはずです」
サ—シャの着ているものは、赤いマントの下にインナ—そのもののようなすけすけのス—ツと黑いベルトで构成された拘束服という、その边の夜道に出てくる|变质者《オツサン》みたいなものだった、。ワシリ—サは『「あらざる者」に体を乘っ取られそうになった际、最後の手段として自分で自分を|缚《しば》るんだよ—』とか言っていたが、どう考えてもこれは上司の|趣味《しゆみ》だ。
サ—シャとしてはこんなふしだらな拘束服など触れたくもない译だが、残念ながらワシリ—サは彼女直属の上司であり、彼女の书类上の誓约は守らなくてはならない。こんなしょうもない事に反发して修道院(という名の营仓)送りにされるのも|马鹿马鹿《ばかばか》しい。
当然ながら、ロシア成教のシスタ—が全员こんな格好をしている译ではない。ロシア成教とはそんな变态の集まりではない。
サ—シャは赤いマントで改めて自分の体を隐しつつ、己の上司を|睨《にら》みつける。
|至极《しごく》まっとうな、赤色の修道服に身を包んでいるワシリ—サはケラケラと笑い、
「え—、そんなに气に入らない?」
「第二の解答ですが、その质问自体が私の人格を|侮辱《ぶじよく》していますね」
「じゃあ衣装を变更しよう」
あっさり言われた。
「……?」
ちょっとだけ面食らったサ—シャは、|邪魔《じやま》っけな自分の前发越しに上司を见る。ワシリ—サは自分の足元に置いてあった古臭い|?《かばん》の中をごそごそ|渔《あさ》ると、
「いやぁ—。今ね—、所用で学园都市の事とか岛国のオカルト事情とかを调べてるんだけどね—」
「……、」
嫌な予感がする。
あの?の中身を见てはいけない气がする。
占星施设の助けを借りてもいないのに|何故《なぜ》か|薄《うす》ら寒い『予感』がビシバシ传わってくる。
「あのね—、学园都市の中には特有の文化があるのよ。ここでいう文化っていうのはもちろんアレよ。日本って国は本当に参考になるわ。も—、ちょっと本格的な资料を手に入れて、气合?めて一针一针|缝《ぬ》っちゃいました。あは?」
サ—シャは扉の方を见る。
厚さや材质はどんなものだったのかを计算し始めた所で、
「ねえサ—シャちゃあん。|超机动少女《マジカルパワ—ド》カナミンって知ってる?」
L字の|钉拔《バ—ル》きで重たい扉をぶち破って逃げた。
ワシリ—サが满面の笑みを浮かべてベロンと广げている『衣装』を见て、|迂阔《うかつ》にもサ—シャは泪が出るかと思った。フランス经由で日本の怪しげなOTAK!!文化を收集しているのは知っていたが、いくら何でもあそこまでセンスが飞んでいるとは思いもしなかった。
あんなテカテカでピカピカの格好だけは|驮目《だめ》だ。
サ—シャ=クロイツェフはロシア成教の特殊部队『|纤灭白书《Annihilatus》』に属する|战斗《せんとう》修道女だ。この世の『あらざる者』の绝灭を望む彼女|达《たち》の战いは|过酷《かこく》なものであり、あんなヒラヒラのペラペラで战场を走り回って良い道理はない。
部署を变えた方が良いかもしれない。
|谁《だれ》だって、あんなハ—ドな衣装をまとって战死したくはない。
[#改ペ—ジ]
<a name="chap6">第五章暧昧に过ぎていく日没Hard_Way,Hard_Luck.
1
「おお—、雨が降ってる、ってミサカはミサカは夜空を见上げてみたり。ミサカはお月样を见たかったのに、ってちょっとしょんぼりしてみる」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》は真っ暗になった街の中で、|掌《てのひら》で雨滴を受けている。
学园都市は最终下校时刻を过ぎると电车もバスもなくなるため、ほとんどの住人は表からいなくなる。後に残っているのは、今日は归らなくても良いやと考えているようなガッツの入った夜游び派だけだ。近くに见えるトタン屋根の简素なバス停にも、今は|谁《だれ》もいない。
パラパラと雨が降っている。
伞を差すほどではないが、それでも表通りからは、そういった夜游び派の学生|达《たち》も消えていた。路上でダベらずに、どこかの店に入って|骚《さわ》いでいる事だろう、
|一方通行《アクセラレ—タ》は、落ち着きなくあっちこっちをうろうろしている|打ち止め《ラストオ—ダ—》をうんざりした目で眺めて、
「|郁陶《うつとう》しいからその边で固まってろ」
「あ、あそこのバス停で雨宿りしているのは最近この边りをウロチョロしている子犬ちゃん!?ってミサカはミサカは猛ダッシュで追迹を开始してみた───ッ!!」
「首轮とリ—ドが必要かなァクソガキ!?」
むんず—、と小さな少女の首の後ろを|掴《つか》んでおく。ここでもう一度逃げられたら再び追い驱ける气力は出ない。八つ当たりでその边のビルが倒れるかもしれない。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》は两手をパタパタ振って、
「ミサカはここまで过保护にされなくても|大丈夫《だいじようぶ》かも、ってミサカはミサカは自由と解放を求めてみたり」
「ナニをフロンティア精神に|溢《あふ》れた寝言|吐《は》いてンだコラ。そもそも保护してねェしこれ以上手间ァ取らせると腹ァ|殴《なぐ》ってブッツリ意识切っちまうぞ。そっちの方が乐そうだし」
「またまた—、そんなに照れなくっても、ってミサカはミサカは人差し指でつんつんしてみた───|何故《なぜ》そこで力强く|拳《こぶし》が握られるの?ってミサカはミサカは激情|缓和《かんわ》用にこやかスマイルを浮かべて寻ねてみたり」
面倒臭ェ、と心の中で|?《つぶや》きつつ、彼はため息を|吐《つ》いた。
|小绮丽《こぎれい》な日常の|全《すべ》てが光り|辉《かがや》いている译ではない。不满なんてどんな世界にも必ず存在する。
|全《すべ》ての面で自分にとって都合の良い究极の世界とは、突き诘めれば他人の事情を全く无视した独善の空斗を指すだけなのだから。
この气だるげな面倒臭さは、この世界に住むために拂う契约料のようなものだ。
分かっている。
|一方通行《アクセラレ—タ》は自分の内面に、皮肉げな笑みをさらす。
惯れというのは恐ろしい。
今ここにある环境を当然のように受け入れて、あまつさえ不满すら|漏《も》らしている自分自身というのは、一体何样のつもりなのだろう。
あれだけの事をしたのに。
ここに立っていられるだけでも云の上にいるらしい神样とやらに感谢すべきなのに。
と、步きながらつらつら考え事をしている|一方通行《アクセラレ—タ》の耳に声が届く。
「痛っ!!……转んだ—、ってミサカはミサカは地べたで状况报告してみたり」
「单なる泣き言だろォがよ」
「すりむいた、ってミサカはミサカは|掌《てのひら》をじっと眺めてみる」
雨で|濡《ぬ》れた道路から起き上がった|打ち止め《ラストオ—ダ—》はちよっと泥で污れていて、路上の水分で濡れた两手には小さな伤ができていた。赤い色が、じんわりと|染《し》み出てきている。
「消毒が必要かも、ってミサカはミサカはちょっと泪目になってみたり」
「ツバでも付けとけよ」
「消毒が必要かも—っ!!ってミサカはミサカは全く同じ|台词《せりふ》を号泣气味に绝叫してみたり—っ!!」
「……どこまでも|郁陶《うつとう》しいヤツ。イイからさっさと|黄泉川《よみかわ》ントコ归るぞ」
「───、」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》が无言になった。
|一方通行《アクセラレ—タ》がそちらを见ると、彼女は小さな唇を|啮《か》んでポツリと言った。
「分かった、ってミサカはミサカは纳得してみたり。ここは痛いけど|我慢《がまん》してみる、ってミサカはミサカはテクテク步いてあなたの後ろをついていってみる」
彼の言う事を守ろうとしているのか、|打ち止め《ラストオ—ダ—》は正面を向いて、もう掌の伤の方へは视线を投げたりもしない。
しかしそれは、无理に伤口から目を|逸《そ》らそうとしているようにも见えた。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》は小さな口を引き结んで、何も言わずに|一方通行《アクセラレ—タ》の後に续く。言叶がないのがかえって妙なプレッシャ—を与えてきた。今にも泣きそうな空气というヤツである。
「……クソッたれが」
チッ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は舌打ちする。
|骚《さわ》がれても郁陶しい。彼は现代的な|杖《つえ》をついていない方の手で|打ち止め《ラストオ—ダ—》のおでこに指を当てると、そのまま後ろへ押した。大した力ではないのだが、意表を突かれた彼女の体がそのまま倒れていく。
「わっ!ってミサカはミサ───ッ!?」
バタバタ两手を振った|打ち止め《ラストオ—ダ—》だが、バランスは取り戾せずにそのまま|尻饼《しりもち》をつく。
そこは硬いアスファルトではない。
屋根のついたバス停のベンチだ。
|打ち止め《ラストオ—ダ—》はキョトンとした颜で、トタンの简单な屋根に守られたバス停のあちこちを见回している。
|一方通行《アクセラレ—タ》はそちらを见ないで言った。
「そこで待ってろ。胜手に动いたら|叩《たた》き|溃《つぶ》すぞ」
路上に|唾《つば》を吐く。
|忌々《いまいま》しげに舌打ちすると、彼は现代的なデザインの|杖《つえ》をついて药局へと向かった。二○○メ—トルほどの|距离《きより》しかなかったが、それだけを步くのがすごく面倒臭い。
店内に入る。
だだっ广い药局は、样々な棚が纵横无尽に置いてあり、それだけ见ると压迫感がある。が、|天井《てんじよう》までの高さが棚の五倍ぐらいあるので、そのためにいくらか感觉が轻减されていた。
最终下校时刻を过ぎているせいか、店内にはほとんど客がいない。
药局という特性上ずっと店を开けていないといけないのだろうが、正直店员を见るとさっさと闭めてテレビが|观《み》たいと颜に书いてあるようだった。
消毒液と包带……と思い、それから考え直して|绊创膏《ばんそうこう》にした。本当に小さな伤だ。包带を用意するまでもない。
(过保护)
生意气な|台词《せりふ》を思い出して|一方通行《アクセラレ—タ》は苦い颜になった。
买い物カゴを腕に下げ、气遣わしげな颜で绊创膏の箱と|睨《にら》めっこをしているなんて、寻常ではない。一体|一方通行《アクセラレ—タ》はどこのネジが外れてしまったのか。|苛立《いらだ》った颜で绊创膏のパッケ—ジをカゴへ投げ?み、杖をついてレジへ向かう。
财布を开けると小钱しか残っていなかった。
インデックスと名乘る变な修道女の食费に消えたと思い出したのは少し|经《た》ってからだ。
「……、クソッたれが」
ポソッと|?《つぶや》くと、レジの奥に立っていた店员がビクッ!!と肩を|震《ふる》わせた。|一方通行《アクセラレ—タ》の正体までは勘付いていないだろう。だが、体から发散されているオ—ラが危险すぎた。
と、レジカウンタ—のすぐ近くに备え付けられた棚に、カラフルな绊创膏が并べてあるのを发见した。どうやら子供向けのものらしい。|大霸星祭《だいはせいさい》に合わせてフェアを组んでいたものの余りらしく、简单な|怪我《けが》のためのキットがあれこれ并んでいる。
「これは何だ。普通のヤツとどォ违う?」
寻ねると、店员は口から心脏が飞び出しそうな颜で必死に答えた。どうも伤口に|染《し》みない消毒液や、伤口にくっつかない|绊创膏《ばんそうこう》、药臭さを消すために甘い|?《にお》いのついた包带など、まさしくガキ向けの工夫。が|凝《こ》らされたものらしい。
子供向け、と|一方通行《アクセラレ—タ》がわずかに考え?んだ所で、
(过保护)
ゴン!!と片足でレジを蹴っていた。
店员が失神しそうな颜で笑みを浮かべている。ただ、|一方通行《アクセラレ—タ》が子供向けと书かれた消毒液と绊创膏をカゴへ投げ?むと、店员の表情がわずかに|缓《ゆる》んだ。见た目によらずカサブタが嫌いな子とでも思われたのかもしれない。
代金は何とか小钱だけで济んだ。
どうせ电车も|停《と》まっている时间带なので、财布の中に金を残しておかないと困るような事态にもならない。
|一方通行《アクセラレ—タ》は店から出ると、小雨の降り始めた街の中、街灯に照らされた药局の袋を持ち上げた。そこにはデフォルメされたマスコットキャラクタ—の笑颜が描かれている。
「……、|马鹿《ばか》げてやがる」
思わず吐き舍てた。
|黄泉川《よみかわ》はこういった行いに惯れないのか、と寻ねていたが、决まっている。惯れるはずがない。大体、これは何だ。|一方通行《アクセラレ—タ》とは、こういったものから最も远い位置にいたはずだ。一万人以上の人间を|叩《たた》き杀しておきながら、ちっぽけな伤を|愈《いや》すための绊创膏を|後生《ごしよう》大事に抱えて夜の街を急ぐなんてどうかしている。常轨を逸しているのだ。こんな光景を见。せられた侧だって困るだろう、鼻で笑う以外にどんなリアクションを取るというのか。
惯れても良いのか?
|些细《ささい》なすり伤の]つぐらいで、心配しても良いのか?
轻く一万リットル以上の血を流してきた、こんな怪物に。
「クソッたれが」
|一方通行《アクセラレ—タ》は舌打ちした。
それに对する答えは、八月三一日に一应下した。たとえ自分がどれほどのクズであっても、|侧《そば》にいるあのガキには关系がない。だからあのガキが伤つけられようとしている时だけは、どれだけ场违いでもまっとうに动いてみせる。
良い意见だ。
だが、それだけでは足りない。
结局は、あのガキに自分の负担を押し付けているようにも受け取れる。
原动力に责任を|转嫁《てんか》しているのではないか。
(ナニを求めてやがる……?)
|一方通行《アクセラレ—タ》は奥齿を轻く|啮《か》み、
(イラっちまってる理由は何だ。|俺《おれ》はナニが足りねエと感じてンだ。ハッ、そこから分かンねェなンてな。自分探しなンてガラじゃねェのはテメェが一番分かってンだろオがよォ)
そこで彼の意识は途切れた。
ゴン!!と。
猛スピ—ドで突っ?んできた黑いワンボックスカ—が、|一方通行《アクセラレ—タ》の体に激突したからだ。
背後からの|一击《いちげき》だった。
彼の立っている场所は车道から区别された步道だった。
车道と步道の问は分厚いガ—ドレ—ルに|遮《さえぎ》られていた。
しかし、
そんなものを轻々と引き|千切《ちぎ》って|漆黑《しっこく》のワンボックスは|一方通行《アクセラレ—タ》のいる步道へ突っ?んでいた。ブレ—キをかけた样子もない。自动车のライトやバンパ—などの破片が周围に|撒《ま》き散らされ、细かく碎けたフロントガラスが|小豆《あずき》をぶつけるような音を立てる。千切られたガ—ドレ—ルの铁板が宙を舞い、步道に面した杂居ビルのシヤッタ—へと激突した。|轰音《ごうおん》がさらに愈音を招く。
まるで爆心地のような一角。
その中で、
一方通行は[#「一方通行は」に傍点]、三秒前と同じ格好で平然と突っ立っていた[#「三秒前と同じ格好で平然と突っ立っていた」に傍点]。
彼の手は、首の横に当てられている。
ゴキリと骨を鸣らす。
细い指が触れているのは、チョ—カ—型の电极───その制御スイッチだ。
『反射』が起动している。
核兵器の直击を受けても伤一つつかない学园都市旧收强の|超能力者《レベル5》が君临している。
(何だァ……?)
|一方通行《アクセラレ—タ》は振り返る。
突っ?んできた黑いワンボックスを眺める。
炮弹でも受けたように、前面中央の铁板にクレ—タ—を作り、そこを中心としてグシャグシャにひしゃげてしまった、车と呼ぶか|残骸《ざんがい》と呼ぶか迷いそうな障书物を。
すでに|阳《ひ》も落ちているのに、フロントライトは消えていた。ぶつかった拍子にライトが|坏《こわ》れたのではない。最初から|点《つ》けられていなかった。
(……まるで背後から近づいてくるのを勘付かれたくねェみてェなやり口だよなァ)
おまけにナンバ—プレ—トには强引に付け替えたらしき迹があるし、フロントガラスが碎けるほどの|冲击《しようげき》を受けてもエアバッグが起动した样子はないし、そもそもこの黑いワンボックスそのものが盗难车らしく、ドアの|键穴《かぎあな》にこじ开けた形迹がある。
(つまり、まァ、あれか)
极めつけに、ひしゃげた运转席で|呻《うめ》いているのは黑ずくめの男だった。
特殊部队のような装甲服に、头をスッポリと|覆《おお》う同色のマスク。スキ—ヤ—のような分厚いゴ—グルで目元まで|完壁《かんべき》に隐した|彻底《てつてい》ぶりを见せている。
(……|俺《おれ》に恨みがあるかァ、俺を利用しようと|跃起《やつき》ンなってる。研究机关かァ、そのどっちかっつ—译だ)
|一方通行《アクセラレ—タ》の笑みが横に裂ける。
运转席の男の胸元に差してある军用|拳铳《けんじゆう》のグリップを见て、乐しそうに乐しそうに。
(来やがったな。来ると思ってたンだ。こオいう|马鹿《ばか》が。俺を连れ戾そォとする[#「俺を连れ戾そォとする」に傍点]クソみてェな马鹿が。空气も气配も|氛围气《ふんいき》もル—ルも何にも读めねェクズ野郎が)
|一方通行《アクセラレ—タ》は颜を上げる。
自分よりもわずかに高い位置にある运转席の男の颜を见上げて、にっこりと|微笑《ほほえ》む。
「───ブチ、杀す」
ゴン!!という|轰音《ごうおん》が暗い街に|响《ひび》き渡る。
|一瞬《いつしゆん》だった。
|一方通行《アクセラレ—タ》の腕がフロントガラスのなくなった窗から运转席へと突っ?んだ。细い腕はそのまま黑ずくめの男の颜面へと吸い?まれる。より正确には口に。人差し指から小指までの四本が、そのまま男の口の中へと飞び?んだ。黑い|防刃《ぼうじん》マスクをぶち破って、その白い手を|喉《のど》の奥まで侵入させる。残る亲指で、|颚《あご》を下から押さえつける。
腕を手前に引く。
ゴキリ、という音が鸣る。|颚《がく》关节が外れる音だ。
「あははぎゃはあはははひひひぎゃははあはアハあははははッ!!」
|一方通行《アクセラレ—タ》は爆发的な笑みと共に、まるでマグロの一本钓りのように男の体を运转席から引きずり出し、そのまま自分の後方へと投げ舍てた。步道を飞び越えた黑ずくめの背中が、ノ—バウンドで杂屠ビルのシャッタ—へと激突した。
ズパァン!!という落雷のような轰音が|炸裂《さくれつ》する。
黑いワンボックスの奥の後部座席から、『ひい』という息を|吞《の》むような音が闻こえた。
まだいる。
|一方通行《アクセラレ—タ》の赤い|瞳《ひとみ》が|蠢《うごめ》く。
「ンン—う?乐しい。あはは。やベェよオイ最高にトンじまったぞクソ野郎ォ!!」
フロントガラスのなくなった所から、彼は|兽《けもの》のように车内へ|突击《とつげき》する。
助手席のシ—トを杂草のように引き|千切《ちざ》り、そのまま後部座席へと|踏《ふ》み?んでいく。ベキベゴベギン!!と车体全体が不气味に。|震动《しんどう》した。まるで金属や内装の方が胜手に|一方通行《アクセラレ—タ》を|避《さ》けていくように见える。フレ—ム全体が|歪《ゆが》んだせいか、あちこちでボルトの|弹《はじ》ける音や窗ガラスの碎ける音が连续する。さながら、钢铁の风船を强引に|膨《ふく》らませるように。
後部座席にはもう一人の男が乘っていた。
彼が慌てて铳を拔く前に、|一方通行《アクセラレ—タ》は黑ずくめの头を|掴《つか》んで真下に|叩《たた》きつける。ズボン!!という间の拔けた音と共に後部座席が弹け、男の头が绵の中へと沈み?んだ。
ひゅうひゅうという|喉《のど》が鸣る音だけが|响《ひび》く。
「ははは。……だ—、饱きたなちくしょう。兴が冷めた。俺も鬼じゃねェ」
|一方通行《アクセラレ—タ》は笑う。
「クソ、杀しゃしねェよ、面倒臭せェしな。今ならお买い得の五割引きで许してやる」
「あ、ぅえ……」
座席の绵が口の中まで入り?んでいるのか、男の声は|不明了《ふめいりよう》だ。
それでも黑ずくめは必死になって言叶を|纺《つむ》ぐ。
「……、ぁが。五、割。か、金……?」
<img src="img/禁书目录12_227.jpg">
「いいやァ」
|一方通行《アクセラレ—タ》はゆるゆると首を横に振って、
「オマエの|皮肤《ひふ》の五割を|剥《は》いでやる。それでもまだ生きてたら许してやるっつってンだよ」
ぎぃぃ!!と虫のような悲岛が|响《ひび》いた。
|一方通行《アクセラレ—タ》は笑う。
乐しそうに、嬉しそうに、幸せそうに、面自そうに、ダイエット明けにアイスクリ—ムでも|舐《な》めているような颜で。
と。
ガリガリガリ!!と路面を削る音が响き、|一方通行《アクセラレ—タ》を围むように三台の黑いワンボックスが急停止した。彼は碎けた窗から外の车を眺める。あれも盗难车だろうか。同じ车种を探してくるのも大变だったろうに、と彼は心の中で息を|吐《は》く。
「退屈だ」
ともあれ、特别サ—ビス五割引きは中止だ。
|一方通行《アクセラレ—タ》は昆虫みたいな男の颜を、バスケットボ—ルのように五指で|掴《つか》み取る。
プン!と金属バットを振るうような音が鸣った。ガラスのない窗から无造作に黑ずくめの男を适当に投げ舍てる。
败者がアスファルトの上を横滑りする。その|滑稽《こつけい》な样子を确かめるまでもなく、|坏《こわ》れたワンボックスを取り围む三台の自动车の後部スライドドアがガラリと开けられる。
しかし人间は降りてこない。
そこから|?《のぞ》くのは无数の铳口だ。
それを见た|一方通行《アクセラレ—タ》はため息を|吐《つ》くと同时に、その|郁愤《うつぷん》を晴らすように真下へ|拳《こぶし》を突っ?んだ。ベクトル制御された]|击《いちげき》はただでさえ|歪《ゆが》んでいた车体フレ—ムに致命的なダメ—ジを与え、各种配管に|龟裂《きれつ》を生み、そこへ火花を|撒《ま》き散らす。
ドッ!!という爆风と热波が四方八方へ撒き散らされ、边り一带を|吞《の》み?んだ。
三台の车からくぐもった悲鸣が连续した。车内にいるとはいえ、マスクで颜面を覆っていたとはいえ、至近|距离《きより》で高温の风の块を受けたのだ。|喉《のど》の奥まで|火伤《やけど》にさらされた何人かがのた打ち回り、さらには自分で开けたスライドドアから路上へ转がり落ちる者まで现れる始末だ。
「演出ゴクロ—。───华々しく散らせてやるから感谢しろ」
炎の中から声がした。
|一方通行《アクセラレ—タ》はザクロのように赤く开いた火炎と|残骸《ざんがい》の中から悠々と步を进めてくる。『反射』の制限时间は一五分だが、これなら何の问题もなさそうだった。というより、ここまで足并みを乱せば後は一○秒で始末できる。
と
「だ—から言ってんじゃねえかよお」
自分を取り围んでいる自动车の一台から、男の声が闻こえた。
「あのガキ|溃《つぶ》すにゃこんなもんじゃ|驮目《だめ》なんだよ。ガキイ相手だからって甘い事ばっかしやがって。だから最初から|俺《おれ》が出るっつってんじゃねえか」
开きっ放しの後部スライドドアから、黑ずくめの男が|蹴《け》り落とされた。その後からのっそりと现れたのは、白衣を羽织った长身の男だ。その表情にダメ—ジらしきものはない。研究者のくせに颜面に|刺青《いれずみ》が雕ってある。その两手には、细いフォルムの机械制グロ—ブがはめられていた。マイクロマニピユレ—タとかいう|马鹿《ばか》长い名前で、确か文字通り一○○万分の一メ—トルクラスの|纤细《せんさい》な作业を可能とする精密技术川品だったはずだ。
「……、」
|一方通行《アクセラレ—タ》はわずかに|眉《まゆ》をひそめた。
その研究者の颜を知っている。
「ぶっ」
そして、见た|瞬间《しゆんかん》に吹き出した。
「ギャハハハハ!!キハラくんよォ、ンだァその思わせぶりな登场はァ!?ヒトのツラァ见ンのにビビッて目ェ背けてたインテリちゃんとは思えねェよなァ!!」
|木原数多《きはらあまた》。
かつて、学园都市最强の|超能力者《レベル5》の能力开发を行っていた男だ。
それはつまり、学园都市でも最も优秀な能力开发研究者である事をも意味している。
「いやぁ、俺としてもテメェと会うのはお断りだったんだけどな。上の连中が言うから仕方ねえじゃねえかよ。何でも|紧急《きんきゆう》事态だとかで手段を选んでる余裕はねえんだと、だから、まぁ、恶りいんだけどここで溃されてくんね—か」
白衣の男は虚势を张っているが|一方通行《アクセラレ—タ》は无视した。
|一方通行《アクセラレ—タ》の研究に|携《たずさ》わった者は皆、例外なく彼の高すぎる才能に恐怖していた、はっきり言えば、同じ研究施设に二ヶ月といた试しはない。研究者がどれだけの野望を抱いた所で、それをはるかに|凌驾《りようが》する资质を持つ者を见た途端に部屋の隅で|震《ふる》え上がる。
木原数多もそういった。研究者の一人でしかない。
というより、|一方通行《アクセラレ—タ》はそれ以外の研究者像を知らない。
唯一、|芳川桔梗《よしかわききよう》を除けば。
木原は白衣の肩を轻くすくませ、
「そう言うなよ。|谁《だれ》がテメェのチカラを发现してやったと思ってんだ?」
「あ?ナニ?何ですかその义理と人情に|溢《あふ》れた|台词《せりふ》。もしかしてこの|一方通行《アクセラレ—タ》に恩返しとか期待しちゃってるヒトとか?いやァ驮目だわ。っつかよォ」
|一方通行《アクセラレ—タ》は左手の人差し指をこめかみの边りに当てる。
その指をくるくると回すと、
「イカれンなら一人でやれや、|俺《おれ》の体アいじくった研究者の数なンざ两手の指じゃ足ンねエンだよ。いち。いちオマエ一人の思い出なンぞ|留《とど》めておくと思ってンのか通行人A。眼中ねエからさっさと消えてくンないかな?」
「つ—か本气でムカつくガキだよなぁ、テメェは」
|木原《きはら》は冷え性に恼むように自分の两肩を抱く。
くすくすと、|窥《うかが》うような笑みを浮かべ、
「いやぁ杀したいわ。メチャクチャ杀したいわ—。实を言うと前からその颜|溃《つぶ》したくってたまらなかった译よ。そりゃ昔は研究素材だったし、何よりガキのガキのクソガキだったから踏み|止《とど》まってたけどよお。こりゃ—|驮目《だめ》だ、やっぱあの时きちんと杀しておくべきだったんだよなぁ。あ—失败だ。あっはっは、何やってんだかなぁ俺」
电气收缩する人工筋肉や小型のモ—タ—で补强された、超精密作业用のグロ—ブをはめた两腕を目一杯に广げ、まるで恋人でも迎えるような仕草を取る。
そのまま木原|数多《あまた》は|一方通行《アクセラレ—タ》へと近づいていく。
|无谋《むぼう》にも。
研究者は唇の端を|歪《ゆが》め、
一言。
「そんな译で[#「そんな译で」に傍点]、杀すわクソガキ[#「杀すわクソガキ」に傍点]」
金属制の细いグロ—ブに包まれた|拳《こぶし》が|一方通行《アクセラレ—タ》の颜面に飞来する。
それでも|一方通行《アクセラレ—タ》は笑みを崩さなかった。
ナニ考えてンだこの|马鹿《ばか》、と|?《つぶや》く。
ガ—ドなど考えず、むしろ两手を广げて木原数多の拳を迎え入れて、さあこの马鹿の腕を|彻底的《てつていてき》にへし折って片结びにでもしてやろうかと考えた所で、
ゴン!!と。
机械制の拳が、|一方通行《アクセラレ—タ》の|皮肤《ひふ》を削り取り、|头盖骨《ずがいこつ》を摇さぶった。
「が……ぃ……ッ!?」
予想外の|一击《いちげき》に、彼の脑が余计にショックを受ける。
チョ—カ—型电极のスイッチはつけていた。
『反射』は效いていた。
今の状态なら、核爆弹を抱えて自爆しても伤一つつかないはずだった。
なのに、
何故か[#「何故か」に傍点]、ベクトル反射が全く通用しない[#「ベクトル反射が全く通用しない」に傍点]。
「っつかよお」
ぐらぐらと摇れる意识に、|木原数多《きはらあまた》の声が届く。
いかにも失望したような、人を见下した声。
「テメェごとき眼中ねぇのはこっちも同じなんだよクソガキ[#「テメェごとき眼中ねぇのはこっちも同じなんだよクソガキ」に傍点]。多少チカラァあるからって付け上がってんじゃねえのか。もういっぺん言ってやるけどよ、そのつまんね—チカラは一体どこの|谁《だれ》が与えてやったモンだと思ってんのよ。ほ—れ、思い出したか—?」
「ぁ……」
|一方通行《アクセラレ—タ》が何か言う前に、さらに木原の|拳《こぶし》が飞んだ。
ガシュン!!とグロ—ブが妙な音を放つ。
上から下へと|金槌《かなづち》を振り下ろすような|一击《いちげき》。またしても『反射』は意味を|为《な》さなかった。头を强打された|一方通行《アクセラレ—タ》は、そのまま|濡《ぬ》れた路上へと倒れ?む。现代的なデザインの|杖《つえ》が手から|离《はな》れる。药局のビニ—ル袋が地面に落ち、その中身がバラバラと散らばった。
「さっさとひしゃげちまえよ。こっちにも目的がある。テメェ|如《ごと》きと游んでる时间もねえしな?」
木原の靴底が、|绊创膏《ばんそうこう》の箱を|踏《ふ》み|溃《つぶ》した。
子供向けに调整された、|打ち止め《ラストオ—ダ—》のために买っておいた绊创膏だ。
|可爱《かわい》らしいパッケ—ジが、雨水と泥にまみれて污れていく。
「似合わないねぇ」
木原はニヤニヤと笑う。
腕の调子を确かめるように、机械制のグロ—ブを轻くさすりながら、
「まぁ、アレ[#「アレ」に傍点]はこっちで回收しといてやるからよ。テメェは安心してここで溃れて壁の|染《し》みにでもなっててくれ。そっちの方がテメェらしいだろうしな?」
「……ッ!!」
|一方通行《アクセラレ—タ》の头が、カッと热を上げた。
木原数多は、目的は|一方通行《アクセラレ—タ》ではないと告げた。そして、いつも|一方通行《アクセラレ—タ》の|侧《そぼ》にいるらしい『アレ』を回收すると言った。
つまり目的はそちら。
『アレ』と呼ばれた人物を、|一方通行《アクセラレ—タ》や木原数多のいる血まみれの世界へ引きずり落とすと言っているのだ。
「ナメ、てンじゃ……」
|一方通行《アクセラレ—タ》は、|这《は》いつくばったまま声を出す。
自分の间近で───言い换えれば无防备に接近し、こちらを见下ろしている木原や黑ずくめの男|达《たち》を、彼は地面に体を押し付けた状态で|睨《にら》み付ける。
わずかに泥を含む雨水を唇に含み、
「……ねェぞ|三下《さんした》がァああああああああああああッ!!」
|轰《ごう》!!と风が涡を卷く。
彼の能力はベクトル操作。わずかでも力を持っものなら、その方向性を例外なく操るものだ。そしてそれは风───地球上に存在する大气の流れであっても例外ではない。
局地的な|岚《あらし》が起こる。
制御された风速一二○メ—トルの暴风は、|龙卷《ハリケ—ン》としても最大级のM7クラス。自动车や家屋の屋根すら引き|剥《は》がす大气の暴力は、もはや并のミサイルを越している。
杀せ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は绝叫した、
だが[#「だが」に傍点]、
「|驮目《だめ》なんだよなあ」
ピ—ッ、と。
妙に乾いた音が周围へ|响《ひび》いたと思った途端に、|一方通行《アクセラレ—タ》が制御していた暴风の块が吹き消された。风船の口が开いたように、集められた风が四方八方へと散っていく。
「ッ!?」
必杀と思っていた|攻击《こうげき》が、あまりにもあっけなく打ち消されていく。
|愕然《がくぜん》を通り越し、もはや|呆然《ぽうぜん》とする|一方通行《アクセラレ—タ》に、
「だから死んどけって、な?」
|木原《きはら》はその边にあった铁。パイプを拾い、ゴン!!と|一方通行《アクセラレ—タ》の颜面を|殴《なぐ》りつける。
メキメキと颜の表面が嫌な音を立てる。痛みのせいでとっさに出た声が、出口を失ってくぐもった响きを|奏《かな》でる。木原はそれを耳にしてから、铁パイプを适当に放り舍てた。
「お、ご……」
|朦胧《もうろう》とする意识の中、|一方通行《アクセラレ—タ》は思う。
これと同じような现象を、知っている。
自分が绝对だと思っていた|超能力《レベル5》の力を、|掌《てのひら》で触れただけであっさりと打ち消してしまう、あの男。『反射』という不可侵の能力すらも打ち碎き、この|华奢《きやしや》な体に重たいダメ—ジを次々と|叩《たた》き?んできた、あの男。
まさか、
「オマエ……自分の体に、超能力の、开发……」
「ギャハハ!あ—あ—违う违う、そうじゃねえよ。何で|俺《おれ》が实验动物の|真似事《まねごと》なんかしなくちゃならねえんだ。そういうのはモルモットの仕事だろうがよ。これはそんなに大それたモンじゃねえ。あんな|马鹿《ばか》げた力ァ使わなくても、テメェ一人溃す事に苦劳なんかしねえんだよ。っつかよ、テメェみてえな马鹿一匹溃すのに何でそこまで体を张らなくちゃならねえんだ?あ?」
「……、」
「いや、气分が良いなあ、害虫驱除は气分が良い。今日はコイツの调子も优れてっし」
言いながら、|木原《きはら》はマイクロマニピュレ—タの指を开闭させる。
ピクリ、と|一方通行《アクセラレ—タ》の肩が。|震《ふる》えた。
まだ终わらない。
ここで简单に|溃《つぶ》れる译にはいかない。
「おおォ!!」
|一方通行《アクセラレ—タ》はベクトルを制御し、バネのように地面から飞び上がった。そのままがむしゃらに腕を振るう。右腕に固定されていた、现代的なデザインの|杖《つえ》がすっぽ拔けるが、气にしてなどいられない。
木原|数多《あまた》へ五本の指を|叩《たた》きつける。
一度目は失败した。
だが、二度目の|爪《つめ》が木原に触れる。|一方通行《アクセラレ—タ》は『力』を注ぎ?む。彼のはめるグロ—ブへと。ベクトルを一点に集中させ、机械で作られたグロ—ブを粉々に碎く。
破片がばら|撒《ま》かれた。
「!?」
木原の|惊《おどろ》いた颜が、宙に浮かぶ|残骸《ざんがい》の向こうに见える。
そこへ|一方通行《アクセラレ—タ》は开いた五本の指を突き入れた。
(とりあえず死体决定だクソ野郎!!)
机械破片の膜を突き破り、必杀の腕は木原数多の颜面へ叩き?む。
だが、
「そっかそっか。力の秘密はグロ—ブだと思ったのか?」
平然とした声。
首を振っただけで|一方通行《アクセラレ—タ》の|一击《いちげき》を轻々と|避《さ》けた木原の颜に浮かぶのは、
相变わらずの笑み。
「そうじゃねえんだわ!ぎゃはは!ごっめんねえ、期待させちゃったかなぁ!!」
ドッ!!と|一方通行《アクセラレ—タ》の|胁腹《わきばら》に|拳《こぶし》が突き刺さった。
吐き气が胃袋で爆发し、しかしそれすらも强引に押し|留《とど》められる。
木原の笑い声が鼓膜に|响《ひび》く。
「ははっ!いつまで最强气取ってやがんだぁ[#「いつまで最强气取ってやがんだぁ」に傍点]?このスクラップ野郎が!!」
思わず体がくの字に折れ曲がった所で、ちょうど前へ突き出す形になった头へさらに拳が飞ぶ。オモチャのように、彼の体が路面を转がっていく。
「テメェの『反射』は绝对の壁じゃねえだろうが」
木原はゆっくりと步いてくる。
|一方通行《アクセラレ—タ》は、动けない。
「ただ向かってくる力のベクトルを『反对に』变えてるだけだ。なら话は简单でよぉ、テメェをボコボコにするためには|直击《ちよくげき》の寸前に|拳《こぶし》を引き戾せば良いんだよ。言っちまえば寸止めの要领だな」
乐しげな声。
新しく思いついた手品の仕组みを语るような笑み。
「テメェは、自分から远ざかっていく拳を[#「自分から远ざかっていく拳を」に傍点]『反射[#「反射」に傍点]』させてる[#「させてる」に傍点]译だ。って事はよお、テメェはわざわざ自分から|殴《なぐ》られに行ってるって话なんだわ。分かってくれたかなぁマゾ太君!?いやぁガキの头にゃ难しすぎたかなぁ!!」
「!!」
|一方通行《アクセラレ—タ》は起き上がろうとするが、その前に|木原《きはら》の足が飞んだ。
上から|踏《ふ》み|溃《つぶ》すように、何度も靴底が|袭《おそ》いかかる。体の色々な部分が踏み溃され、引きつった|皮肤《ひふ》が切れ、血が雨水と混ざり合ってにじんでいく。
(なン……だと?)
木原はこちらの能力を逆手に取っているらしいのは何となく分かる。が、それが实感としてどういうものなのか、机上の空论ではなく现实の问题として实行可能なのかどうか、|一方通行《アクセラレ—タ》にはサッパリ分からない。ともあれ、『反射』は使い物にならないと判断した彼は、
「がァァァ!!」
今度は空气の流れのベクトルを制御して暴风を起こそうとするが、そちらもピ—ッと乾いた音が闻こえただけで吹き消される。
「同じ事だよ」
木原は言う。
「テメェの能力はベクトルの计算式によって成立する。なら、ソイツを乱しちまえば良い、だから风を操んのも|无驮《むだ》なんだわ。ただの『反射』に比べて『制御』はより复杂な计算式を必要とする。プログラムコ—ドと同じだな。记述が多ければ多いほどバグが生じる可能性も高くなる。───もちろん、人为的な介入もな。ようはちよっとした『音波』を空气に通せば、『风の攻击』は|全《すベ》て|妨害《ジヤミング》できんだよ。テメェの计算式の死角に|潜《もぐ》り?むような波と方向性を持った『音波』を放ちゃあ、な?」
取り出されたのは携带电话……いや、それに付けられたストラップか。柔らかい素材でできていて、押すと音が出る仕组みらしい。たったそれだけで、彼の力は封じられていた。
「く、そ」
「ど—よ。泥の中で踏みにじられる气分ってのは。テメェの特徵、计算式、『|自分だけの现实《パ—ソナルリアリテイ》』、全て把握济みだ。こっちも|伊达《だて》にそのチカラあ开发してね—ぞ」
ゴン!!ゴギッ!!ベゴ!!と、钝い音が连续する。
|木原《きはら》の颜に血が数滴跳ねる。
息が切れるまで|蹴《け》り续けると、木原は赤色に污れた靴を雨で|濡《ぬ》れた路面へ|擦《こす》り付けた。それが、この上なく|丑《みにく》い污れであるかのように。
「ん—?害虫ってのはなかなか死なね—モンだなぁ。おい、车ん中にあったヤツを持って来い。あれだよあれ、後ろの方に押し?んであった、|埃《ほこり》の|被《かぶ》ってるヤツ」
木原が轻く手を伸ばすと、その动きに应じた装甲服の一人がダメ—ジを引きずるような动きで车の後部座席へ入って行った。その中から取り出し、木原が受け取ったのは、|金槌《かなづち》やノコギリなどが丸々收まった、ズシリと重たい工具箱だ。
「武器ってなあ杂っつ—か|大杂把《おおざつぱ》な方が效き目が高い、暗杀用の非金属ナイフより材木用のチェ—ンソ—の方がエグいみてえにな」
|一方通行《アクセラレ—タ》は倒れたまま、ろくにしゃべらない。
雨水に打たれながら、彼はただ木原の颜を见上げる。
「なぁ|一方通行《アクセラレ—タ》。テメェは『アレ』の意味を理解してねえんだよ」
木原は笑う。
アレというのは、あの小さな少女以外に考えられない。
「大体よ—、そもそも|绝对能力进化《レペル6シフト》计画の前の、|量产能力者《レディオノイズ》开发计画だっけか。军用量产モデルとしてゴ—サインが出たっつ—时点で怪しいじゃねえか。だったら第三位の|超电磁炮《レ—ルガン》じゃなくてよ、第一位のテメェのクロ—ンを作るべきだろうがよ」
「───、」
「何でテメェのクロ—ンは作られなかった?何で第三位のアイツで计画はスタ—トした?ナニかがあるんだよ、そこにはな、テメェがちっとも理解していねェ何かが、だ」
ハッ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は笑う。
「クソッたれが……」
?く。
唇が切れるどころか、もう齿の间から|喉《のど》の奥まで血の味で满たされていた。
「……|俺《おれ》以上にあのガキを分かってねェオマエが、テキト—なコト言ってハシャいでンじゃねェよ」
「ん—?」
木原はニコニコと笑って、重たい工具箱の角を两手で|掴《つか》み、握り心地を确かめる。
彼は笑って言う。
「感动的だねぇ[#「感动的だねぇ」に傍点]。本人だって大喜びだ[#「本人だって大喜びだ」に傍点]」
|一方通行《アクセラレ—タ》の心脏が止まるかと思った。
彼の体は动かない。
それでも、倒れたまま、|这《は》いつくばった姿势で颜だけを动かす。
一○○メ—トルほど|离《はな》れた场所。
そこに、
その先に。
黑ずくめの男に二の腕を|掴《つか》まれ、
だらりと残る手足を摇らしている、小さな少女がいた。
「回收完了、って所だな」
|木原数多《きはらあまた》の声が、|一方通行《アクセラレ—タ》の耳から远ざかっていく。
地面に倒れた彼の视界の先に、三人の人间がいた。二人は、并んで步く黑ずくめの男。あとの一人は荷物のように掴まれている|打ち止め《ラストオ—ダ—》だ。まるで重たい物を入れたビニ—ル袋のようだった。足の里が地面に接触していない。垂らした|纽《ひも》のように、ただただ足の甲の方が力なく地面とぶつかっていた。
ここからでは、彼女の表情は见えない。
手足と同样、枝のように摇れる首はうな垂れていて、前发と影によって表情が隐れてしまっている。ただ、相当苦しそうな姿势であるにも|拘《かか》わらず、身じろぎの一つもなかった。おそらく意识はない。近くに寄れば、その幼い体のあちこちに生伤がある事も分かると思う。
片手で持っのが疲れたのか、男は|邻《となり》にいるもう一人の仲间へ、乱暴に|打ち止め《ラストオ—ダ—》を押し付けた。それでも手足が|赖《たよ》りなくふらつくだけで、彼女は全く反应をしない。
木原は笑って言った。
「あ—あ—、ありゃあもう闻こえてねえかもな。一应本命[#「本命」に傍点]は生け捕りってハナシになってんだがよ、アレは本当に生きてんのか?こんなんで始末书なんて真っ平だぞ」
ふざけンな、と|一方通行《アクセラレ—タ》は口の中で|?《つぶや》いた。
彼女はまだ生きている。死んでいるはずがない。もしも|打ち止め《ラストオ—ダ—》が死んでいるとしたら、|妹达《シスタ—ズ》の代理演算に赖っている|一方通行《アクセラレ—タ》の方にも|影响《えいきよう》が出るはずだ。……と、思う。
(クソ、确证なンかねェよ……)
|一方通行《アクセラレ—タ》は冷たい地面に转がったまま、齿を食いしばった。
(あのガキが死ンだら、具体的に影响が出ンのか出ねェのかなンざ知らねェよ!そンなモン试そォと思った事もねェから分かる译ねェだろオがよォォ!!)
打ちひしがれる|一方通行《アクセラレ—タ》などお构いなしに、ぐったりした|打ち止め《ラストオ—ダ—》を抱える男|达《たち》はこちらに近づいてくる。より正确にはワンボックスに向かって、か。
木原は自分达の目的は|打ち止め《ラストオ—ダ—》だと言った。
どこへ连れて行くつもりかは知らないが、そこらに|停《と》まっている自动车に押し?まれたら、もう终わりだ。
あの少女はもう一度、血と|暗《やみ》にまみれた世界へ引きずり戾される羽目になる。
そして。
次にそこから归って来られる可能性は、おそらくゼロだ。
(やら、せるか)
|一方通行《アクセラレ—タ》は、雨に|濡《ぬ》れた地面に指を|这《は》わせる。
ボロボロになった体に、わずかに残された力を注ぎ?む。
「|打ち止め《ラストオ—ダ—》ァァああああああああああああああああッ!!」
颜を上げて叫んだ。
ピクン、と呼ばれた少女の肩がわずかに动いた[#「少女の肩がわずかに动いた」に傍点]气がした。
倒れたまま、腕を振り上げる。
ベクトル操作で、|木原数多《きはらあまた》は|弹《はじ》けない。空气を操った暴风を使っても、即座に|打ち消《ジヤミング》されてしまう。これらの|攻击《こうげき》方法を使ってもこの白衣の男は倒せない。そもそもこの状态で|叩《たた》き|溃《つぶ》す事は考えるべきではない。もっと优先すべき事があるのだから。
ならば、
「───ッ!!」
|一方通行《アクセラレ—タ》は齿を食いしばり、己の手を濡れたアスファルトへ叩きつける。
ゴッ!!という|破坏音《はかいおん》。
|膨大《ぼうだい》な力に吹き飞ばされたアスファルトの破片が四方八方へ飞び散り、それによって木原がわずかに後ろへ下がる。
|犹予《ゆうよ》は一秒もない。
その限られた时间の中、|一方通行《アクセラレ—タ》は今度こそその手に『风』を|掴《つか》む。
暴风がうねる。ベクトルを制御する。
「チッ!!」
木原の舌打ちが闻こえた。暴风の|枪《やり》はそんな木原の真横を突き拔け、黑ずくめの男に|掴《つか》まれている|打ち止め《ラストオ—ダ—》の元へと突っ?んだ。
风速一二○メ—トル。
自动车や家屋の屋根すら引き|剥《は》がす烈风が、少女の小さな体を黑ずくめの太い腕からもぎ取り、地面から飞ばした。一○メ—トル以上の高さのビルをいくつも飞び越え、|打ち止め《ラストオ—ダ—》が风景の阴へと消えていく。
ごぼっ、と|一方通行《アクセラレ—タ》の|喉《のど》が变な音を出した。
押さえつけようと思う前に血の块が吐き出され、彼の颜は。再び雨に|濡《ぬ》れる路面へと落ちる。バッテリ—の残量はあっても、もう『反射』に意识を割けない。血と泥の混ざった雨水が、唇の端から舌の上へと入り?んでくる。
「あ—あ—あ—あ—」
|木原《きはら》がのんびりした声をあげた。
「ゴルフボ—ルじゃね—んだからよ—。ヤ—ド单位で人间を飞ばすんじゃね—よな—もう。|飞距离《ひきより》拔群じゃね—かよ。一体|谁《だれ》が回收すると思ってんだ。|俺《おれ》はやんね—けどな」
「どうしますか」
黑い装甲服に身を包んだ男|达《たち》の一人が、ぽそぼそと指示を仰ぐ。
木原はグロ—ブの|残骸《ざんがい》のついた右手でボリボリと头をかいて、
「だぁ—……あれよ、班を三つに分けろ。本命を追うのは一班だ。二班は俺の元に残れ。後始末だのそっちで|溃《つぶ》れてる部下の回收だの色々あるしな」
「しかし、最优先命令は|最终信号《ラストオ—ダ—》の捕获にあるため、班の构成は───」
「おや」
木原|数多《あまた》はキョトンとした颜で部下を见た。
何气なく寻ねる。
「お前さ。この『|猎犬部队《ハウンドドツグ》』に最近补充されたヤツだろ」
「え、いや」
「良いって良いって。别に|素性《すじよう》を探ろうって译じゃねえ。汗臭い男の末路なんざ闻いてもつまんね—しな。ただ、ル—ルが分かってないようなら教えてやる」
んン、と木原は退屈そうに|咳拂《せきばら》いして、
「テメェらはクズの集まりだ。人权なんてものはねえ。クズの补充なんざいくらでも效く。大事な大事な作战を|邪魔《じやま》ァすんならぶっ杀しちまっても构わねえんだよ。分っかるかなぁお前、今、一度死んだぞ?确认するぞ、分かってんのか」
ぬめるように体を传う雨粒の感觉が、消える。
声をかけられた黑ずくめの男から、不快感すら消失する。
「こっちは自分の手でスケジュ—ル组んでんだよ。あんなクソみてえなクソガキどものためにわざわざ头恼ませてよぉ。|马鹿《ばか》みてえだよな。ここまできてさらにテメェっつ—クソ野郎の事で头ぁ恼ませなくちゃならねえのか。あ?」
ザザザリザリ!!と、木原の体から周围へ肌寒い感情が驱け拔けていく。
思わず部下が无言で一步退いたのを见て、木原は简单に|颔《うなず》いた。
「よし、分かりゃあ良いんだ。今ァそれほど|切羽诘《せつぱつ》まってね—し、质问も受け付けてやる」
「……え、ええ。|最终信号《ラストオ—ダ—》は生け捕りとの事でしたが、ああなってしまうと」
「その边はこのガキだって考えてんだろ。どっかの川に落としてるとかな」
「水面の场合、|最终信号《ラストオ—ダ—》が气を失っていた事を考えると、|溺死《できし》の危险性もありますが……」
「马鹿だな、着水のショックで目ェ觉ますだろ。それ以前に意识ぐらいはあったと思うがな。とにかくクッションになりそうなものをピックアップして、その周边を调べりゃあ良い。多少の逃走スキルを持ってたとしても、基本的なスペックはガキの足だ。これで标的见失ったら腹ァ抱えて笑ってやるよ」
了解、という声がいくつか重なった。
ほとんど相谈する事もなく、口や指の合图だけで彼らの一班は散り散りに路地へ消えていく。
|木原《きはら》は|水溜《みずたま》りの上に转がっている|一方通行《アクセラレ—タ》の成れ果てを见下ろして、
「さて、と」
「そちらは回收ですか?」
「いやぁ、杀すよ。この手の努力しちゃってるヒト见てるとイライラすっからさ—。捕らえておく理由もね—し。コイツ|郁陶《うつとう》しいだろ。こういう思い诘めちゃう派の根暗な自己满足野郎はここで杀しておいた方が无难だよなぁ」
木についた毛虫を眺めているような口调だ。
装甲服の一人が|拳铳《けんじゆう》を差し出したが、木原は首を横に振った。|一方通行《アクセラレ—タ》の反射对策は、微妙な手足の『返し』の动作によって成立する。弹丸では再现できない。
もちろんこれは、|一方通行《アクセラレ—タ》の能力を直接开发した彼だからこそ可能な|攻击《こうげき》方法だ。仕组みを说明された所で、そのコンマ何秒というデリケ—トなタイミングを实战レベルで?えるのは木原だけだろう。
木原は|屈《かが》み?んで、持っていた工具箱を振り上げる。
|金槌《かなづち》よりもはるかに重たい、原始的な钝器を。
地面に署いた空き缶を|溃《っぶ》すような动作で、|一方通行《アクセラレ—タ》のボロボロになった颜を|狙《ねら》う。
「せっかく不意をついたんなら|俺《おれ》を杀さなくっちゃ—なぁ。起死回生の一手のつもりか知んね—けど、アレは一○分もしね—内にカゴの中だぜえ?」
「……、|默《だま》れ」
吐き舍てるように、|一方通行《アクセラレ—タ》は言う。
おや?と木原は目を丸くした。本当に起きているとは思っていなかったのだろう。
「クソッたれが。オマエにゃ……一生、分かンねェよ」
「そ—かい。じゃあ杀すけど、今のが遗言でイイんだよな?」
污ねェ|染《し》みになっちまいな、と木原は|嘲笑《あざわら》う。
くそ、と|一方通行《アクセラレ—タ》は颜には出さずに眩く。
木原の言う通り、このままでは|打ち止め《ラストオ—ダ—》は捕まってしまう。彼女にもある程度の逃走能力はあるが、それでも压倒的に不利だ。
|黄泉川《よみかわ》は何をやっているのか、|芳川《よしかわ》は拳铳を持ってやってこないのか、と|一方通行《アクセラレ—タ》は思う答えは分かっている。もちろん来ない。そんなに都合良く来てくれるはずがない。自分の力で何とかできない状况に遭遇した所に、パズルのピ—スのようにその解决方法を|携《たずさ》えた人间がポンと现れるようなら谁だって道を踏み外さない。人类皆兄弟。みんなで笑ってみんなが幸せ、极めて优しい幻想だが实际にそんな事が起きるはずがない。
(……、|谁《だれ》か)
それでも、|一方通行《アクセラレ—タ》は思う。
(起きろよ|幻想《ラツキ—》……。手柄ならくれてやる。|俺《おれ》を|踏《ふ》みにじって|马鹿《ばか》笑いしても构わねェ)
雨に|濡《ぬ》れた地面に转がり、|头盖骨《ずがいこつ》を|叩《たた》き|溃《つぶ》される直前で、どこまでも无样に。
(谁か、谁でも良いから、あのガキを……)
愿いが届くはずがない。
|工具箱《ハンマ—》は|容赦《ようしや》なく振り下ろされる。
その直前で、
「───そこで何してるの?」
あ?と|木原《きはら》は振り上げた腕を止める。
装甲服を着?んだ连中が声のした方へ振り返る。
|距离《きより》は二○メ—トルもない。そこらの细い|胁道《わきみち》から、不意に出てきたのだろう。小雨の降り注ぐ夜の街の中、伞も差さずに立っているその人影は、街灯の光を照り返してぼんやりと|辉《かがや》いている。
その影は腰まである银の长い发を持ち、色白の肌に绿色の|瞳《ひとみ》を备えていた。格好は红茶のカップのような、白地に|金刺绣《きんししゆう》を|施《ほどこ》した|豪奢《ごうしや》な修道服。だが、その所々を安全ピンで留めている、とてもアンバランスな服を着?んでいた。その两手には、こんなギスギスした世界とは缘のなさそうな|三毛猫《みけねこ》が抱えられている。
|一方通行《アクセラレ—タ》は、倒れたまま思い出す。
彼女は。
彼女の名前は。
2
「くっそ—。インデックスの野郎、出会ったと思ったらすぐに消えちまいやがって。一体どこまで行っちまったんだ?」
|上条当麻《かみじようとうま》はあちこちをキョロキョロ见回しながら|咳《つぶや》いた。
地下街は最终下校时刻が过ぎると人が少なくなっていった。相变わらず昼も夜も、今の天气も读めないような白々しい萤光灯の世界なのだが、こういった人の流れとか店内放送の音乐の种类の违いなどで、少しずつ时间の流れが感じられる。
上条としては、そもそもインデックスが何で学生|寮《りよう》を飞び出して地下街までやってきたのか、そこから理解できなかったりする。
ちなみにインデックスと出会った时の会话はこんな感じである。
『学园都市って复杂で面倒で良く分からない构造をしているよね。おかげでとうまを搜すのにすごく手间取ったんだよ。まあいいや、早く归ろう?』
『っつか、何でそこまでして|俺《おれ》を搜しに来た译?……まぁ大体、お|腹《なか》が灭ったからだって相场は决まってんだけどさ』
『もう、とうまのばか!!』
『ごぁぁ!!唐突に|啮《か》み付かれましたよ今!?』
『私がいっつもお腹がすいただけで动くと思ったら大间违いかも!!』
『むしろお前はそれ以外の理由で动く方が珍しいじゃねえかッ!!』
『とうまは|配虑《はいりよ》が足りないよね。ここに来る前に出会った白い发の人は、事情も闻かずにハンバ—ガ—を食べさせてくれたぐらいなのに。とうまもああいう优しい人にならなくちゃ』
『へ—へ—。どうぜ俺はそういうヤツとは缘がないっすよ。そうそう、ちゃんとその人にありがとうって言ったか。|他《ほか》にもなんかもらってないだろうな?』
『む、私はちゃんとお礼は言える人だよ。でも、言われてみればこんなの借りたかも』
『何だ、ただのポケットティッシュか』
『ハッ!あの人がこの最新锐日用品がなくて|今顷《いまごろ》困ってたらどうしよう!と、とうま、私はちょっとこれから返してくるんだよ!!』
『え?でも、ただのティッシュだぞ。しかも丸まってグショグショになったのなんて返されても困るんじゃ───って、全力疾走してないで闻けよインデックス—っ!!』
携带电话で连络を取るのが手っ取り早いのだろうが、どうせあのシスタ—はいつも通り电源を切りっ放しにしているだろう。そう思った|上条《かみじよう》は地下街をウロウロして近边のファストフ—ド店などを|?《のぞ》いてみたがインデックスは见つからない。人搜しをしているようだし、地下にいないと|踏《ふ》んで地上の方に出たのかな、と上条は思う。と言っても、あのシスタ—は完全|记忆《きおく》能力を持っているくせに学园都市では素で迷子になったりするので理由とかはないかもしれない。
上条は阶段を上がり、地下街から外に出た。
「ありや!?雨かぁ—……」
上条は夜空を见上げて思わず|?《つぶや》いた。パラパラと小粒の雨滴が路面を黑く|濡《ぬ》らしている。、|流石《さすが》に九月末日となると、边りの空气も一气に冷え?んできていた。
(……确か|布团《ふとん》は干してなかったよなぁ。インデックス、窗はちゃんと闭めて出てきたんだろうか。まぁ、まずはインデックスを搜すトコから始めよう)
と、分厚い云に|覆《おお》われた夜空に目をやったまま、上条は何となしに步き续ける。雨は降っているのだが、伞を差すほどではないかもしれない。学生|寮《りよう》が近くにある事、雨天のたびにコンビニ伞を买って归るので寮の伞立てがいっぱいになっている事などを考えると、地下街に戾って雨具を手に入れようという气も|削《そ》げるのだった。
(……にしても、なんか|警备员《アンチスキル》の数が多いような……?)
时闻带のせいか、天气のせいか。真っ暗になった通りには、珍しく学生|达《たち》がいない。あちこちを步いているのは|警备员《アンチスキル》ばかりだ。
积层プラスチックや|耐冲击《たいしようげき》ウレタンなどでゴテゴテと固められた防具满载の|警备员达《アンチスキルたち》がウロウロしている。元々防水性のある装备なのだろうが、やや冷え?んできた雨の中、伞も差さずに巡回している样子を见ているとちょっと|可哀想《かわいそう》だ。
(う—ん。あんまり迟い时间まで外を出步いてるとあっちに补导されるかもなんだよな。|俺《おれ》みたいなのならすり拔ける方法も知ってるけど……インデックスは|驮目《だめ》そうだ。话をこじらせて诘め所までご案内されそうだ)
面倒事になる前にさっさと连れ归ろう、と|上条《かみじよう》は|警备员《アンチスキル》から视线を戾そうとした。
その直前で。
ゴトリ、と妙な音が闻こえた。
「……、?」
上条の动きが固まる。
すぐそこに立っていた、防具满载の|警备员《アンチスキル》が、何の前触れもなくいきなり地面へ崩れ落ちたのだ。うつ伏せに转がったその体が、路面を|濡《ぬ》らす|水溜《みずたま》りに浸されていく。それでも身じろぎ一つなかった。いかに防水机能があるとしても普通の反应ではない。例えば、|雨合羽《あまがつぱ》を着たまま水溜りに飞び?む|马鹿《ばか》がいるだろうか。
(……まさか、意识が?)
上条は彼らの着ている正式装备の|着心地《きごこち》がどんなものか知らない。
だが、着ぐるみのようなものだったら、脱水症状や热中症に近い状态になるものなのかもしれない。上条にとっては少し肌寒いが、あんな分厚い装备で固めた人にとっては关系がない可能性もある。
(まずいな)
上条は周围へ视线を走らせる。
普通の学生达はいないが、|警备员《アンチスキル》ならたくさんいる。
それでも、上条は一应倒れた|警备员《アンチスキル》の方へ向かった。
その时、
今度はあちこちから。
バタリ、という音が上条の耳を打つ。人间が倒れる|响《ひび》きだ。しかもそれは一つではない。バタバタと何度も何度も重なって一つの长い杂音を作り上げていた。
「な……」
|上条《かみじよう》は|怪诱《けげん》な颜で周围を见回して、そこで冻りついた。
夜道を巡回していた|警备员达《アンチスキルたち》が全员倒れていた。何かの|冲击《しようげき》を受けた译でもなく、ただ漠然と地面に转がっているだけ。それでいて、指先一本动かすどころか体を|震《ふる》わせる事もない。远目に见ただけで分かる。彼らの意识は|完壁《かんぺき》に|削《そ》がれている。
「ちょ、何だよこれ。おい!!」
今度は慌てて走る。
最初に倒れた|警备员《アンチスキル》の下へ向かった。|水溜《みずたま》りの中でうつ伏せに倒れているのは、どうやら男らしい。この状态であっても窒息するかもしれない、と考えた上条は、とりあえず水溜りから男の体をどけて、仰向けに体势を变えた。
男の体はズシリと重たい。
それが装备品によるものか、人间の体重本来の重さなのかは区别がつかない。
(|他《ほか》の人达は……)
あちこちを走ったが、窒息しつつあるような人はいなかった。できれば全员を地下街に运び?みたかったが、それだけの体力がない。人间の重さは、まるでサンドバッグのようだった、
人を呼ぶのも大变そうだ。
この边りは结构大きな通りだが、基本的に学生街の集合体である学园都市は、一部教员用の欢乐街を除くと、ほとんどが日没と共に机能を停止する。今も明かりのある店は深夜营业の许可が下りたコンビニやレストラン程度のものだ。电车やバスの最终便も过ぎた後で、片侧三车线の道路には一台の车もない、心细い事この上、なかった。现にこれだけ多くの人达が倒れているのに|骚《さわ》ぎが起きる气配はない。周りの人が何とかしてくれる、という考えは舍てた方が良さそうだ。
(本来、こういう事态のために|警备员《アンチスキル》がいるはずなんだけど……)
上条は|警备员《アンチスキル》の颜を|?《のぞ》き?む。
体のほとんどを非金属パ—ツで固めているため、脱がさない事には|怪我《けが》の样子は分からない。が、少なくとも衣服が真っ赤に染まっているような事はなかった。映画やドラマであった动作の见よう见まねで首筋に手を当てて、脉を测る。命の鼓动を传える脉拍は、力强いサインを上条の指先に返す。口元に|掌《てのひら》をかざしてみると、安定した吐息が感じられた。
命に别状はない……ように见える。
しかし、怪我でないとしたら、原因は何なのだろうか?
(麻醉ガス……?いや)
だとしたら、上条だけが无事だった理由が说明できない。
ともあれ、|素人《しろうと》判断で放っておくのもまずいだろう。
救急车を呼ぶしかない。
上条は携带电话を取り出し、三|桁《けた》のナンバ—をプッシュしてコ—ルセンタ—に接续した。こういった|紧急用《きんきゆうよう》の番号は通话ボタンを押すだけで紧张するが、通报はこれが初めてではない。头は混乱气味だったが、それでも何とか状况を说明できた。
二つ折りの携带电话をパチンと闭じる。
ズボンのポケットに收めるために一度立ち上がってから、电话をしまう。
その时、
『……ざ、ザ……』
足元から杂音が闻こえた。|上条《かみじよう》は视线を下に送る。倒れている|警备员《アンチスキル》は相变わらず、指先一つ动かさない。彼の肩の边りから、ラジオの杂音のようなものが飞んでくる。
『ザ、ざざザザざ……、に、侵入。缲り返す……ゾゾザザゾザ!!……、ゲ—トの|破坏《はかい》を确认!侵入者は市街地へ───|谁《だれ》か闻いていないのか?こちらの部队も正体不明の|攻击《こうげき》をゴァ!?』
ブツッ!!と、テレビを切るような音が|响《ひび》く。
音の正体は无线机だった。相手は|他《ほか》の场所にいた|警备员《アンチスキル》だったのだろうか。|切羽诘《せつぱつ》まった|台词《せりふ》が气になるが、四角い机械はサ—ッという均等な杂音を流しているだけだ。パッと见だと饰り气のない携带电话にも见えるが、仕组みは全く违うのだろう。触れてみる气も起きなかった。
何だ今の……と、上条は视线を外した。
上条は无线机から流れてきた杂音混じりの言叶を思い出す。
(……侵入者)
と言うからには、何者かが学园都市の外からやってきた事になる。それが目の前で|警备员《アンチスキル》が倒れている状况と关系しているかははっきりしない。が、そうであろうがなかろうが、上条の头に浮かぶのは、
(インデックスの方は|大丈夫《だいじようぶ》なんだろうな……)
学园都市の敌对者だからと言って、その|全《すべ》てが|魔术《まじゆつ》侧の人间であるとは限らないし、たとえ魔术师だったとしてもその全员がインデックスを|狙《ねら》ってくるという法则もない。しかし、やはり真っ先に考えてしまうのは彼女の事だった。
まずいな、と上条は思考を切り替える。
念のため、安全を确认するという意味でもここは早く合流しておいた方が良さそうだ。
そこへ、
「?」
ドン、と上条の腹に小さな|冲击《しようげき》が走った。
|谁《だれ》かがぶつかったらしい。……と思うには、やけに冲击の当たった场所が低い。胸の边りではなく、お|腹《なか》の下边りに冲击がきた。
目を下にやる。
ぶつかってきたのは、小さな子供だった。上条よりも头一つ以上も身长が低い。せいぜい一○岁ぐらいだろう。茶色い发は肩に届くかどうかといった所だ。
确か名前は……、
「|打ち止め《ラストオ—ダ—》だっけか?」
うう、という|岬《うめ》き声が答えた。
その返事がくぐもっているのは、その小さな颜を|上条《かみじよう》のシャツに押し付けているからだ。ぶつかってきたというよりも、ほとんど抱きついているような状态に近い。ぶるぶると小刻みに。|震《ふる》える振动が、雨に打たれてすっかり冷たくなったその体温が、シャツ越しにも传わってくる。その体は、ちょっとした小雨の下にいただけとは思えないほどずぶ|濡《ぬ》れになっていた。
どうしたんだろう?と上条は首を|倾《かし》げる。
「助けて……」
|打ち止め《ラストオ—ダ—》は、上条のシャツのお|腹《なか》を|掴《つか》んだまま、颜を上げた。
その大きな|瞳《ひとみ》は真っ赤に充血していて、透明な液体が|颊《ほお》を传っていた。
冷たい雨に打たれていても、颊を传う一滴だけはすぐに见分けられた。
彼女は。
彼女は叫ぶ。
「お愿いだから、あの人を助けて……ッ!ってミサカはミサカは|赖《たの》み?んでみる!!」
二人の少女は交差し、二人の能力者への道が|系《つな》がる。、
本来ならば决して交わる事のない、完全に平行した二つの道。
彼らの道が一点へと集束する时、
学园都市を舞台にした、本当の物语が始まる。
[#改ペ—ジ]
行间五
バタバタと人间が倒れていく。
冷たい雨の降りしきる中、抵抗もなく、杂音もなく、鲜血もなく、悲鸣もなく、ただひたすらに人间の倒れる|响《ひび》きだけが暗い暗い夜の街を传っていく。彼らは一样に耐ショック机构を备えた装甲服を着?んだ大人ばかりだ。街灯の白々しい光が、|水溜《みずたま》りに沈む铳器をギラリと照らし出している。
学园都市の治安を|司《つかさど》る|警备员达《アンチスキルたち》だ。
倒れた彼らは动かない。
指先一つ。
それとは别に、カツン、コツンという细々とした足音が岛る。
|濡《ぬ》れた路面へと静かに横たわる|牺牲者《ぎせいしや》达の间を|缝《ぬ》って进むように、ゆらりゆらりと细い女のシルエットが雨天の街を步いていた。
街灯の下に出た女は伞を差していなかった。糸のような细い雨に、少女のような|瘦身《そうしん》が打たれている。服装はワンピ—スの原型となったカ—トルという女性衣类に、腰には细い革のベルト、手首から二の腕にかけてはスリ—ヴと呼ばれる着脱可能な|袖《そで》が取り付けられていた。银行员や邮便局员などが腕につけているものを、より华美にしたものと思えば良い。头には一枚布の|被《かぶ》り物があり、发の毛は全部隐されていた。
多少、历史や考古学などに兴味のある者なら、一五世纪前後のフランス市民の格好だという事が分かったかもしれない。
しかし、基调となっている色が派手な黄色であるため、あまり原型を|留《とど》めているとも言えなかった。
ジャリジャリと、金属が触れ合う细かい音が闻こえる。
女の颜に取り付けられたピアスのものだ。耳はもちろん、鼻、唇、まぶたにまで穴が空けられている。唇を割って舌を出すと、|锁《くさり》が落ちた。ネックレスのように细い锁は舌先につけられたピアスに连结し、腰の边りまで伸びている。そこには十字架を模したアクセサリ—がぶら下がっていた。
それら|全《すべ》ては颜が崩れるのを承知で实行されたものだ。
十字教では『金属の贯通』という言叶には深い意味がある。そもそも『神の子』は钉と|枪《やり》を刺されて殉教したからだ。突き刺す个所を吟味すれば自由に术式を组み立てる事も可能となる。
「ふむ」
颜面に风穴を空けた女は周围をぐるりと见回して、それから足元に转がっていた无线机の一つを|蹴《け》り上げた。空中を舞う四角い机械を片手でキャッチする。泥水に|濡《ぬ》れたその感触に、彼女はわずかに|眉《まゆ》をひそめた。
|拳铳《けんじゆう》のように手の中でくるくる回すと、女は无线机のマイクへ口を近づける。
耳元にささやくように告げる。
「ハッアァ—イ、アレイスタ—」
ザザッ、という杂音と共に耳に返ってきたのは、困惑する闻き手の|警备员《アンチスキル》の声だった。しかし女は无视して续ける。闻こえていないはずの|谁《だれ》かに向かって话しかけるように。
「どうせアンタはこ—いう普通の回线にもこっそり割り?んでるってコトでしょう。さっさとお相手してくれると|嬉《うれ》しいんだけどな」
ブツッ、というスイッチの切り替わる音が闻こえる。
明らかに音质がクリアになる。
『何の用だ』
「闻く气があるなら话してやっても良いってコトなんだけど?」
『一应确认するが、その程度の挑发に私が乘るとでも思うか』
「そう。统括理事会の颜を三つほど|溃《つぶ》してきたトコだけど、『その程度』では|堪《こた》えない、か」
女は手の中で无线机をくるくる回す。
颜には少しだけ落胆の色があった。
「确か统括理事会って一二人しかいないってコトなのよね」
『补充なら|利《き》くさ。いくらでもな』
「问题发言よね、ソレ」
『ねじ伏せるだけの力もある』
「私はねぇ、アレイスタ—。アンタは实は存在しない人间なんじゃないかってコトを考えてたのよ。立体映像か、もしくは死体の中に|得体《えたい》の知れない机械でも诘め?んで动かしているだけなんじゃないかってワケ」
『梦のある意见だな。君は学者ではなく发明家向きだ』
「アンタの意见。の里にゃ统括理事会の总意が隐れている……って踏んでたんだけど、こりゃ当てが外れちゃったかなぁ。全然|焦《あせ》ってる样子もないコトだし」
もう少し统括理事会の颜を溃してみるか、と女は小さく眩いた。
无线机はやめうと言わない。
その程度では|响《ひび》かないとでも宣言するように。
「まぁいいや。私の名は分かっている?」
『さあな。贼については取り调べで闻く事にしているので』
「神の右席」
サラリと。
女は|魔术《まじゆつ》サイド最大の深部の名前を口に出した。
世界最大宗派ロ—マ正教の|暗《やみ》の暗の暗の暗の暗の暗の暗の暗の暗の果てに沈んでいる一つの名前。二○亿の信徒の中でも知っている者は一握りであり、たとえ知っていたとしても『知るに|相应《ふさわ》しくない人物』だと判断された场合は即刻处刑されるほどの|隐密性《おんみつせい》に满たされた单语だ。
しかしアレイスタ—もスラスラと答える。
感情に起伏は、ない。
『おや。テロ行为指定グル—プにそのような名前はあったかな』
「ふうん」
『名を卖るための行为だとすれば、少々|无谋《むぼう》が过ぎたようだが』
「|白《しら》を切るってコトならそれでも良いけど、今ココで命乞いをしなかったコトを最後の最後で後悔しないようにね」
『この街を甘く见ていないか』
「アラ。自分の街の现状すら|掴《つか》めていないだなんて、すでに报告机能にも支障が出てんの?失敬失敬、私は自分の|溃《つぶ》した敌兵の量を数えられないからなぁ。はは、オペレ—タ—までぶっ倒れてるか」
『……、』
「六割。七割。八割は|流石《さすが》に行き过ぎかな。まぁジキに一○割全部倒れるコトになるだろうけど。|警备员《アンチスキル》に|风纪委员《ジヤツジメント》だっけ?そんなチャチなモンで身を守ろうとかしてるからあっさりクビを取られんのよ。自分がもう终わりだってコトぐらいは分かってんのよね?」
『ふ』
「?」
『その程度で学园都市の防卫|网《もう》を碎けたと思っているのなら、本当におめでたいな。君はこの街の本当の形をまるで理解していない[#「この街の本当の形をまるで理解していない」に傍点]』
「ヘェ」
『隐し玉を持っているのは君だけではないという事だ。もっとも、君はそれを知る前に倒れるかもしれんがな}
「何であれ、私は敌对する者を|全《すべ》て|叩《たた》いて溃す。コレは私が生まれた时からの决定事项だ」
互いは会话を交わしているように见えて、两者共に一方的な言叶を浴びせているだけだ。
女は泥水のまみれた无线机に目を寄せる。
「私は『前方のヴェント』。二○亿の中の最终兵器」
最後に告げる。
「この一晚で全てを溃してあげる。アンタも、学园都市も、幻想杀しも、禁书目录も、その全てをね」
言叶と共に、ヴェントと名乘る女は握力だけで无线机を押し|溃《つぶ》した。
『人间』アレイスタ—は、窗のないビルの一室にいた。
その四角いスペ—スの真ん中には圆筒形の生命维持装置が|镇座《ちんざ》していて、彼はそこで逆さまに浮かんでいる。满たされた赤い液体は彼の口や鼻から体内へと浸透していき、细胞の一つ一つに干涉していく。
|普段《ふだん》は照明らしい照明は何もなく、ただ广い部屋の四方の壁を埋め尽くす机械类のパイロットランプなどが星空のように细かい光を放っているだけなのだが、现在は断续的に|瞬《またた》く赤い警告色が|莫大《ばくだい》な空间を照らし出していた。
前述の通り、この部屋に照明机器はない。
赤い光の正体は、モニタ一つ一つから表示される无数のエラ—の集合体だ。つまり现在はそれだけの异常事态が学园都市企域を|蚀《むしば》んでいるのだ。
ただ一人の|魔术师《まじゆつし》によって。
『神の右席』の一名のみによって。
あの『|使徒十字《クロ—チエデイピエトロ》』ですら摇らがなかったこの学园都市が。
「───、」
ほんの数十分で、すでに学园都市の治安を|司《つかさど》る|警备员《アンチスキル》の七割弱が|牺牲《ぎせい》となっている。生体信号を探る限り死者はないようだが、彼らが国を觉ます前にここが陷落すればもう立て直しは图れない。街のあちこちから被害报告や增援要求などの通信が入るが、いちいちそれらに答えるのも|亿劫《おつくう》だ。
街は死に挂けている。
しかし、
それでも、
『人间』アレイスタ—の口元に浮かぶのは、ただひたすらに笑み。
喜怒哀乐の|全《すべ》てに当てはまり、同时にどれもに当てはまらない说明不能の笑み。
「面白い」
彼はささやく。
「最高に面白い。これだから人生はやめられない。こちらもようやくアレを使う机会が现れたか。时期は早すぎるが……プランに|缚《しば》られた现状では、イレギュラ—こそ最大の娱乐だな」
口の中で转がすようにその感情を|弄《もてあそ》びながら、同时にアレイスタ—は生命维持装置の内部から计器类に无数の操作命令を飞ばす。无线装置の一つに干涉し、周波数や暗证番号などを飞ばして学园都市の|暗《やみ》に|蠢《うごめ》く者|达《たち》へと接续する。
「|猎犬部队《ハウンドドツグ》───|木原数多《きはらあまた》」
アレイスタ—は告げる。
相手の短い返事を受けて、彼は追加の注文を行う。
「虚数学区·五行机关……AIM扩散力场だ。少し早いが、ヒュ—ズ=カザキリを使って『|奴《やつ》ら』を|溃《つぶ》す。手足は|弹《はじ》いても构わん。现在逃走中の|检体番号《シリアルナンバ—》二○○○一号を捕获次第、指定のポイントへ运んでくれ。───早急かつ、丁重にな」
笑みと共に、彼は言った。
「さあ。久方ぶりの乐しい乐しい|溃し合い《ショ—タイム》だ」
[#改ペ—ジ]
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あとがき
一册ずつご购入していただいている|贵方《あなた》はお久しぶり。
一二册もの物量をまとめ买いにしていただいた贵方は初めまして。
|镰池和马《かまちかずま》です。
コメディとバトルが交差する(らしい)本シリ—ズですが、今回はコメディに特化しています。あっちもこっちもほのぼのしていると思います。一一卷では触れられなかった|御坂美琴《みさかみこと》の|罚《ばつ》ゲ—ムなども取り上げていたり。たまにはこういう争いのない|氛围气《ふんいき》も良いものですね。
テ—マは衣替えです。
どいつもこいつも制服が夏物から冬物になっていたりといったストレ—トなものから、あるキャラクタ—(というか组织名)の登场による作品全体の流れまで、いろんな所に衣替えという意味を?めていたりします。
全体的に学园都市の中での出来事なので、どちらかというと科学サイドっぽいお话になりました。なので、まあ……例の白い子はいつもの通りな感じです。次ではもっともっと|活跃《かつやく》の场が出てくると思います。
イラストの|灰村《はいむら》さんと担当の|三木《みき》さんにはいつもながら感谢を。今回、キャラクタ—|达《たち》の衣替えなんていう面倒臭い催しにお付き合いいただき本当にありがとうございました。
そして读者の皆样にもいつもながら感谢を。镰池がこうしてあとがきを书いていられるのも|全《すべ》て皆样のおかげです。
それでは、今回はこの边りでペ—ジを闭じていただき、
次の卷も开いていただける事を愿って、
本日は、ここで笔を置かせていただきます。
ば、罚ゲ—ムはまだ终わっていません![#地付き]镰池和马
[#改ペ—ジ]
とある魔术の禁书目录12
镰池和马
发行2007年1月25日初版发行
著者镰池和马
发行者久木敏行
发行所株式会礼メディアワ—クス
平成十九年一月十ニ日入力·校正にゃ?